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逗子、葉山、鎌倉、横須賀、横浜市金沢区の在宅医療

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看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する59~肺エコー×気道エコーによる食道挿管の確認― 現場で役立つ安全な換気評価の手法 ―
🔹 食道挿管の確認には「気道エコーの併用」が有効 気管挿管時に最も避けたいのが**誤って食道にチューブが入る“食道挿管”**です。この確認には、 肺エコーだけでなく気道エコーを併用する ことで、より確実な評価が可能になります。 気道エコーでは、**上気道(咽頭〜鎖骨上レベルの気管)**を観察します。リニア型(高解像度)プローブを使用し、設定は次の通りです: Depth(深度) :4cm以内 Gain(輝度) :基本的に調整不要 古い装置でも十分に施行可能であり、特別なモード設定は必要ありません。 🔹 挿管中と挿管後の確認方法 ▶ 挿管手技中の確認 気道エコーを喉頭部に当てながら挿管を行うと、 気管内へチューブが挿入される動き がリアルタイムに観察できます。チューブの進入に伴い、画像上で**気管内部が動く“ガチャガチャした所見”**として確認されます。 ▶ 挿管手技後の確認 一方、挿管後はチューブ自体を直接確認することは困難です。超音波ビームが気管粘膜で反射するため、チューブの位置は見えにくくなります。 そのため、**挿管後の評価では「食道にチ
11月13日読了時間: 3分


看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する58~肺エコーの臨床的役割と観察ポイント― 換気確認から病態評価まで ―
🔹 肺エコーが活用される主な場面 肺エコー(Lung Ultrasound, LUS)は、使用目的によって評価対象が変わりますが、主に以下のような場面で用いられます。 気管挿管後の換気確認 ショック時の病態評価(循環不全・うっ血) 酸素化不良時の呼吸状態評価 換気確認を目的とした場合、 胸膜の動き(Lung sliding)が最も重要な観察項目です。一方で、肺炎・肺水腫・気胸・胸水・無気肺などの病変も、超音波所見から推定可能です(図9)。特に肺底部の観察では胸水と無気肺の鑑別 がしやすく、聴診で「呼吸音が減弱」と感じたときの判断材料になります。 🔹 挿管後の確認における肺エコーの優位性 気管挿管後、左右の気管支に正しくチューブが入っているかを聴診で確認するのは基本的な手技です。しかし、体格・環境・聴診条件により正確性にばらつきが出ることがあります。 近年では、 肺エコーによるLung slidingの確認が聴診よりも高感度・高特異度 であることが報告されています。特に**片肺挿管(unilateral intubation)**では、換気され
11月12日読了時間: 3分


看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する57~肺エコーで使用するプローブと装置の選び方
― 正確な胸膜評価のために ― 肺エコー(Lung Ultrasound, LUS)を行う際も、超音波診断の基本原則は変わりません。“どのプローブでもある程度は観察できる”というのは事実ですが、 それぞれの特性を理解して使い分けること が診断精度向上の鍵です。 🔹 各プローブの特徴と使い分け プローブの種類 特徴・用途 長所 注意点 リニア型(Linear) 胸膜など体表から浅い構造の観察に最適 高解像度で胸膜滑動(Lung sliding)を明瞭に描出 深部描出には不向き コンベックス型(Convex) 肺実質や肺底部の観察に適す 広範囲を観察可能、深部まで到達 胸膜表面の細かい動きは不明瞭 セクタ型(Sector) 肋間からの観察に便利 狭いスペースでもアプローチ可能 解像度がやや低い、アーチファクトが出やすい 👉 ポイント : 胸膜やLung slidingの観察には リニア型 。 肺底部や胸水・Bラインの観察には コンベックス型 or セクタ型 が有効です。 🔹 超音波装置の選び方 最新機種でなくても構いません。重要なのは、**「
11月11日読了時間: 2分


看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する56~肺エコーでの観察(アプローチ)のポイント
― 換気確認から見える“肺の動き” ― ① 換気確認の基本:呼吸に伴う胸膜の動きを捉える 呼吸時、肺は風船のように膨らんだり縮んだりします。このとき肺の表面を覆う 臓側胸膜 が伸縮し、それに対して胸壁内側を覆う 壁側胸膜 はほぼ固定されています。 肺エコーでは、この 臓側胸膜の動き を観察することで**換気状態(Lung sliding)**を確認します(図1)。胸膜は2枚構造であること、そして肺の動きに追随するのは臓側胸膜だけであることを理解しておくことが、画像解釈の第一歩です。 ② 観察部位とプローブの選択 観察は**胸部前面と後面で左右4箇所ずつ(計8ポイント)**行うのが基本です(図2)。使用するのは、 高解像度リニアプローブ (体表観察向け)。設定は以下を目安にしましょう。 Depth(深度) :4cm以内 Gain(輝度) :基本的に調整不要 胸膜表面の動きを鮮明に捉えることが目的です。 ③ BATサインとLung Sliding(ラング・スライディング) プローブを 矢状断方向 (肋骨と平行)に当てると、エコー画像上で 2本の肋骨に
11月10日読了時間: 3分


看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する55~血行動態の評価:IVC(下大静脈)の観察ポイント
① IVCの太さから循環状態を読み解く 下大静脈(IVC:Inferior Vena Cava)の観察は、 うっ血性心不全のスクリーニング に有用です。IVCは右房圧を反映する血管であり、呼吸に合わせて径が変化します。吸気時には陰圧により血液が右房に引き込まれ、径が細くなり、呼気時には膨らみます。 この呼吸性変動が小さい、あるいは消失している場合には、右房圧上昇=うっ血を疑います。循環動態が不安定な患者では、まずこのIVCの動きを確認することが重要です。 ② 測定方法:右房入口から約2cmの位置で IVC径は**吸気時(最小径) と 呼気時(最大径)**を測定します。図のように、肝臓をランドマークとして右房入口部から約2cmの位置で計測します(図8参照)。 基本的には 長軸像 での観察が推奨されますが、描出が難しい場合には 短軸像 での確認も可能です。このとき、右房との連続性を意識しながら、径の変化を観察しましょう。 ③ 評価の目安:うっ血 or 脱水のサイン IVC径と呼吸性変動 推定される状態 20mm以下で呼吸性変動あり 正常 20mm以上
11月8日読了時間: 2分


看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する54~在宅でできる「水分貯留と心機能」の評価
〜心嚢液・胸水・LVEF・IVCの観察ポイント〜 ① 水分貯留の評価 ― 心嚢液と胸水を見分ける 在宅医療で心不全を診るうえで重要なのが、**体内の水分貯留(うっ血)**を把握することです。心臓の周囲や胸腔内に液体がたまると、呼吸苦や倦怠感の原因になります。 心嚢液 は心臓を包む膜(心嚢)の内側に貯留し、**心窩部断面(みぞおち方向からのアプローチ)**で観察できます。エコー上では液体成分のため、 黒く抜けた無エコー域 として描出されます。同様に、 胸水 も胸腔内にたまる液体で、心嚢液と同じく黒い無エコー像として観察されます。 少量の心嚢液は経過観察で済むことが多いですが、**心嚢液が多量に貯留して心臓を圧迫する(心タンポナーデ)**場合は緊急対応が必要になります。 ② 心収縮機能の評価 ― LVEF(左室駆出率) 心臓のポンプ機能を示す最も代表的な指標が、**LVEF(Left Ventricular Ejection Fraction:左室駆出率)**です。 LVEFは、心臓が拡張して最も大きくなったときの左室内径(拡張末期径)と、収縮して最
10月31日読了時間: 3分


看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する53~在宅医療で活かす「心エコー」
〜プローブの当て方と観察の基本〜 ① 患者の体位とアプローチ方法 心エコー検査では、 左側臥位または左半側臥位 が基本です。胸骨左縁の 第3〜第4肋間 から観察すると、心臓の構造を最も明瞭に描出できます。 しかし、在宅医療の現場では、 体位変換が難しい 高齢で心臓の位置が下がっている 肺気腫などを合併している といったケースも多く見られます。そのような場合には、 仰臥位のまま心窩部(みぞおち)から観察する ことが有効です。 この「胸骨左縁」と「心窩部」からの2か所のアプローチで、 短時間・低負担で基本的な心機能評価 が可能になります。 ② 使用する装置とプローブ 成人の心エコーでは、 1〜5MHz程度のセクタ型プローブ が標準的です。視野が広く、肋骨の間から心臓全体をとらえることができます。一方、 心窩部からの観察 では、 コンベックス型プローブ でも代用可能です。最近の携帯型エコーには、これらの機能が一体化されており、在宅でも実用的です。 ③ 観察法①:胸骨左縁から心臓全体を描出(左室長軸像) プローブの位置 は胸骨左縁の第3〜4肋間。 マーカ
10月30日読了時間: 3分


看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する52~在宅での需要が高まる「心エコー」の役割
〜高齢社会における心不全管理の新しい視点〜 ① 心疾患は高齢者の主要な死因 日本は世界でも類を見ない超高齢社会を迎えています。それに伴い、 心不全 をはじめとする心疾患の患者数が急増しており、「息苦しい」「足がむくむ」「疲れやすい」といった訴えをもつ高齢者が増えています。 心疾患は、現在日本の 後期高齢者の死因第2位 を占めており、在宅医療でも避けて通れない重要な疾患領域です。 ② 在宅での心不全モニタリングにエコーが活躍 慢性心不全の患者さんは、 在宅での経過観察 が中心となります。普段の生活の中で少しずつ体調が変化するため、医師や看護師が定期的に「増悪のサイン」を見極めることが大切です。 その際に役立つのが、**携帯型の心エコー(超音波検査)**です。呼吸苦や浮腫が出現したときに、心臓の動きをその場で確認できれば、「入院が必要か」「在宅で調整可能か」の判断がスムーズになります。 ③ 在宅で心エコーを行う目的 心不全とは、心臓が全身へ十分な血液を送り出せなくなった状態です。在宅での心エコーでは、主に次の3つのポイントを押さえることで、 心機能の
10月29日読了時間: 3分


看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する51~エコーで腹水量を推定する方法
〜体腔液の性状と臨床判断のポイント〜 ① 腹水量の目安をエコーで評価する 腹水がどの程度たまっているのかを知ることは、治療方針を立てるうえで非常に重要です。CTなどの精密検査ができない場面でも、 エコー(超音波)を用いた簡便な腹水量推定法 が考案されています。 この方法では、 腹水の分布と厚み を基準に概ねの貯留量を推定します。 腹水の分布 推定量(mL) モリソン窩や脾腎境界のみ 約150mL ダグラス窩または膀胱上窩のみ 約400mL 左横隔膜下にわずかに貯留 約600〜800mL 両側傍結腸溝(左右結腸腹側)にも貯留 約1,000〜1,500mL 右横隔膜下に厚み1.0cm 約2,000mL 右横隔膜下に厚み2.0cm 約3,000mL ※仰臥位・体重50kgの成人を標準とした推定値(文献8より引用) このように、**液体の「分布範囲」と「厚み」**を観察することで、体腔全体の腹水量をある程度把握できます。 ② 貯留液の性状を観察する 胸水や腹水は、通常は**漿液性(透明な液体) で、エコー上は 無エコー域(黒く抜けた領域)**として描出さ
10月28日読了時間: 3分


看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する50~胸水・腹水をエコーで観察する ― 横隔膜を中心にしたアプローチ法
1. 横隔膜を境に「胸水」と「腹水」を見分ける 胸水や腹水を観察する際、まず注目すべきは 横隔膜 です。横隔膜は、胸腔と腹腔を分ける“仕切り”のような構造であり、液体がどちら側にあるかで病態の判断が変わります。 エコーでは、肋間から両側を走査します。 右側 :肝臓(右葉)を目標に走査 左側 :脾臓を目標に走査 横隔膜の 頭側(上側)に液体が見えれば胸水 、 尾側(下側)であれば腹水 と判断します。右肋間走査では、少し尾側にずらして**モリソン窩(肝と右腎の間)**の観察も行います。 さらに、下腹部の 正中縦断走査でダグラス窩 を観察。上腹部正中では 肝左葉周囲と心嚢液の有無 も確認します。最後に、 左右の傍結腸溝 もチェックしておくと、腹水の分布をより正確に把握できます。 2. 短時間で液体貯留を確認する「FAST」法 エコーによる胸水・腹水の検索では、**FAST(Focused Assessment with Sonography for Trauma)**という考え方が参考になります。 もともとは外傷初療で 体幹部出血を迅速に評価するための
10月27日読了時間: 3分


看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する49~エコーでアプローチする胸腔・腹腔の基礎知識
〜胸水・腹水の「たまりやすい場所」を理解する〜 胸腔と腹腔の構造 胸腔は、 肺の表面を覆う臓側胸膜 と、 胸郭内側を覆う壁側胸膜 の間にある空間です。ここに液体がたまると「胸水」と呼ばれます。少量の胸水は 肺の底(横隔膜に近い背側)にたまり、次第に肺全体を取り囲むように広がります。量が増えると、肺を圧迫して呼吸苦や無気肺 を引き起こすこともあります。 一方、腹腔は 臓器の表面を覆う臓側腹膜 と 腹壁内側を覆う壁側腹膜 の間の空間で、ひとつながりの体腔です。臓器が入り組んでいるため、液体は特定の「たまりやすい場所(リセス)」に集まりやすく、以下のような部位が代表的です。 右横隔膜下腔(肝臓の上) モリソン窩(肝と右腎の間) 左右の傍結腸溝 ダグラス窩(骨盤底の最も低い部分) 仰臥位(あお向け)での液体貯留部位 患者さんが仰臥位になると、液体は 重力により最も低い位置 に集まります。胸腔では 横隔膜上部の肺底部背側 、腹腔では ダグラス窩 → 横隔膜下 → モリソン窩 の順に貯留しやすいとされています。そのため、これらの部位を意識して走査することで、
10月26日読了時間: 3分


看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する48~胸水・腹水におけるエコー(超音波検査)の役割
胸水・腹水とは? 胸腔や腹腔の中には、臓器がスムーズに動くための ごく少量の水分 が存在しています。しかし、心不全や感染、腫瘍などの原因によって 過剰に水がたまる ことがあります。胸腔内にたまる場合を「 胸水 」、腹腔内にたまる場合を「 腹水 」と呼びます。 胸水では呼吸苦、腹水ではお腹の張り(膨満感)を訴えることが多く、在宅医療でもしばしば遭遇する病態です。 滲出性と漏出性 ― 原因による分類 胸水や腹水は、その成分によって大きく**滲出性(しんしゅつせい) と 漏出性(ろうしゅつせい)**に分けられます。 滲出性 :炎症やがんなどにより、血管からタンパク質を多く含んだ液体がしみ出すタイプ→ 例:肺炎やがん性胸膜炎、がん性腹膜炎など 漏出性 :血管内外の圧力バランスが崩れ、薄い液体が漏れ出すタイプ→ 例:うっ血性心不全、肝硬変など 腹水では、がんや肝硬変が主な原因で、胸水では心不全や感染が多くみられます。 検査方法 ― CTやX線だけではない 胸水や腹水の有無を調べる際、病院では一般的に 胸部X線やCT検査 が用いられます。胸水は 150mL以
10月25日読了時間: 3分


看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する47~エコーで見るDVT⑥ ― 血栓の評価と判断の実際
深部静脈血栓症(DVT)の診断では、 血栓の存在・範囲・可動性・性状 を正確に把握することが重要です。ここでは、エコーによる血栓評価の基本手順を順を追って紹介します。 🔍血栓評価の4ステップ 1️⃣ 血栓検索(存在診断) 2️⃣ 血栓範囲の把握 3️⃣ 血栓中枢端(血栓尖)の可動性評価 4️⃣ 血栓性状評価(急性/慢性の判定) ① 血栓検索(存在診断) 基本は B-mode(2Dモード)による短軸走査 です。静脈を短軸で連続観察しながら、 適時圧迫 を行い血栓の有無を判断します。 🔸圧迫法の原理 正常静脈 :圧迫により完全につぶれ、内腔が消失する。 血栓あり :静脈内腔がつぶれず残存。(動脈は圧迫してもつぶれないため、比較対象として有用) 💡 静脈がつぶれない=血栓を強く疑う。短軸で検出後、 長軸走査 で血栓の連続性と内部性状を確認します。 🔸補助技術 カラードプラ法 :血流信号の欠損により血栓の存在を確認。 骨盤内観察 :腸管ガスの影響があるため、 やや強めの圧迫 で背側の静脈を描出。 ⚠️ 急性期の浮遊型血栓 は可動性が高く、 強い
10月17日読了時間: 4分


看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する46~エコーで見るDVT⑤ ― 検査法と実践のポイント
深部静脈血栓症(DVT)は、 非侵襲的に診断できる代表的疾患のひとつ です。その評価において、エコー(超音波)は最も有用かつ即時性の高い検査手段です。今回は、DVTの**エコー検査法(全下肢静脈法)**について解説します。 🔍 DVTのエコー検査法 ― 2つのアプローチ DVT評価には、観察範囲の異なる2つの方法があります。 ① 全下肢静脈法(Whole-leg venous ultrasound) 骨盤部の総腸骨静脈から下腿ひらめ静脈まで を系統的に観察 急性期・慢性期ともに評価でき、再検不要 診療・在宅領域でも標準的な手技 ② 2点圧迫法(2-point CUS:compression ultrasonography) 鼠径部(総大腿静脈)と膝窩部(膝窩静脈) の2か所を限定的に圧迫評価 時間が限られる 救急現場向けの簡易法 初回陰性でも 1週間後の再検が必須 💡 本稿では、より詳細な評価が可能な 全下肢静脈法 を中心に解説します。 🩻 観察対象と静脈の基本構造 下肢の静脈は**筋膜より浅い「表在静脈」**と、**筋膜より深い「深部静
10月16日読了時間: 4分


看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する45~エコーで見るDVT(深部静脈血栓症)― リンパ浮腫との鑑別にも重要
リンパ浮腫と同様に「下肢の腫脹」を呈する疾患として、**深部静脈血栓症(DVT: deep vein thrombosis)**があります。DVTは、**肺塞栓症(PE: pulmonary embolism)**の原因となり得る、命に関わる重要な疾患です。今回は、DVTの基本・症状・エコーによる診断法を整理します。 🩸DVTとは? 〜VTEという概念〜 DVTとは、主に**下肢の深部静脈(腸骨静脈〜下腿静脈)**に血栓が形成された状態を指します。それ自体は必ずしも致死的ではありませんが、 血栓が肺へ飛んでPE(肺塞栓症)を起こす と、突然の呼吸困難やショックを来し、重篤な転帰をとることがあります。 この DVTとPEを合わせて「VTE(venous thromboembolism:静脈血栓塞栓症)」 と呼びます。VTEは俗に「 エコノミークラス症候群 」「 旅行者血栓症 」としても知られ、長時間同じ姿勢で過ごす飛行機搭乗中や、術後の臥床中に発生することがあります。 💡 日本でも近年、生活習慣や高齢化、長時間手術などの影響で VTEは増加傾
10月15日読了時間: 3分


看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する44~エコーで見るリンパ浮腫④ ― 評価と判断の手技
エコーはリンパ浮腫の 病期判定・浮腫範囲の把握・経時的変化の追跡 において、非常に有用なツールです。ここでは、臨床での観察手技と経時的評価のポイントをまとめます。 🔍 内部性状の違いによる評価 リンパ浮腫では、 患肢全体の皮下組織の状態 を把握することが第一歩です。観察範囲は次の通りです。 上肢リンパ浮腫 :手関節(尺骨側)から上腕まで 下肢リンパ浮腫 :足関節(外果)から大腿まで 🔸 撮影のコツ エコー装置の「 動画機能 」や「 パノラマ撮影 」を活用すると、患肢全体の連続像を得られます。 プローブと皮膚の両方にゲルを十分塗布し、 皮膚上を滑らせながら移動 するのがポイントです。 プローブは**身体の長軸方向(縦向き)**に当てます。 💡 コツ: 浮腫の程度は長軸方向に変化するため、縦方向の走査がより正確な観察につながります。 🧭 部位による内部性状の違い 下肢リンパ浮腫の例を見ると、患肢全体で皮下組織が厚く、部位によって 内部性状(エコー輝度・構造)が異なる ことが分かります。これは、同じ患肢でも 部位ごとに病期が異なる可能性 を示
10月14日読了時間: 3分


看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する43~エコーで見るリンパ浮腫③ ― 皮下組織の変化と「敷石様像
リンパ浮腫では、皮下組織の構造変化が進行とともに現れます。エコー(超音波)を用いると、この**皮下層の「見えないむくみ」 を視覚的にとらえることができます。特に特徴的なのが、浅筋膜の変化と 「敷石様像(paving stone appearance)」**です。...
10月13日読了時間: 3分


看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する40~末梢神経ブロック持続カテーテル管理の実際
末梢神経ブロックで持続的な鎮痛が必要な場合、カテーテルを神経周囲や筋膜面に留置します。エコーの活用により安全性は向上しましたが、管理にはいくつかの注意点があります。 カテーテル留置と確認 留置部位 :神経周囲や筋膜面 長期留置 :刺入部を糸で固定することもある 確認方法...
10月3日読了時間: 2分


看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する39~胸部・腹部に対する末梢神経ブロック ― エコーで広がる安全な鎮痛法
近年、エコーを用いた末梢神経ブロックが普及し、胸部・腹部の手術や慢性痛に対する安全で有効な鎮痛手段となっています。ここでは 胸部ブロック と 腹横筋膜面ブロック(TAPブロック) を取り上げます。 胸部ブロック(胸壁ブロック・傍脊椎ブロック) 特徴...
10月2日読了時間: 2分


看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する38~下肢に対する末梢神経ブロック ― 大腿神経ブロックと坐骨神経ブロック
下肢の末梢神経ブロックは、股関節・大腿・膝・下腿・足部の手術や疼痛コントロールに有効です。代表的なのは 大腿神経ブロック と 坐骨神経ブロック です。 ① 大腿神経ブロック 解剖とエコーでの描出 大腿神経は、鼠径部で 大腿動脈の外側 を走行 エコーでは...
10月1日読了時間: 2分
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