top of page
逗子、葉山、鎌倉、横須賀、横浜市金沢区の在宅医療

神奈川県逗子市桜山2-2-54
TEL 046-874-9475
FAX 050-3145-2736
平日9時~17時
検索


在宅医療における認知症について52~【認知症ケアの基本】―家庭で“失敗体験”をさせない、そして“役割”を持ってもらう―
認知症の人が家庭で安心して暮らし続けるためには、 本人の尊厳を守る環境づくり が何より大切です。そのために、家庭内で守るべき2つの原則があります。 ① 本人に「失敗体験」をさせない できないことを無理にさせたり、難しい課題を与え続けたりすると、本人の 自信と意欲を失わせる 結果になります。 料理の段取りがうまくできないのに手順を一人で任せる 複雑な計算ドリルを延々とやらせる 同じ質問に叱責で返す これらはすべて、本人の「できなかった」という体験を積み重ねることになり、不安・焦燥・抑うつを悪化させる BPSDの引き金 になりかねません。 家族にはこう伝えましょう。 「失敗すればするほど、不安が強くなります。」「難しい課題を無理にさせても、認知機能の改善にはつながりません。」 本人が“できる範囲で達成感を得られる活動”を選び、 小さな成功体験を積み重ねる ことが大切です。 ② 本人にできる家事をしてもらう 何もしない時間が長くなると、心身機能が低下していく「廃用症候群」を招きます。頼まれごとがなく、ただ一日中ぼんやり過ごすだけでも、BPSD(不安・焦
1 日前読了時間: 3分


在宅医療における認知症について51~【認知症ケアの基本】
―外出機会が乏しい人にはデイサービスを― 認知症の人にとって、外出や社会的交流の機会は「脳の活性化」と「生活リズムの維持」に直結します。仕事や地域活動がなく、家に閉じこもりがちな場合は、 デイサービスの利用 が最も効果的な非薬物療法です。 ■ デイサービスは“非薬物療法”の中心 英国の NICE(国立医療技術評価機構)認知症ガイドライン では、軽度〜中等度の認知症に対して、 「構造化された集団認知刺激療法(Cognitive Stimulation Therapy:CST)への参加機会を与えるべき」と明記されています。 日本の介護保険制度でいう デイサービス は、まさにこのCSTに相当する取り組みです。 ■ 科学的根拠が示す“デイサービスの効果” 日本で行われた認知症治療薬の臨床試験解析(GAL-JPNシリーズ・メマンチン国内第Ⅲ相試験)では、薬を使っていない プラセボ群の中でも、介護サービスを利用していた人のほうが 、 全般的臨床評価(CIBIC-plus) 認知機能スコア(SIB)でより良い結果を示しました。 つまり、 介護サービス(デイサー
2 日前読了時間: 3分


在宅医療における認知症について50~【認知症ケアの基本的対応】―最初に確認すべき5つの優先順位―
認知症が疑われたとき、すぐに薬や介護サービスを考える前に、まず行うべきことがあります。それは「 診断の確定と除外 」です。 まずは、内科的・脳外科的疾患による可逆的な認知機能低下(例:甲状腺機能低下、慢性硬膜下血腫、感染症など)を除外し、次に「薬剤による認知機能低下」がないか確認し、必要なら 減薬 を行います。 これらを終えたうえで「認知症性疾患である」と判断された場合、次の5つの対応方針を念頭におきましょう。 🧩 認知症対応の5つの優先順位 危険動作はやめてもらう 仕事や社会的活動はできるだけ続けてもらう 外出機会が少ない人にはデイサービスを利用してもらう 家庭では“失敗体験”をさせない 家庭内でできる家事は本人にやってもらう この順番を意識するだけで、日常対応の迷いがぐっと減ります。以下、それぞれのポイントを具体的に見ていきます。 ① 危険動作はやめてもらう ― 安全がすべての出発点 認知症ケアの第一歩は「 安全の確保 」です。本人や家族の希望よりもまず優先すべきは、“事故を防ぐこと”。このステップを乗り越えれば、早すぎる入所を防ぐことにも
3 日前読了時間: 4分


在宅医療における認知症について49~【抗精神病薬②】―使用の適応と、減薬・中止の考え方―
認知症のBPSD(行動・心理症状)に対して、 抗精神病薬 を使うかどうかは非常に難しい判断です。効果は確かにありますが、その一方で 死亡率上昇という重大なリスク が伴います。では、どんなときに使うべきなのでしょうか。 ■ 抗精神病薬が「やむを得ない」ケース 多くの国内外のガイドラインでは、 「 非薬物療法で対応しても自傷他害のおそれがある場合 に限って使用する」と明記されています。 つまり、 本当に命や安全を守るためにしか使わない薬 です。 たとえば── 幻視によって「畳に虫がいる」と思い込み、ろうそくで畳を焼こうとする人 「妻が浮気をしている」という妄想から、ゴルフクラブで攻撃しようとする人 このように、 介護者の安全が脅かされる状況 では、副作用リスクを理解した上で「薬を使わないことの危険性」と比較検討する必要があります。 抗精神病薬を使えば危険性は確かに高まりますが、使わなければ 火事や暴力などの重大事故 に発展しかねません。つまり、命を守るための“非常手段”として使用が検討されるのです。 ■ 家族と共有すべき「具体的な数字」...
4 日前読了時間: 4分


在宅医療における認知症について48~【抗精神病薬】―BPSDに「効く」が、「危険」も伴う薬―
認知症のBPSD(行動・心理症状)──とくに興奮・暴言・幻覚・妄想などが強い場合、医師が処方を検討する薬のひとつに 抗精神病薬 があります。 抑肝散やトラゾドンに比べると、抗精神病薬は 確実な効果 が期待できる一方で、 重大な副作用リスク を伴う薬であることを忘れてはなりません。 ■ 抗精神病薬の効果と危険性 BPSDに対する 非定型抗精神病薬(リスペリドン、オランザピン、クエチアピンなど)の効果を検証した無作為化二重盲検試験のレビューでは、確かに興奮・攻撃性・幻覚などの症状が有意に改善 しました。 しかし同時に、以下の リスク上昇 が明らかになっています。 強い眠気・ふらつき 錐体外路症状(パーキンソン様症状) 脳血管障害(脳梗塞・脳出血など) 尿路感染症・浮腫・歩行障害 死亡率の上昇 つまり、「効くが危険」という薬なのです。 ■ FDAの警告:死亡リスクは1.6〜1.7倍 2005年、 アメリカ食品医薬品局(FDA)は、非定型抗精神病薬を認知症患者に使用すると死亡率がプラセボの1.6〜1.7倍 になると警告しました。2008年には定型抗精神病
5 日前読了時間: 3分


在宅医療における認知症について47~【トラゾドン】―認知症の不眠とBPSDにどう向き合うか―
認知症のBPSD(行動・心理症状)の中でも、 睡眠障害 は家族や介護者を最も疲弊させる症状の一つです。「夜間の徘徊や覚醒で同居家族が眠れない」──その対応に悩む現場は少なくありません。 ■ ベンゾジアゼピン系睡眠薬は使ってはいけない これまで睡眠障害に使われてきた ベンゾジアゼピン受容体作動薬 (例:マイスリー、ハルシオンなど)は、認知症患者に対しては 科学的根拠がなく、むしろ害がある ことが分かっています。 その理由は以下の通りです。 認知機能をさらに低下させる せん妄・転倒・骨折のリスクを高める 依存性を生じる したがって、 認知症の人の睡眠障害に使ってはいけない薬 と考えるべきです。 ■ 科学的根拠があるのはトラゾドンだけ 認知症における睡眠障害治療薬の有効性を検証したレビューでは、臨床試験が行われたのは メラトニン・ラメルテオン・トラゾドンの3剤のみ 。 そのうち、 トラゾドンだけがプラセボより有効 であり、かつ 安全性も高い ことが報告されています(被験者30名の小規模試験ですが、重要な結果です)。 ■ トラゾドンの使い方と注意点 トラ
6 日前読了時間: 3分


在宅医療における認知症について46~【抑肝散・トラゾドン・抗精神病薬】
―BPSD(認知症の行動・心理症状)への薬物治療をどう考えるか― 非薬物的アプローチ(家族・介護環境の調整)を行ってもBPSDが落ち着かない場合、初めて薬物療法の検討が必要になります。ここでは、漢方薬の 抑肝散 を中心に、科学的根拠と注意点を整理します。 ■ 抑肝散の特徴と効果 抑肝散(よくかんさん)は、 易怒性・興奮・暴言・暴力・幻覚・妄想など のBPSD症状に一定の効果を示すことがあるとされています。無作為化比較試験のレビューでは、プラセボ群と比較してBPSD全般、とくに 妄想・幻覚・焦燥/攻撃性 の改善が報告されました。副作用による中止率もプラセボと差がなく、安全性が高い点が特徴です。 ただし、 認知機能(MMSEスコア)を改善する効果は確認されていません。 さらに、唯一の二重盲検試験では、アルツハイマー病のBPSDに対して 有意差が認められなかった という結果が出ています。したがって、「効く場合もあるが、確実ではない」薬といえます。 ■ 使用上の注意と投与法 抑肝散には 甘草 が含まれるため、 低カリウム血症・浮腫・高血圧・不整脈...
10月18日読了時間: 3分


在宅医療における認知症について45~認知症の精神症状とその対応
〜性格のせいにせず、関係の中で変わるBPSD〜 🧩 病前性格との関係 「もともと気が強かったから」「昔から頑固だったから」といった 病前性格 とBPSD(行動・心理症状)を結びつけて考えることがありますが、実は 明確な因果関係は証明されていません 。...
10月10日読了時間: 4分


在宅医療における認知症について44~家族・介護環境の調整 〜BPSDがこじれる典型的パターン〜
うつ症状やBPSD(認知症の行動・心理症状)に対して、 断酒・減薬・身体疾患の治療・非薬物療法 など、医学的にできることをすべて行っても、それでもなお 精神症状が残る ことがあります。 その場合に必要になるのが、 家族・介護環境の調整 です。場合によっては、医学的介入と...
10月9日読了時間: 3分


在宅医療における認知症について41~うつと認知症 〜似て非なる2つの疾患〜
65歳以上の方が**「気分が落ち込む」「何もやる気がしない」 と訴えた場合、単なるうつ病とは限りません。実は、その背後に 認知症性疾患**が潜んでいることがあります。高齢者の「うつ」と「認知症」は症状が重なりやすく、**鑑別(見分けること)**が非常に重要です。 💡...
10月6日読了時間: 3分


在宅医療における認知症について40~抑うつ症状・アパシーにコリンエステラーゼ阻害薬は効くのか?
認知症治療薬として広く用いられている コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン) 。記憶障害への効果は知られていますが、「抑うつ」や「アパシー(意欲低下)」などの精神症状にも効くのでしょうか? 🔍 ガイドラインにおける記載...
10月5日読了時間: 2分


在宅医療における認知症について39~抗認知症薬はBPSDに効くのか? ― 科学的根拠を検証する
認知症の行動・心理症状(BPSD)は、物忘れなどの中核症状がきっかけで生じることが多いため、「認知機能を改善する抗認知症薬を使えば、間接的にBPSDも改善できるのでは?」という考え方があります。 日本の「BPSDガイドライン(第2版)」でも、抗認知症薬をBPSDへの第一選択...
9月27日読了時間: 3分


在宅医療における認知症について38~認知症の非薬物療法 ― 科学的にわかっていること、いないこと
認知症の行動・心理症状(BPSD)に対しては、薬に頼らず行える 非薬物療法 も数多く研究されています。ここでは、臨床研究の結果から「効果があるとされるもの」と「効果が乏しいもの」を整理してご紹介します。 効果があるとされる非薬物療法 1. 集団活動・音楽療法・五感刺激...
9月26日読了時間: 2分


在宅医療における認知症について37~身体疾患に潜むBPSD悪化要因 ― 感染症・脱水・痛み・感覚障害に注意
認知症の人にみられる行動・心理症状(BPSD)が悪化したとき、背後に 身体的な原因 が隠れていることがあります。 実際、在宅でBPSDを抱える認知症の方を対象にした調査では、血液検査や尿検査によって 尿路感染症・高血糖・貧血など未診断の病態が34.1%に見つかった...
9月25日読了時間: 2分


認知症の行動・心理症状に対する薬物療法
施設入居時などに、環境が変わったことが契機となり、認知症の行動・心理症状(BPSD)がひどくなり、昼夜問わず暴れて手がつけられなくなる方がいます。当院では、施設の窓から飛び出してしまった方、介護者の首を絞めた方、ドアを蹴ったり椅子を投げたりした方を経験しています。...
2023年7月14日読了時間: 3分


認知症の行動・心理症状に対する薬物療法
施設入居時などに、環境が変わったことが契機となり、認知症の行動・心理症状(BPSD)がひどくなり、昼夜問わず暴れて手がつけられなくなる方がいます。当院では、施設の窓から飛び出してしまった方、介護者の首を絞めた方、ドアを蹴ったり椅子を投げたりした方を経験しています。...
2023年5月31日読了時間: 3分


認知症の行動・心理症状に対する薬物療法
施設入居時などに、環境が変わったことが契機となり、認知症の行動・心理症状(BPSD)がひどくなり、昼夜問わず暴れて手がつけられなくなる方がいます。当院では、施設の窓から飛び出してしまった方、介護者の首を絞めた方、ドアを蹴ったり椅子を投げたりした方を経験しています。...
2023年1月30日読了時間: 3分
bottom of page