在宅医療における認知症について10~認知症の診断は「確定」できるのか?――病理学的分類と臨床診断の限界
- 賢一 内田
- 7月22日
- 読了時間: 3分

🧠 認知症は大きく2つの原因に分類される
認知症を引き起こす脳の病気は大きく分けて以下の2つに分類されます。
神経変性疾患:アルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症など
血管性疾患:脳梗塞などによる血管性認知症
日本における有病率は以下の通りと報告されています(表9参照):
認知症のタイプ | 割合(目安) |
アルツハイマー病 | 約67.4% |
血管性認知症 | 約18.9% |
レビー小体型認知症 | 約6.4% |
前頭側頭葉変性症 | 約1.1% |
🔍 「診断」は“確率”でしかない
本来、認知症の確定診断は脳病理診断(剖検)でしか行えません。生前に医師が行う「診断」は、あくまで臨床所見に基づく「予測」に過ぎません。
実際、臨床診断と病理診断がどの程度一致しているかを調べた研究では、次のような精度が報告されています(表10):
疾患名 | 感度 | 特異度 |
アルツハイマー病 | 81% | 70% |
血管性認知症 | 43% | 95% |
レビー小体型認知症 | 83% | 95% |
つまり約2割のアルツハイマー病は見落とされ、逆に3割は誤診されている可能性があるということです。
🧬 病理学的分類と「オーバーラップ」
神経変性疾患の多くは、異常タンパクの蓄積が発症に関係しています。
アミロイドβ → 老人斑(アルツハイマー病)
リン酸化タウ → 神経原線維変化(アルツハイマー病)
リン酸化αシヌクレイン → レビー小体(レビー小体型認知症、パーキンソン病)
興味深いことに、アルツハイマー病変とレビー小体変性が共存しているケースは35%にも上るとされています。診断は「どれが正しいか」ではなく、「どれがより支配的に病状を説明しているか」を評価する行為だと理解する必要があります。
アルツハイマー病診断の実際と難しさ
🔍 アルツハイマー病の症状とは?
記憶障害
見当識障害(日時・場所がわからなくなる)
言語障害、失行・失認
ICD-10では、65歳未満の発症を「早発性」、65歳以上を「晩発性」と分類しています。
🧫 病理診断でも「確率的」評価
実際の病理評価では、下記の3つの分類指標を点数化して「アルツハイマー病変の程度」を4段階(なし・低度・中等度・高度)で評価します(表11参照)。
分類名 | 意味 |
Thal分類 | 老人斑の広がり |
Braak分類 | 神経原線維変化の広がり |
CERAD分類 | 神経突起を伴う老人斑の密度 |
これらを総合して、「アルツハイマー病の神経病理変化が認知症の主原因であるか」を判断するのです。
📈 BPSDと症状の推移
アルツハイマー病では、時間経過とともに
中核症状(記憶障害、失語、失認など)が直線的に進行
BPSD(幻覚・妄想・徘徊・興奮などの行動心理症状)は一時的に出現
身体症状(嚥下障害、拘縮、寝たきり)は後期に出現
という経過をとります。診断だけでなく予後を見据えた生活支援設計が必要です。
📝 まとめ:診断にこだわりすぎない視点を
生前の診断は「予測」であり、「確定診断」は病理でしかできない
診断はあくまで“確率”と“経過”の積み重ねから導くもの
異なる認知症疾患の混在も珍しくない
「長谷川式が20点以下だから」「MRIで萎縮があるから」といった単一所見で即断する診療は避けるべきです。
📺 詳しくはYouTubeで解説中!▶ 内田賢一 - YouTubeチャンネル
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