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逗子、葉山、鎌倉、横須賀、横浜市金沢区の在宅医療

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誤嚥性肺炎を科学する1~「誤嚥性肺炎」:そのメカニズムと予防の重要性
高齢者の健康において、最も注意すべき疾患の一つが「誤嚥(ごえん)性肺炎」です。 今回は、当クリニックの資料をもとに、誤嚥性肺炎がなぜ起こるのか、そして防ぐために何が大切なのかを分かりやすくまとめました。 1. 誤嚥性肺炎とはどのような病気か? 誤嚥性肺炎は、食べ物や唾液などが誤って気道(肺の方)に入ってしまうことで、そこに含まれる細菌が肺で炎症を引き起こす 細菌性肺炎 です。 実は、食べ物だけでなく「唾液」も大きな原因となります。特に寝ている間に、むせることなく唾液が気道へ流れ込んでしまうことで肺炎が起こるケースも少なくありません。 2. なぜ「予防」がこれほど重要なのか 誤嚥性肺炎は、単に「肺が苦しくなる病気」だけでは済まない、大きなリスクを抱えています。 高い死亡率: 高齢者にとって非常に命に関わる疾患です。 負の連鎖: 一度発症すると、肺炎そのものが治った後も、「食べる力(嚥下機能)」「身体機能」「認知機能」が大きく低下してしまうことがあります。 つまり、肺炎を繰り返すことで、ADL(日常生活動作)やQOL(生活の質)が一段ずつ階段を降
2月10日読了時間: 2分


在宅医療を科学する14~なかなか治らないおむつかぶれ、実は「IAD(失禁関連皮膚炎)」かもしれません
在宅療養において、ご家族や介護スタッフ様を悩ませるトラブルの一つに「皮膚の赤みやただれ」があります。「いつものおむつかぶれかな?」と市販薬を塗ってもなかなか改善しない場合、それは単なる“かぶれ”ではなく、IAD(失禁関連皮膚炎)という状態かもしれません。 今回は、治療に難渋したある女性のケースを通して、IADの正体とその対策について解説します。 1. 治療に難渋した症例(Case 2) ある女性の患者様は、偽膜性腸炎や尿路感染症を繰り返し、入退院を重ねておられました。ようやく自宅退院となりましたが、その後、皮膚の状態が急激に悪化してしまったのです。 ご家族や訪問スタッフが、抗菌外用剤や抗真菌外用剤、最新のドレッシング材(被覆材)、さらには水分を弾く撥水系外用剤など、あらゆる手段を試しました。しかし、皮膚の状態は一向に改善せず、広範囲にわたる強い赤み(紅斑)や、皮膚が剥けてジュクジュクとした「びらん」が広がってしまいました。 2. IAD(失禁関連皮膚炎)とは何か? この患者様のように、尿や便(あるいはその両方)が長時間皮膚に接触し続けることで生じ
2月9日読了時間: 2分


攻めの栄養療法を科学する68~【専門医解説】認知症で「食べてくれない」時の向き合い方――原因の理解と攻めの食支援
認知症が進むと、単に食欲がないだけでなく、「食べ方がわからない」「途中で止まってしまう」といった特有の症状が現れます。これらは本人の意志ではなく、脳の障害によるものです。 今回は、認知症の種類ごとの特徴と、最後まで「その人らしく」食べるための工夫を解説します。 1. 認知症の種類で変わる「食べられない理由」 認知症にはいくつかのタイプがあり、それぞれ食事場面での困りごとが異なります。 アルツハイマー型 (AD) : 進行とともに「食べ物であること」がわからなくなったり、道具の使い方がわからなくなったりします(失認・失行)。 レビー小体型 (DLB) : 幻視(虫がいる等)で食べられなくなったり、パーキンソン症状による飲み込みの障害(嚥下障害)が強く出ることがあります。 前頭側頭型 (FTLD) : 同じものばかり食べる「常同行動」や、食習慣が極端に変化することがあります。 血管性 (VaD) : 脳の障害部位によって、飲み込みの麻痺や、食べ物への認識障害が個人差大きく現れます。 2. FASTステージから見る「食の支援」の目安...
2月9日読了時間: 3分


在宅医療を科学する14~治療に難渋する皮膚炎:在宅復帰後に直面した広範な紅斑とびらんへのアプローチ
在宅医療の現場では、病院での治療を経て帰宅された後、急激な身体の変化に直面することがあります。今回は、退院後に皮膚症状が悪化し、多角的な治療を試みても改善に難渋したある女性の症例をご紹介します。 1. 患者様の背景(病歴) この患者様は、もともと「偽膜性腸炎」や「尿路感染症」を繰り返しており、入退院を頻繁に重ねておられました。感染症との戦いが続くなか、ようやく自宅退院を迎えられたという背景があります。 2. 自宅退院後の急激な悪化 住み慣れた自宅へ戻られた後、残念ながら皮膚炎が増悪してしまいました。その症状は非常に重く、単なる赤みを超え、以下のような深刻な状態を呈しました。 広範な紅斑: 皮膚の広い範囲が赤く腫れ上がる。 びらん: 皮膚の表面が剥がれ落ち、ジュクジュクとした「ただれ」が生じる。 3. 試みられた治療と直面した困難 在宅チームでは、標準的な皮膚科的治療を含め、あらゆる手段を講じました。 外用剤の活用: 抗菌外用剤や抗真菌外用剤など、感染を疑ったアプローチ。 物理的保護: ドレッシング材(被覆材)による患部の保護。 外部刺激の
2月8日読了時間: 2分


攻めの栄養療法を科学する67~【専門医解説】医薬品栄養剤を使いこなす!在宅での「攻めの栄養療法」
在宅医療や施設への入所・退院の際、「医薬品の栄養剤(処方薬)」しか選択できない場面に遭遇することがあります。医薬品栄養剤は、単なる「薬」ではなく、工夫次第で非常に強力な栄養支援ツールになります。 今回は、経済的なメリットや、美味しく摂取するための具体的な工夫について解説します。 1. 医薬品栄養剤を選ぶ最大のメリット:経済的負担の軽減 在宅で「食品タイプ」の栄養剤を使用する場合、全額自己負担となります。一方、「医薬品タイプ」は医療保険が適用されるため、自己負担額を劇的に抑えることが可能です。 負担額の差 : 例えば1日1,000kcalを摂取する場合、食品タイプでは月額約36,000円(全額負担)かかるのに対し、医薬品タイプ(3割負担)なら約7,500円程度で済む計算になります。その差は月間 28,000円以上 に及びます。 無料・低額になるケース : 生活保護世帯や身体障害者手帳(1・2級)をお持ちの方、所得の低い高齢者などは、さらに負担額が少なくなります。 2. 医薬品栄養剤のラインナップと特徴 医薬品栄養剤には、大きく分けて3つのタイプがあ
2月8日読了時間: 3分


在宅医療を科学する13~血糖値が正常でも要注意!SGLT2阻害薬と「正常血糖性ケトアシドーシス」
糖尿病治療の現場で広く使われている「SGLT2阻害薬」。非常に優れたお薬ですが、服用中に「血糖値は高くないのに、体の中が酸性になる(アシドーシス)」という特殊な緊急事態が起きることがあります。 これを正常血糖性ケトアシドーシス(Euglycemic DKA)と呼びます。 ● 通常のDKAと何が違うの? 通常の糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)は、インスリン不足によって血糖値が 300mg/dL以上 という著しい高血糖を伴います。 しかし、SGLT2阻害薬を服用している場合、血糖値が 150〜200mg/dL といった「一見正常に近い値」であっても、ケトン体が過剰に蓄積し、重篤な状態に陥ることがあります。 項目 通常の糖尿病性DKA 正常血糖性DKA 血糖値 300mg/dL以上 150〜200mg/dL ケトン体 増加(++) 著明に増加(++++) 原因 インスリン不足 SGLT2阻害薬 ● なぜ血糖値が上がらないのに危険なの? SGLT2阻害薬によって尿糖が排泄されると、体内のインスリンが低下し、逆にグルカゴンが増加します。これにより脂肪分解
2月7日読了時間: 2分


攻めの栄養療法を科学する66~【専門医解説】お金をかけずに栄養を守る――在宅での「攻めの栄養管理」術
経済的にゆとりがない生活は、単なる「節約」の問題ではありません。病気や育児、高齢者の孤立など様々な要因が重なり、食事への意識が低下することで、気づかないうちに深刻な低栄養状態(BMI 20以下)に陥るリスクを孕んでいます。 今回は、限られた予算の中でも、工夫次第で実践できる「攻めの栄養管理」のポイントを解説します。 1. 経済的困窮が招く「栄養の質」の低下 貧困層では、多くの食品を揃えることが難しいため、食事の品数が減り、単調になりがちです。特に以下の問題が顕著です。 食事の簡略化 : 安価なおにぎりやパンだけで済ませてしまい、エネルギーやたんぱく質が欠乏します。 食料品アクセスの困難 : スーパーが遠い、足腰が弱くて買い物に行けないといった「食の砂漠化」が低栄養を加速させます。 2. 今日からできる!低コスト・高栄養の工夫 特定の高い健康食品を買う必要はありません。普段の選び方を少し変えるだけで、栄養バランスは整います。 たんぱく質を賢く選ぶ 安価な優等生を活用 : 卵、納豆、豆腐、厚揚げなどの大豆製品は安価で優秀なたんぱく源です。 惣菜・おに
2月7日読了時間: 3分


在宅医療を科学する12~【重要】血糖値が「正常」でも油断禁物?SGLT2阻害薬と「正常血糖性ケトアシドーシス」
糖尿病の治療を受けている方、特に SGLT2阻害薬 を内服されている皆様へ。 「血糖値がそれほど高くないから大丈夫」と思っていても、実は体の中で深刻な状態が起きているかもしれません。 今回は、見逃されやすい「 正常血糖性ケトアシドーシス(euglycemic DKA) 」について解説します。 1. 「正常血糖性」ケトアシドーシスとは? 通常、糖尿病の急性合併症である「ケトアシドーシス(DKA)」は、血糖値が300mg/dL以上の著しい高血糖を伴います。 しかし、SGLT2阻害薬を服用している場合、血糖値が 150~200mg/dL程度 、あるいは250mg/dL以下の「正常~軽度上昇」にとどまっているにもかかわらず、血液が酸性に傾く「アシドーシス」という危険な状態に陥ることがあります。これが「正常血糖性」と呼ばれる理由です。 2. なぜ血糖値が上がらないのに危険なの?(SGLT2阻害薬の影響) SGLT2阻害薬は尿から糖を出す薬ですが、その影響で体の中では以下の連鎖が起きることがあります。 尿から糖が排泄される。 インスリンが低下し、逆にグルカゴ
2月6日読了時間: 2分


攻めの栄養療法を科学する65~【専門医解説】慢性腎臓病(CKD)の「攻めの栄養療法」:低栄養(PEW)を防ぎ筋肉を守る
慢性腎臓病(CKD)の食事療法といえば、かつては「厳しい制限」が中心でした。しかし現在では、過度な制限が原因で筋肉量や脂肪量が減少するPEW(タンパク・エネルギー消耗状態)に陥り、かえって予後を悪化させることが大きな課題となっています。 今回は、腎機能を守りつつ身体機能を維持するための「攻めの栄養管理」について解説します。 1. 低栄養(PEW)の早期発見と診断 PEWは保存期CKD患者の20〜80%に認められる非常に頻度の高い栄養障害です。以下の4項目のうち3つに該当するとPEWと診断されます。 生化学検査 : 血清アルブミン < 3.8g/dL など 体格 : BMI < 18.5kg/m² または 意図しない体重減少 筋肉量 : 筋肉消耗や上腕筋囲面積の低下 摂取量 : 意図しないエネルギー・タンパク質摂取不足 2. 「攻めの栄養管理」のポイント:エネルギーとタンパク質 CKDの重症度(ステージ) や活動量に応じて、適切な栄養量を設定します。 ① エネルギー:低栄養とサルコペニアの予防 目標 : 保存期で25〜35kcal/kg、透析期で3
2月6日読了時間: 3分


攻めの栄養療法を科学する64~【専門医解説】糖尿病でも「しっかり食べて、動く」――攻めの栄養管理の実践
糖尿病の食事療法といえば「厳しい制限」をイメージされるかもしれません。しかし、近年の研究では、過度な制限がサルコペニア(筋肉減少)やフレイル(虚弱)を招き、かえって予後を悪化させることがわかってきました。 今回は、健康寿命を延ばすための「攻めの栄養管理」の具体的なポイントを解説します。 1. エネルギー摂取量の新基準:制限から「適量」へ 従来の糖尿病食では「25〜30kcal/kg(標準体重)」が一般的でしたが、活動量が多い方や減量の必要がない方の場合は、日常生活や運動量に合わせ、**「30〜40kcal/kg」**での管理を検討します。 炭水化物 : 指示エネルギーの50〜60%を目安に、血糖変動を見ながら調整します。 たんぱく質 : 腎機能に問題がなければ、筋肉合成を促すために最低でも**1.0g/kg(標準体重)**を確保します。ポイントは、 3食均等に摂取すること です。これが良好な血糖コントロールへの近道となります。 脂質 : エネルギー比率の20〜30%を目標とします。脂質が25%を超える場合は、動脈硬化予防のため飽和脂肪酸を減らす工
2月5日読了時間: 3分


在宅医療を科学する11~正常血糖性ケトアシドーシス(euglycemic DKA)を知っていますか?
「血糖値が正常だから大丈夫」その思い込みが、思わぬ体調悪化を見逃す原因になるかもしれません。本日は、特にSGLT2阻害薬を服用中の方やそのご家族に知っておいていただきたい「正常血糖性ケトアシドーシス」について解説します。 1. 正常血糖性ケトアシドーシスとは? 通常、糖尿病の深刻な合併症である「ケトアシドーシス」は、著しい高血糖を伴います。しかし、特定の条件下では 血糖値がそれほど高くない(正常〜軽度上昇程度)にもかかわらず、血液が酸性に傾き(アシドーシス)、生命に関わる状態 になることがあります。これが「正常血糖性ケトアシドーシス(euglycemic DKA)」です。 2. 臨床的な特徴 この病態の最大の注意点は、一般的な血糖測定だけでは異常に気づきにくいことです。具体的な特徴は以下の通りです。 項目 特徴 血糖値 正常〜軽度上昇(≦250 mg/dL) ケトン体 高値 (血中β-ヒドロキシ酪酸の上昇) 血液 pH 低下(アシドーシス) HCO₃⁻ 低値 AG(アニオンギャップ) 増加 3. 注意すべきタイミング 一見元気そうに見えても、以下
2月5日読了時間: 2分


攻めの栄養療法を科学する63~【専門医解説】糖尿病の「攻めの栄養療法」:血糖値だけを見ない新しい管理
今回は、合併症予防と筋肉量維持を両立させる「攻めの栄養療法」のポイントを解説します。 1. 血糖コントロールの目標設定 糖尿病治療の本来の目的は、合併症の発症と悪化を防ぐことです 。日本糖尿病学会では、合併症予防の目安として以下の数値を掲げています 。 HbA1c : 7.0%未満 空腹時血糖値 : 130mg/dL未満 食後2時間血糖値 : 180mg/dL未満 「攻めの栄養療法」では、これらの数値目標に加えて、**「筋肉量の測定」**を重視します 。血糖値を抑えることだけをゴールにせず、活動量に見合ったエネルギーを摂取し、サルコペニアの発症・悪化を防ぐことが重要です 。 2. 攻めの栄養療法に必要な「評価項目」 多角的な視点で患者様の状態を把握することが、適切な栄養設計の第一歩です 。 身体計測 : BMI、血圧だけでなく、 握力や歩行速度、筋肉量 を評価します 。 食事・活動量 : 実際の摂取エネルギー量に加え、運動量や運動時間、生活習慣を確認します 。 低血糖のリスク : 薬物療法の内容と、低血糖の有無や頻度を把握します 。 3. 高齢者
2月4日読了時間: 2分


在宅医療を科学する10~血糖を下げるお薬の「意外な落とし穴」?SGLT2阻害薬とケトアシドーシスのしっくり解説
糖尿病の治療でよく使われる「SGLT2阻害薬」。 尿から余分な糖を出すことで血糖値を下げてくれる、とても心強いお薬です。でも、体の中ではちょっとした「勘違い」が起きることがあります。 今回は、知っておきたい副作用「ケトアシドーシス」のしくみを、図解とともに分かりやすくお伝えします! 🧐 体が「お腹ぺこぺこ!」と勘違い? SGLT2阻害薬を飲むと、体の中ではこのような連鎖が起きることがあります。 糖がどんどん尿から出る :血糖値がしっかり下がります。 インスリンが減る :血糖が下がるので、血糖を下げるホルモン「インスリン」の出番が少なくなります。 ホルモンが「飢餓(きが)」と誤解する :糖が足りない!と体が思い込み、代わりにエネルギーを作ろうとして「脂肪を燃やしすぎてしまう」のです。 その結果、燃えカスである**「ケトン体」 という物質が増えすぎてしまい、血液が酸性に傾く危険な状態(ケトアシドーシス)を招くことがあります。これを euglycemic DKA(正常血糖ケトアシドーシス)**と呼び、血糖値が正常なのに体が酸性になるのが特徴です。 ⚠
2月4日読了時間: 2分


攻めの栄養療法を科学する62~
在宅医療や急性期ケアにおいて、既製品のバッグだけでは対応しきれない特殊な病態があります。今回は、水分量を極限まで抑えたい時や、カリウム制限が必要な時の「攻めの処方設計」について解説します。 1. 水分量を制限しつつ高エネルギーを届ける「手作りTPN」 心不全や腎不全など、投与できる水分量に厳しい制限がある場合、既製品では栄養量が不足しがちです。 濃縮処方の設計 : 50%ブドウ糖液、高濃度アミノ酸製剤(アミゼットB)、脂肪乳剤(イントラリポス20%)を直接組み合わせることで、水分量を大幅にカットできます。 減量の実例 : 標準的なTPNで1,800mLかかる栄養量(約1,640kcal)を、この設計により1,300mLまで圧縮可能です。 注意点 : この「手作り」の場合は、ビタミン剤や微量元素だけでなく、ナトリウム、カリウム、リン、マグネシウムなどの電解質を病態に合わせて個別に添加し、厳密にモニタリングする必要があります。 2. カリウム制限が必要な時の「攻めのPPN」 末梢点滴(PPN)の施行中にカリウムを制限しなければならない局面があります。
2月3日読了時間: 2分


在宅医療を科学する9~血糖値が正常でも要注意?SGLT2阻害薬の落とし穴
現在、糖尿病だけでなく心不全や慢性腎臓病の「特効薬」として、多くの患者様に処方されているのがSGLT2阻害薬(ジャディアンス、フォシーガなど)です。尿から余分な糖を出すことで、血糖を下げ、心臓や腎臓を保護してくれる非常に優れたお薬です。 しかし、この薬を服用している方が、体調不良(シックデイ)に陥った際、稀に「正常血糖性ケトアシドーシス(eu-DKA)」という病態を引き起こすことがあります。 1. 「血糖値が低いから安心」という誤解 通常、糖尿病が悪化して意識障害などを起こす「ケトアシドーシス」は、血糖値が300mg/dLや500mg/dLといった高値になります。 しかし、SGLT2阻害薬を飲んでいると、 血糖値が150〜200mg/dL程度の「それほど高くない数値」でも、血中のケトン体が急増し、体が酸性に傾く重篤な状態 になることがあるのです。 2. 在宅現場で注意すべき「サイン」 訪問看護師さんやご家族に知っておいていただきたいのが、以下の症状です。 激しい倦怠感(ぐったりしている) 吐き気や嘔吐、腹痛 呼吸が荒い、または呼気から甘酸っぱい臭
2月3日読了時間: 2分


攻めの栄養療法を科学する61~
「経口摂取が難しい」「点滴だけで十分な栄養が摂れるのか不安」といった課題に対し、強力なバックアップとなるのが**中心静脈栄養(TPN)**です。今回は、当院が実践する「攻めのTPN設計」について詳しく解説します。 1. 「攻めのTPN」を開始するタイミング 通常、TPNは「2週間以上腸管が使えない場合」に適応とされますが、「攻めの栄養療法」ではその期間にこだわる必要はありません。 早期開始のメリット : 末梢点滴(PPN)では必要エネルギーが満たされない場合、その不利益(低栄養の進行)を避けるため、より早期にTPNへ切り替えることが推奨されます。 水分制限がある場合 : TPNはPPNよりも少ない水分量で高エネルギーを投与できるため、心不全や腎不全などで水分負荷を抑えたい症例にも非常に有用です。 2. 理想的な処方設計:NPC/N比の重要性 市販のTPNキット製剤(エルネオパNF等)をそのまま使用するだけでは、糖質が過剰になり、肝心のたんぱく源(アミノ酸)が不足してしまう懸念があります。 NPC/N比の最適化 : 当院では、アミノ酸製剤(アミゼッ
2月2日読了時間: 2分


在宅医療を科学する8~糖尿病治療の落とし穴?SGLT2阻害薬と「正常血糖ケトアシドーシス」
現在、多くの糖尿病患者さんに処方されている SGLT2阻害薬 。血糖を下げるだけでなく、心不全や腎不全の予後改善にも効果がある非常に優れたお薬ですが、使用にあたっては正しく知っておくべき副作用があります。 今回は、近年注目されている副作用のひとつ、**「SGLT2ケトーシス」**について解説します。 1. SGLT2ケトーシスとは? 通常、糖尿病の重篤な合併症である「ケトアシドーシス」は、著しい高血糖(300〜500mg/dL以上)を伴うのが一般的です。 しかし、SGLT2阻害薬を服用している場合、血糖値がそれほど高くない(200mg/dL以下)にもかかわらず、体内の「ケトン体」が異常に増えて血液が酸性に傾く**「正常血糖性ケトアシドーシス(euglycemic DKA)」**という特殊な状態に陥ることがあります。これが臨床上、非常に重要な注意点です。 2. なぜ血糖値が正常なのにケトーシスが起こるのか SGLT2阻害薬は、腎臓の近位尿細管でのグルコース再吸収をブロックし、尿から糖を排出させることで血糖を下げます。 この時、体は「糖が足りない」と
2月2日読了時間: 2分


エビデンスに基づく健康情報5~「我慢」ではなく「整える」――専門医が語る、食欲と肥満のメカニズム
1. 日本人の肥満は「見た目」以上に危険? 肥満は単に見た目の問題ではなく、寿命を直撃する医学的な課題です。 深刻な健康リスク :肥満はメタボリックシンドローム、心筋梗塞、脳梗塞、さらには13種類以上のがんや認知症のリスクを高めます。研究では、健康寿命が最大で19年、寿命自体も8〜10年短縮される可能性が指摘されています。 BMI 25の壁 :日本ではBMI 25以上が「肥満」と定義されます。欧米(30以上)より基準が厳しいのは、日本人が病気に直結しやすい**「内臓脂肪」**を溜め込みやすい体質だからです。 「内臓脂肪」は病気の工場 :皮下脂肪と違い、肝臓の周りに付く内臓脂肪は高血圧や糖尿病などの代謝疾患を直接引き起こす、いわば「健康リスクの塊」なのです。 2. なぜ食欲は暴走するのか? 三大阻害要因 食欲を乱すのは「意志の弱さ」ではなく、脳とホルモンのバランスです。以下の3つの要素が食欲を狂わせます。 ストレスと「心の空腹」 :孤独感やストレスを感じると、ストレスホルモン「コルチゾール」が分泌され、食欲が増進します。これが、お腹が空いていないの
2月1日読了時間: 3分


攻めの栄養療法を科学する60~攻めの栄養療法:静脈栄養(PN)を使いこなすポイント
「口から食べられなくなったら、どうすればいい?」 在宅医療や術後の回復期において、栄養管理は病気と闘うための最大の武器です。今回は、投与設計を自由に変えられる「静脈栄養(PN)」の強みと、当院でも重要視している「攻めの処方設計」について解説します。 1. 静脈栄養(PN)の長所と短所 栄養療法には、**「経口(口から)」「経管(チューブから)」「静脈(点滴から)」**の3つのルートがあります。 長所: 消化管を安静に保つ必要がある病態に不可欠です。また、エネルギー量だけでなく、糖質・たんぱく質・脂質といった「マクロ栄養素」の組成を、身体状況に合わせて自由に変えられる唯一の方法です。 短所: 腸管を使わないことによる不利益(免疫機能の低下など)が生じる可能性があります。 2. 「攻めの末梢静脈栄養(PPN)」とは? PPNは腕などの末梢血管から行う点滴です。当院では、単なる栄養補充ではなく、早期回復を狙う**「攻めのPPN」**を推奨しています。 適応となるケース: 食事や経管栄養だけでは必要エネルギーが足りない場合。 術後早期のたんぱく質分解
2月1日読了時間: 2分


攻めの栄養療法を科学する26~各種疾患・合併症における禁忌事項
慢性心不全|「増やす栄養」と「抑える栄養」のバランスが鍵 慢性心不全とは 心不全は、 「心臓に器質的・機能的異常が生じ、心ポンプ機能の代償機構が破綻した結果、呼吸困難・倦怠感・浮腫が出現し、運動耐容能が低下する臨床症候群」 と定義されます。 慢性心不全における栄養管理の柱は、 体液バランス(ナトリウム管理) 適正なエネルギー・たんぱく質量の確保 です。 慢性心不全における栄養量の基本 エネルギー・たんぱく質量 サルコペニアやフレイルを合併しやすい慢性心不全では、 エネルギー :30 kcal/kg/day 以上 たんぱく質 :1.2~1.5 g/kg/day が推奨されています。 腎機能障害を伴う場合の注意点 ただし、 eGFR < 45 mL/分/1.73m²(CKD G3b 以上) を認める場合は、 たんぱく質:0.6~0.8 g/kg/day へ制限する必要があります。 👉 腎機能を無視した高たんぱく設定は禁忌 であり、「攻めの栄養療法」の落とし穴となります。 ナトリウム(塩分)管理の考え方 ナトリウムは細胞外液の浸透圧維持に関与するため
2025年12月26日読了時間: 3分
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