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逗子、葉山、鎌倉、横須賀、横浜市金沢区の在宅医療

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在宅医療における認知症について73~【睡眠薬パンフレットはどう読むべきか】
——ラメルテオン国内治験(CCT003試験)を例に解説—— さくら在宅クリニック 不眠症治療では「プラセボ効果(偽薬効果)」が大きく働くことが知られています。そのため、製薬会社のパンフレットでは 実薬(本物の薬)のデータだけが強調され、プラセボ群の変化が見えにくくなる ことがあります。 今回は、睡眠薬ラメルテオン(商品名:ロゼレム)の国内治験データを例に、 “パンフレットをどう読むべきか” について整理してみます。 ■ ラメルテオンとは? メラトニン受容体を刺激して「自然な眠気を導く」作用があるとされる睡眠薬です。ベンゾジアゼピン系やオレキシン受容体拮抗薬とは作用機序が異なり、依存性が少ないことが特徴と言われています。 ■ CCT003試験の概要 対象:慢性不眠症患者 方法:ラメルテオン8mg vs プラセボ 期間:14日間 主要評価項目: 自覚的睡眠潜時(sSL:寝つくまでに要した時間)の変化 全員が「睡眠日誌」をつけながら経過を観察 睡眠潜時(sSL)は、 寝床に入った時刻 → 寝ついた時刻 の差として記録されます。 ■ “実薬だけ”を見た
6 時間前読了時間: 3分


在宅医療における認知症について72~【SNRI ベンラファキシンの治験データを読み解く】
— 実薬単独では効いて見えるが、プラセボと重ねると差はごくわずか — ベンラファキシン(イフェクサー)は 2015 年に国内承認された SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)です。「三環系より安全」「SSRIより効果が高い」と紹介されることがありますが、実際の治験データを見ると、その印象は大きく変わります。 今回の国内治験(B2411263 試験)も、前回の SSRI・NaSSA と同じ構図です。 ■ 1. 実薬だけを見ると“効いているように見える”(図7) 最初に提示される図7では、 75mg/日 75–225mg/日 この2群の 実薬だけを並べた折れ線グラフ 。 治療前 → 8週間後で HAM-D が大きく下がるため、「SNRIはやはり強いな」という印象を受けます。 ……しかし、これは プラセボを意図的に載せていない グラフです。 ■ 2. プラセボを入れると印象は一変(図8) 図8では、実薬とプラセボ群を重ねた折れ線グラフ。 プラセボも大きく改善 75mg群・高用量群ともに線はほぼ重なる 違いは視覚的に“ほぼゼロ” しか
1 日前読了時間: 3分


在宅医療における認知症について71~【ミルタザピン(NaSSA)の治験結果を読み解く】
— プラセボとの差はわずか、それでも副作用はしっかり出る — ミルタザピン(レメロン/リフレックス)は「NaSSA」として知られ、SSRIでもSNRIでもない“別系統の抗うつ薬”としてよく紹介されます。 しかし、 治験データを見る限り、SSRIと同じ問題点 が存在します。 実薬単独のグラフだと効いて見える プラセボと重ねると差が小さく見える なのに有害事象だけは用量依存的に増える 製薬会社パンフレットにおける印象操作が非常に分かりやすい例です。 ■ 1. 実薬だけを見ると「お、効いている」と感じる(図4) ミルタザピンの国内治験(001試験)では 15mg 30mg 45mg の3群が比較されました。 図4は プラセボを掲載しない実薬のみのグラフ です。 治療前 → 6週間後でHAM-Dが大きく改善しているように見え、「やはり抗うつ薬は効くんだな」という印象になります。 ……しかし、これは プラセボを抜いたグラフ です。 ■ 2. プラセボを入れると“ほぼ同じ”に見える(図5) 図5では、同じデータに プラセボ群の線を追加 。 すると印象は
2 日前読了時間: 3分


在宅医療における認知症について70~【抗うつ薬の“効果グラフ”はなぜ誤解を生むのか】
— 製薬会社が「プラセボ群を目立たなくする」方法を徹底解説 — 抗うつ薬の効果を示す治験データは、しばしば プラセボ群(偽薬)に比べて優れているように見えるよう加工 されています。 とくにSSRI のように、 自然回復率の高いうつ病 では、実薬とプラセボの差が小さく、製薬会社にとっては治験データの見せ方が極めて重要です。 今回取り上げるのは、2011年発売のSSRI エスシタロプラム(レクサプロ) の国内治験(MLD55-11MDD21)のグラフです。 実データを読み解くと、製薬会社パンフレットで典型的に行われる“印象操作”がよくわかります。 ■ 1. プラセボなしのグラフはよく見える(図1) 最初の図は「実薬10mg群」と「20mg群」だけを比較したもの。 治療前 → 8週間後で HAM-D が大きく下がるので 「お、効いているな」 と感じます。 しかし── これはプラセボ群が描かれていないグラフです。 つまり、「自然経過で良くなっている分」を隠しているわけです。 ■ 2. プラセボを入れると印象は一変(図2) 同じ治験で、 プラセボ群も一緒に
3 日前読了時間: 3分


在宅医療における認知症について69~「抗うつ薬に依存性はない」という言葉をどう受け止めるか
— 中止後症状と“依存性なし”のギャップ — 前回の記事で触れたように、抗うつ薬、とくにSSRI・SNRIには**中止後症状(discontinuation symptoms)**が高頻度にみられます。しかし、この「中止後症状」という概念は、 現場の一般臨床医には十分知られていない 可能性があります。 抗うつ薬の効果(抑うつ改善・疼痛軽減)だけでなく、 中止後症状がどの程度起こりうるのか どんな症状が出るのか といった情報まできちんと書いてある製薬会社パンフレットがあるなら、それは非常に有用でしょう。しかし実際には、 そこまで踏み込んで書かれているパンフレットはほとんどありません。 1. 「離脱症状」と言ってはいけない?精神薬理学の立場 一度飲み始めるとなかなかやめにくい薬、と聞くと、どうしても「薬物中毒」「禁断症状」をイメージしがちです。 ベンゾジアゼピン受容体作動薬については、 承認用量の範囲内であっても 長期服用により 身体依存が形成される 減量・中止で離脱症状が出る という点について、PMDAが強い警告を出しています。 それなのに、...
4 日前読了時間: 5分


在宅医療における認知症について68~【医師向け】抗うつ薬の「中止後症状」を理解する
— SSRI・SNRIの離脱症状はなぜ起こるのか — 抗うつ薬は“始めるのは簡単だが、やめるのは難しい薬”です。その理由のひとつが、服薬中断によって現れる 「抗うつ薬中止後症状(discontinuation symptoms)」 です。 イライラ 嘔気 めまい 運動失調 発汗 感覚異常 悪夢 これらの症状は、うつ病の再発と見分けにくく、時に患者さん・医療者双方を混乱させます。 ■ 1. 抗うつ薬中止後症状とは? 英語では "antidepressant discontinuation symptoms" と呼ばれ、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)で特に起こりやすいものの、 すべての抗うつ薬で発生しうる とされています。 中止後症状は、欧米でも1990年代以降くり返し研究されており、抗うつ薬の治療ガイドラインでも “注意すべき副作用” として位置づけられています。 ■ 2. SNRI(特にデュロキセチン)でも高頻度に起こる デュロキセチンは、 うつ病 糖尿病性神経障害 線維筋痛症 慢性腰痛症 変形性関節症の疼痛 …など多くの効能
5 日前読了時間: 4分


在宅医療における認知症について67~【医師向け】「非ベンゾジアゼピン系睡眠薬」という言葉に潜む“印象操作”
精神科領域の製薬会社パンフレットをどう読むか 医療の世界は非常に幅広く、精神科を専門としない医師が“精神薬理”の細部まで把握することは現実的には困難です。その隙間を埋めるように、製薬会社は「精神科の知識を分かりやすくまとめたパンフレット」を無料で配布します。 しかし、その多くは**気づかれないように巧妙に“自社製品が有利に見えるよう加工された情報”**です。医師側はそれを理解したうえで読み解くか、それとも受け取らないか──常に二者択一を迫られています。 精神科や老年医学の領域では特に、こうした“用語の印象操作”によって誤解が生まれやすく、処方判断に影響が出ることもあります。 ❚ よくある印象操作① 「非ベンゾジアゼピン系睡眠薬」という“安全そうな名前” ゾルピデム・ゾピクロン・エスゾピクロンは、製薬会社の資料では**「非ベンゾジアゼピン系睡眠薬」**という名前で紹介されます。 この表現は、 💡 ベンゾジアゼピンとは全く違う、安全な新世代の睡眠薬という“誤った印象”を与えがちです。 しかし実際には── ■ 同じ受容体に結合します...
6 日前読了時間: 3分


在宅医療における認知症について66~長谷川式簡易知能評価スケール改訂版(HDS-R)
― 日本で最も広く使われる認知症スクリーニング検査 ― HDS-Rは、日本の高齢者における 認知症のスクリーニング を目的に作成された検査です。特に 記憶障害を中心に、大まかな認知機能の低下を捉える ために設計されています。 最高点:30点 20点以下 → 認知症が疑われる 21点以上 → 非認知症とするのが最も弁別性が高い MMSEと同じ「30点満点」ですが、評価している領域や構成・順番が大きく異なります。 MMSEとHDS-Rは同時実施が不可能 であり、役割もやや異なります。 ■ HDS-Rの構造と実施法(MMSEとの比較を交えながら) HDS-Rには 日本文化に特有の配慮 や、 言語・記憶中心の評価 が特徴的にみられます。 以下、各項目の実施ポイントとMMSEとの違いを整理します。 ① 年齢(1点) 「お年はいくつですか?」 誤差2年まで正解 数え年文化に配慮した、日本独自の仕様 MMSEにはこのような“許容範囲”の規定はありません。 ② 時間の見当識(4点) 「今年は何年ですか?」「今日は何月ですか?」など。 MMSE(5点)よ
11月21日読了時間: 4分


在宅医療における認知症について6在宅医療における認知症について65Ala score(アラ・スコア)でみる
― アルツハイマー病とレビー小体型認知症の違い ― アルツハイマー病(AD)とレビー小体型認知症(DLB)は、初期症状の出方が少し違います。 アルツハイマー病初期 → 記憶障害(もの忘れ)が目立つ レビー小体型認知症初期 → 記憶障害はそれほど目立たず、 注意力の障害 と 視空間認知の障害 が目立ちやすい この違いを利用して、 MMSEの下位項目だけでADとDLBをある程度見分けよう としたのが Ala score(アラ・スコア) です。 ● Ala score の計算式 Ala score は、MMSEの以下の3つの下位得点を組み合わせます。 注意(④の100−7など) 想起(⑤の再生:3語の呼び戻し) 構成(⑪の二重五角形の模写) 論文中では、次のような合成得点として定義されています(概念的に): Ala score = 「注意」 − (想起スコアを補正)+ 「構成」 この合成点数が 低いほどDLBの可能性が高い とされ、 5点未満をDLBとみなすと、感度は約0.8 でADとの鑑別に役立つと報告されています。...
11月20日読了時間: 3分


在宅医療における認知症について6在宅医療における認知症について64~認知症が疑われる患者さんの「評価の進め方」
認知症を疑う患者さんを評価する際には、段階的に情報を集め、誤診を避けることが重要です。ここでは 第1段階〜第3段階 の流れと、特に使用頻度の高い MMSEとHDS-R の注意点についてまとめます。 ■ 第1段階:病歴聴取(家族からの情報が最重要) 最初のステップは、患者さんご本人と家族からの丁寧な病歴聴取です。 ● 特に確認すべきポイント 症状の進行パターン 徐々に進むのか、階段状に悪化するのか 生活への影響度 日常生活に支障が出ているのか、単なる物忘れなのか 社会背景・生活状況 1人暮らしか、家族の支援状況はどうか 認知症では特に 家族からの情報が極めて重要 です。本人が自覚していない認知機能の低下を家族が気づいていることが多いためです。 ■ 第2段階:身体診察(神経学的評価を含む) 認知機能の低下が、脳血管障害・パーキンソン症候群など別の疾患によるものかを判断します。 ● 特に確認すべき所見 歩行障害(小刻み歩行・すくみ足) 錐体外路症状(筋固縮・手の震え・無動) 視野障害・麻痺・感覚障害 身体診察の段階で「認知症とは別の原因」が
11月19日読了時間: 4分


在宅医療における認知症について63~認知症予防として“無効”とわかっている方法
世の中には「認知症に効く」「脳に良い」と宣伝されるサプリメントや健康法が数多くあります。しかし、実際には 科学的根拠に基づいた臨床研究で効果が否定されているもの も少なくありません。 ここでは、無作為化比較試験(RCT)やメタ解析など、信頼性の高い研究に基づいて “予防効果がない” と確認されている方法をまとめます。 ■ 1. ビタミンEなどの抗酸化物質(サプリメント) ビタミンE・C、ベータカロチン、亜鉛・銅など「抗酸化」をうたうサプリメントには、認知症を予防する効果がありません。 ● 主な研究結果 2166名・7年間のRCT ビタミンE・C・ベータカロチン → 認知機能はプラセボと同じ MCI(軽度認知障害)769名・3年間のRCT ビタミンE・ドネペジルともに アルツハイマー病予防効果なし 65歳以上の女性 39,876名 ビタミンE → 認知機能改善なし 心血管リスク女性 2824名 ビタミンC・E・βカロチン → 認知機能改善なし 男性7540名 ビタミンE・セレニウム → 認知症発症予防なし → 抗酸化サプリで認知症は予防
11月18日読了時間: 3分


在宅医療における認知症について62~認知症予防:生活習慣病と生活習慣が与える大きな影響
認知症は「年齢」「遺伝」など変えられない要因もありますが、実は 生活習慣病や生活習慣の改善 によって発症リスクを下げられることが、多くの研究によって示されています。 本記事では、予防効果を期待できる “変えられる因子” として ①生活習慣病の管理(糖尿病・高血圧)②生活習慣(禁煙・運動・節酒・食生活) の2つに分けて解説します。 ■ 生活習慣病と認知症リスク 1. 糖尿病 糖尿病は認知症、特にアルツハイマー病のリスクを高めることが、数多くの観察研究で示されています。 台湾研究:糖尿病群は アルツハイマー病の発症が1.76倍 日本研究:糖尿病ありで 発症2.05倍 メタ解析: アルツハイマー病 1.46倍 血管性認知症 2.48倍 → 血糖管理は認知症予防に直結 。 2. 高血圧 特に 中年期の高血圧 が認知症リスクを上昇させます。 中年期の高血圧は認知機能低下と強く相関 75歳以上では「降圧しすぎても予防効果は不明」 75歳以上の降圧目標: 150/90mmHg(可能なら140/90未満) → 40〜60代のうちにしっかり治療することが予
11月17日読了時間: 3分


在宅医療における認知症について61~ 認知症を「予防する」ために知っておきたいこと
― 特に“薬”が与える影響について ― 認知症の方を支えるご家族、とくに子世代からは、 「自分も認知症になるのでは…」 と心配の声を聞くことが少なくありません。 これまでの数多くの疫学研究から、認知症の発症にはいくつかの“危険因子”があることがわかっています。 ■ 変えられない危険因子 代表的なものは以下の3つです。 加齢 :年齢が上がるほど発症リスクが高まる 遺伝(アポリポタンパクE ε4) :アルツハイマー病の発症リスクを高める 教育年数 :教育期間が長いほど発症しにくい傾向 しかし、これらは「知ったところで避けようがない」因子ばかり。そこで注目されるのが、**“変えられる要素=予防可能な因子”**です。 一般臨床の現場で取り組める予防要因は大きく3つあります。 医薬品(薬の影響) 生活習慣病(高血圧・糖尿病など)の管理 生活習慣(運動・睡眠・栄養など) 本記事では、その中でも特にエビデンスが蓄積している**「薬と認知症リスク」**にフォーカスします。 ■ 1. ベンゾジアゼピン(BZD)系薬と認知症リスク ベンゾジアゼピン受容体作動薬は、不
11月16日読了時間: 4分


在宅医療における認知症について60~認知症の「病状説明」をどう行うか― 告知の限界と、軽症例における慎重な対応 ―
🔹 病状説明の前提:「告知は技術的に不可能」 認知症の診断や病名の説明(病状説明)は、患者本人や家族・介護者との協力関係を築くうえで欠かせないステップです。しかし、まず押さえておくべき 大前提 があります。 それは、 認知症の「確定診断」を技術的に行うことは現状では不可能である ということです。 認知症の確定診断は 病理診断 (脳組織を直接調べる方法)によってのみ可能です。私たちが日常臨床で行っているのは、あくまで 臨床診断 ですが、その診断基準は不完全であり、 病理診断と一致しないケースも少なくない ことが知られています。 つまり、医師の診断は「最善の推定」にすぎず、 “確定告知”は医学的に成立しない のです。 🔹 「軽症だからこそ伝えるべき」は誤り しばしば、「軽度の認知症なら理解力が保たれているから、本人に診断名を伝えるべきだ」と言われます。一見もっともらしい意見ですが、実はこの考え方には大きな誤解があります。 理由はシンプルで、 軽症であればあるほど診断が難しいから です。 軽症例では症状があいまいで変動も多く、専門医でも確定に至らな
11月14日読了時間: 3分


在宅医療における認知症について59~認知症の基本的対応③
〜外出の機会が乏しいときはデイサービスを活用する〜 認知症の進行を遅らせるために最も効果的なのは、**「家に閉じこもらないこと」**です。特に仕事や社会活動が少なくなっている方は、**デイサービス(通所介護)**の利用を積極的に検討しましょう。 1. デイサービスは「治療の一環」 英国の医療ガイドライン(NICE:National Institute for Health and Care Excellence)では、軽度〜中等度の認知症の方に対して、 「構造化された集団認知刺激療法(Cognitive Stimulation Therapy)」への参加 を推奨しています。 これは、日本でいう「デイサービス」で実践されている内容に近く、 “社会的交流を通じて脳を刺激する”非薬物療法 として科学的に裏づけられています。 2. デイサービスの効果 🔹 抗認知症薬との比較 国内の臨床試験(ガランタミン・メマンチンなど)の解析では、 介護サービスを利用している集団のほうが、利用していない集団よりも症状改善の割合が高い という結果が得られています。...
11月7日読了時間: 4分


在宅医療における認知症について58~認知症の基本的対応②
〜火の不始末への早期対応と社会的活動の継続〜 認知症が進行すると、本人だけでなく家族・近隣の安全にも関わるリスクが生じます。その代表が「 火の不始末 」です。一方で、認知症の人が長年続けてきた 仕事や社会的活動を早く手放すこと は、心身の衰えを早める要因にもなります。ここでは、 安全確保と活動維持を両立させる実践的なポイント を紹介します。 1. 火の不始末 ― 「一度焦がしたらもう危険信号」 🔥 なぜ早めの対応が必要か 火の不始末は、本人だけでなく 周囲を巻き込む重大事故 につながります。特に 独居高齢者 の場合、近隣トラブルや施設入所を迫られる理由になることも少なくありません。そのため、 早期から安全対策を取ることが鉄則 です。 👀 チェックすべきポイント まずは日常の中で、次のようなサインがないか確認しましょう。 鍋ややかんが焦げていないか 仏壇のろうそくが安全に使われているか 畳やこたつに タバコの焼け跡 がないか 壁や天井に 煙跡・スス汚れ がないか こうした「小さな異変」が、火災リスクの初期サインになります。 🧯 現実的な安全対
11月6日読了時間: 4分


在宅医療における認知症について57~認知症への基本的対応
〜安全と尊厳を両立させるために最初に行うこと〜 認知症が疑われた場合、まず行うべきことは**「原因を見極める」こと**です。その上で、日常生活を安全に、そしてできるだけ自立的に過ごすための対応を整えていきます。 1. まず除外すべきこと 認知症のように見えても、 内科疾患や脳外科疾患 が原因のことがあります。甲状腺機能低下症、ビタミン欠乏、脳梗塞、正常圧水頭症など——いずれも治療可能な場合があります。 また、**薬の副作用による「薬剤性認知機能低下」**も少なくありません。睡眠薬、抗不安薬、抗コリン薬などが原因のこともあり、「一度減薬して様子を見る」ことが重要です。 これらの除外が済み、「認知症性疾患」として確からしい場合、次に行うのが 基本的対応 です。 2. 対応の優先順位 認知症の方への対応の原則は、次の5つのステップに整理できます。 1️⃣ 危険動作をやめてもらう 2️⃣ 仕事や社会的活動をできるだけ長く続けてもらう 3️⃣ 外出機会が乏しい場合はデイサービスなどを活用する 4️⃣ 家庭内では「失敗体験」をさせない 5️⃣ できる範囲で家
11月5日読了時間: 4分


在宅医療における認知症について56~抗精神病薬 ― 用法・用量と中止のタイミング
〜「できるだけ少なく・できるだけ短く」が原則〜 抗精神病薬は、認知症のBPSD(行動・心理症状)に対して確実な効果がある一方、死亡率を含む重大な副作用リスクがある薬です。そのため、「 できるだけ少ない量を、できるだけ短期間だけ使う 」ことが大原則です。 1. 用法・用量 ― 少量・短期使用を徹底する 抗精神病薬を処方する際は、 最小限の用量から始め、必要があれば段階的に調整 します。 🔹 リスペリドン(欧州での認可基準・日本では未承認) 欧州では、アルツハイマー型認知症に伴う持続的な攻撃性に対してのみ、短期間の使用が認められています。 開始:0.25mgを1日2回 必要に応じて2日に1回の頻度で0.25mgずつ増量 通常至適用量:0.5mg 1日2回 最大でも:1mg 1日2回 使用期間は6週間以内に限定 日本ではBPSDに対して正式に承認されていません。このため、「リスペリドンを推奨する」という意味ではなく、あくまで**“短期・少量”の目安として参考にする**という位置づけです。 なお、 クエチアピンとオランザピン は日本国内において 糖尿病
11月4日読了時間: 4分


在宅医療における認知症について55~抗精神病薬 ― 効果と危険性をどう見極めるか
〜BPSD(認知症の行動・心理症状)への最終手段〜 BPSD(認知症に伴う興奮・幻覚・妄想など)は、時に介護者の努力だけでは対応しきれないことがあります。そのようなとき、医師が最後の手段として検討するのが 抗精神病薬 です。 しかしこの薬は、確かに「効く」一方で、 命に関わる副作用のリスクもある 。ここでは、その効果と危険性、そして「使うべきかどうか」を考える視点を解説します。 1. 効果とリスクのバランス 非定型抗精神病薬(リスペリドン、オランザピン、クエチアピンなど)は、BPSDのうち特に 興奮・暴言・幻覚・妄想 に対して効果があることが、複数の臨床試験で確認されています。 一方で、そのレビュー(系統的解析)では次のような 有害事象の増加 が報告されています: 眠気・過鎮静 錐体外路症状(手足の震え、筋硬直など) 脳血管障害(脳梗塞など) 尿路感染症、浮腫、歩行障害 死亡リスクの上昇 つまり、「効くけれど危険性も高い」。抑肝散やトラゾドンよりも確実に症状を抑える効果がありますが、その代償として 副作用のリスクが格段に高い のです。 2. FD
11月3日読了時間: 4分


在宅医療における認知症について54~トラゾドン ― 認知症の不眠に対して「唯一の科学的根拠がある薬」
〜ベンゾ系は使ってはいけない、トラゾドンが第一選択〜 同居家族を睡眠不足に追い込むほど厄介なのが、**認知症の人の夜間不眠(睡眠障害)**です。夜中に何度も起きて歩き回る、叫ぶ、昼夜逆転する——こうしたBPSDは、介護者の消耗を大きくし、施設入所や入院を余儀なくされる大きな要因になります。 ベンゾジアゼピン系睡眠薬は使ってはいけない 従来、睡眠障害に対して多く使われてきたのが ベンゾジアゼピン受容体作動薬(BZD系) 。しかし、最新の系統的レビューでは、BZD系の睡眠薬に関して 認知症患者を対象としたプラセボ対照二重盲検試験が1件も存在しない ことが報告されています。 しかも、BZD系薬剤には以下の副作用リスクが 科学的に確立 しています: 認知機能の低下 せん妄の誘発 転倒・骨折のリスク増加 したがって、 認知症の人の睡眠障害にBZD系を使うべきではありません 。 トラゾドンだけがプラセボを上回った 同レビューによると、これまで臨床試験が行われたのは メラトニン、ラメルテオン、トラゾドン の3剤のみ。 メラトニン → 無効 ラメルテオン → 無
11月2日読了時間: 4分
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