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在宅医療における認知症について71~【ミルタザピン(NaSSA)の治験結果を読み解く】

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 2 時間前
  • 読了時間: 3分

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プラセボとの差はわずか、それでも副作用はしっかり出る —

ミルタザピン(レメロン/リフレックス)は「NaSSA」として知られ、SSRIでもSNRIでもない“別系統の抗うつ薬”としてよく紹介されます。

しかし、治験データを見る限り、SSRIと同じ問題点が存在します。

  • 実薬単独のグラフだと効いて見える

  • プラセボと重ねると差が小さく見える

  • なのに有害事象だけは用量依存的に増える

製薬会社パンフレットにおける印象操作が非常に分かりやすい例です。

■ 1. 実薬だけを見ると「お、効いている」と感じる(図4)

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ミルタザピンの国内治験(001試験)では

  • 15mg

  • 30mg

  • 45mg

の3群が比較されました。

図4は プラセボを掲載しない実薬のみのグラフ です。

治療前 → 6週間後でHAM-Dが大きく改善しているように見え、「やはり抗うつ薬は効くんだな」という印象になります。

……しかし、これは プラセボを抜いたグラフ です。

■ 2. プラセボを入れると“ほぼ同じ”に見える(図5)

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図5では、同じデータに プラセボ群の線を追加

すると印象は一変します。

  • プラセボ群も大きく改善

  • 15mg・30mgはわずかに良い

  • 45mgはプラセボと明確な差なし(p = 0.2028)

見た目の差は非常に小さく、しかもプラセボ群の線は「点線・薄い色」で目立たなく加工されています。

■ 3. 実際の数字を見ると差はわずか(表12)

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HAM-D改善量:

改善量(6週)

プラセボ

-10.4

15mg

-13.3

30mg

-13.8

45mg

-11.9

ざっくり計算すると:

🔹 実薬の見かけ上の改善の約 80% はプラセボ効果で説明できる🔹 薬としての“純粋な効果”はせいぜい2割前後

45mgに至っては、プラセボと統計的に有意差なし(p=0.2028)という結果です。

■ 4. しかし、有害事象はしっかり出る(図6)

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実薬は「効果は小さい」のに「副作用は大きい」。

有害事象の発生率:

発生率

プラセボ

67.1%

15mg

85.5%

30mg

80.0%

45mg

80.3%

主な副作用:

  • 傾眠

  • 口渇

  • 倦怠感

  • ALT上昇

  • 便秘

副作用は用量依存的に増えているのに、有効性は用量依存的ではないというアンバランスな構造です。

■ 5. 「真の効果はごくわずか、でも副作用は確実」という現実

ミルタザピンは「NaSSAだから効き方が違う」と説明されることがありますが、治験データを見れば実態はSSRIとほぼ同じ です。

  • プラセボと実薬に大差なし

  • 実薬群だけのグラフは“効いて見えるように”加工

  • 副作用はプラセボより明確に増加

  • 高用量が特に良いわけでもない(むしろ差が消える)

製薬会社パンフレットは教科書ではなく広告物であり、実薬の印象が良く見えるように作られていることがよく分かるデータです。

■ 6. 臨床でどう考えるか?

  • ミルタザピンが効かない薬、というわけではない

  • しかし「自然回復の大きさ」を理解せずに服薬判断をすると、副作用ばかり受けて得をしない 人が出やすい

  • 特に高齢者では、

    • 傾眠(転倒リスク)

    • 口渇(脱水・食欲低下)

    • ALT上昇(肝機能悪化)

など臨床的に重要な副作用が問題になりやすい

したがって医師としては、

「プラセボとの差」「副作用の重さ」を事前に説明し、患者と一緒に“飲む価値があるか”を検討することが重要

です。

■ 参考リンク

● さくら在宅クリニックhttps://www.shounan-zaitaku.com/



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