在宅医療における認知症について51~【認知症ケアの基本】
- 賢一 内田
- 10月23日
- 読了時間: 3分

―外出機会が乏しい人にはデイサービスを―
認知症の人にとって、外出や社会的交流の機会は「脳の活性化」と「生活リズムの維持」に直結します。仕事や地域活動がなく、家に閉じこもりがちな場合は、デイサービスの利用が最も効果的な非薬物療法です。
■ デイサービスは“非薬物療法”の中心
英国のNICE(国立医療技術評価機構)認知症ガイドラインでは、軽度〜中等度の認知症に対して、
「構造化された集団認知刺激療法(Cognitive Stimulation Therapy:CST)への参加機会を与えるべき」と明記されています。
日本の介護保険制度でいうデイサービスは、まさにこのCSTに相当する取り組みです。
■ 科学的根拠が示す“デイサービスの効果”
日本で行われた認知症治療薬の臨床試験解析(GAL-JPNシリーズ・メマンチン国内第Ⅲ相試験)では、薬を使っていないプラセボ群の中でも、介護サービスを利用していた人のほうが、
全般的臨床評価(CIBIC-plus)
認知機能スコア(SIB)でより良い結果を示しました。
つまり、介護サービス(デイサービス)そのものが治療的効果をもたらしているということです。
■ 抗認知症薬よりも「わかりやすい効果」
抗認知症薬の効果は緩やかで、本人や家族には実感しづらいことが多いですが、デイサービスは生活に直接作用する介入です。
活気が出た
会話が増えた
表情が明るくなった
といった変化が、家族にもはっきり見えるのが特徴です。
さらに、薬剤のような厳密な診断や副作用管理が不要であり、「施設が合わなければ変更できる」という柔軟さも、現場の大きな利点です。医師にとっても、現実的で安全な第一選択といえるでしょう。
■ 利用を勧めるときのポイント
デイサービスの目的は「介護者の休息」ではなく、
「認知症に伴う廃用症候群の予防と改善」
であることを、本人と家族に明確に説明することが重要です。「自分が家にいない方がみんな楽なんだ」と誤解されると、拒否的な態度につながることがあります。
そのためには──
医師が治療の一環として位置づける
データや体験を交えて説明する
本人の得意な活動(歌、手芸、運動など)に合わせて施設を選ぶ
といった工夫が有効です。
■ 嫌がる場合の代替案
どうしてもデイサービスを拒む場合は、次のような社会的活動の参加を促します。
趣味・サークル活動(囲碁、書道、カラオケなど)
地域の高齢者クラブ・生涯学習講座
敬老会、ふれあいサロン、体操教室、グランドゴルフ
散歩や買い物などの日常外出
重要なのは、「外に出ること」や「人と関わること」。刺激がある生活=認知機能の維持につながります。
■ 医師による“具体的な課題設定”
「外に出てください」「運動してください」では抽象的すぎて実行されません。医師が具体的な課題として指示することが重要です。
「週2回デイサービスに通いましょう」
「毎日15分、散歩を続けましょう」
実行できたらしっかり褒めて励ますことが継続の鍵です。慣れてきたら「もう少し増やしてみましょう」と段階的に促していきます。
🌿 まとめ
外出機会の乏しい人にはデイサービスを積極的に活用
認知症治療薬よりも実感しやすく、安全な非薬物療法
目的は「介護者の休息」ではなく「廃用症候群の予防」
嫌がる場合は代替の社会的活動を提案
医師は「週○回」「○分」など具体的に課題を設定する
外出の機会を持つことは、認知症ケアの中核です。薬よりも、まず「人と関わる時間」を処方しましょう。
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