在宅医療における認知症について59~認知症の基本的対応③
- 賢一 内田
- 13 分前
- 読了時間: 4分

〜外出の機会が乏しいときはデイサービスを活用する〜
認知症の進行を遅らせるために最も効果的なのは、**「家に閉じこもらないこと」**です。特に仕事や社会活動が少なくなっている方は、**デイサービス(通所介護)**の利用を積極的に検討しましょう。
1. デイサービスは「治療の一環」
英国の医療ガイドライン(NICE:National Institute for Health and Care Excellence)では、軽度〜中等度の認知症の方に対して、「構造化された集団認知刺激療法(Cognitive Stimulation Therapy)」への参加を推奨しています。
これは、日本でいう「デイサービス」で実践されている内容に近く、“社会的交流を通じて脳を刺激する”非薬物療法として科学的に裏づけられています。
2. デイサービスの効果
🔹 抗認知症薬との比較
国内の臨床試験(ガランタミン・メマンチンなど)の解析では、介護サービスを利用している集団のほうが、利用していない集団よりも症状改善の割合が高いという結果が得られています。
たとえば、ガランタミンの国内第Ⅲ相試験(GAL-JPN-3/5)では、22週後に「改善」または「症状安定」と判定された割合は以下のとおりです。
このように、薬を使わなくても社会的交流のある環境に身を置くことが、認知機能の安定につながることがわかっています。
🔹 デイサービスの“わかりやすい効果”
抗認知症薬の効果は数値でしか確認できないことが多い一方で、デイサービスは本人と家族が**「変化を実感できる」**のが特徴です。
家に閉じこもらなくなった
笑顔や会話が増えた
睡眠リズムが整った
家族の介護負担が軽くなった
また、施設との相性が悪ければ別のデイサービスに切り替えることも可能で、調整はケアマネジャーが中心に行ってくれるため、医師が一手に抱え込む必要もありません。
3. デイサービスを勧めるときの注意点
🎯 目的は「廃用症候群の予防」
デイサービスの目的は、介護者の休息ではなく、患者本人のリハビリと予防です。この点を明確に伝えないと、本人が
「自分が家にいないほうがいいのだろう」と被害的に受け止めてしまうことがあります。
医師やケアマネジャーは、
「これは治療の一部です」と明確に説明することが大切です。
💬 利用を嫌がる場合の対応
本人や家族がデイサービスを嫌がる場合は、エビデンス(データ)を示して説得します。それでも拒否が強い場合は、一旦引き下がり、次のような代替案を提案しましょう。
生きがいづくり活動
老人クラブ・敬老会
趣味サークル(囲碁・将棋・書道・カラオケ・手芸など)
運動や体操、グラウンドゴルフ
地域サロン、茶話会、シルバー人材センター
いずれも**「人と関わる」**という点で、同様の刺激効果があります。
4. 外出や活動を指導するときのコツ
指導は漠然とせず、「回数」と「時間」を具体的に示すことが重要です。
また、達成できたときには必ず**「よく頑張っていますね」**と声をかけてください。これは、本人のモチベーション維持に直結します。
外出や活動の「量」のさじ加減は、日頃から患者さんをよく見ている主治医やケアマネの経験・直感を信頼して構いません。
まとめ
外出機会が少ない人にはデイサービスの利用が第一選択
デイサービスは「非薬物療法」として科学的に推奨されている
本人の治療・リハビリ目的であることを明確に伝える
抽象的な指導ではなく、回数と時間を具体的に
どんな形でも「人と関わる機会」を絶やさないことが最大の予防策
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