攻めの栄養療法を科学する68~【専門医解説】認知症で「食べてくれない」時の向き合い方――原因の理解と攻めの食支援
- 賢一 内田
- 30 分前
- 読了時間: 3分

認知症が進むと、単に食欲がないだけでなく、「食べ方がわからない」「途中で止まってしまう」といった特有の症状が現れます。これらは本人の意志ではなく、脳の障害によるものです。
今回は、認知症の種類ごとの特徴と、最後まで「その人らしく」食べるための工夫を解説します。
1. 認知症の種類で変わる「食べられない理由」
認知症にはいくつかのタイプがあり、それぞれ食事場面での困りごとが異なります。
アルツハイマー型 (AD): 進行とともに「食べ物であること」がわからなくなったり、道具の使い方がわからなくなったりします(失認・失行)。
レビー小体型 (DLB): 幻視(虫がいる等)で食べられなくなったり、パーキンソン症状による飲み込みの障害(嚥下障害)が強く出ることがあります。
前頭側頭型 (FTLD): 同じものばかり食べる「常同行動」や、食習慣が極端に変化することがあります。
血管性 (VaD): 脳の障害部位によって、飲み込みの麻痺や、食べ物への認識障害が個人差大きく現れます。
2. FASTステージから見る「食の支援」の目安
認知症の進行度を示す「FASTステージ」に合わせ、支援の重点を変えていきます。
ステージ4〜5(中等度): 料理の段取りや買い物が難しくなります。この時期から料理の支援や、口腔ケアの習慣化が重要です。
ステージ6(やや高度): 食べこぼしや、丸呑み、頬張りすぎが見られ始めます。食具の工夫や食形態の配慮が必要です。
ステージ7(高度): 言葉や歩行能力が失われ、嚥下反射が顕著に低下します。誤嚥性肺炎のリスクが高まるため、姿勢の調整や補助栄養の検討、そして「終末期」を見据えた意思決定支援が必要な段階です。
3. 「攻めの食支援」具体的な5つの工夫
「食べない」と決めつける前に、以下のポイントをアセスメント(評価)し、環境を整えます。
覚醒状態に合わせる: 起床時の目覚めが良いなら、その時間に高栄養の濃厚流動食を提供します。
情報の引き算: たくさん並ぶと混乱するため、1品ずつ出す「コース料理方式」や、ワンプレートにまとめると食べやすくなることがあります。
身体の苦痛を取り除く: 便秘、口内炎、義歯の不具合、腰痛など、「痛くて食べられない」原因がないか確認します。
姿勢の黄金律: 足底を床につけ、骨盤を垂直に、頸部はやや前屈(アゴを引く)させます。これが誤嚥を防ぐ基本姿勢です。
食品認知を高める: 食器を手に持たせてあげる、一口目を介助して味を認識してもらうなどのきっかけ作りが有効です。
「その人らしさ」を支えるために
認知症終末期(ステージ7以降)においては、人工的な水分・栄養補給(経管栄養など)を導入するかどうか、ご家族や多職種で納得できる合意形成を行うことが極めて重要です。
私たちは、食事の時間だけでなく日常生活全体を捉え、患者様の自尊心を守りながら「攻め」の栄養サポートを継続いたします。




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