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在宅医療における認知症について52~【認知症ケアの基本】―家庭で“失敗体験”をさせない、そして“役割”を持ってもらう―

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 18 分前
  • 読了時間: 3分

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認知症の人が家庭で安心して暮らし続けるためには、本人の尊厳を守る環境づくりが何より大切です。そのために、家庭内で守るべき2つの原則があります。

① 本人に「失敗体験」をさせない

できないことを無理にさせたり、難しい課題を与え続けたりすると、本人の自信と意欲を失わせる結果になります。

  • 料理の段取りがうまくできないのに手順を一人で任せる

  • 複雑な計算ドリルを延々とやらせる

  • 同じ質問に叱責で返す

これらはすべて、本人の「できなかった」という体験を積み重ねることになり、不安・焦燥・抑うつを悪化させるBPSDの引き金になりかねません。

家族にはこう伝えましょう。

「失敗すればするほど、不安が強くなります。」「難しい課題を無理にさせても、認知機能の改善にはつながりません。」

本人が“できる範囲で達成感を得られる活動”を選び、小さな成功体験を積み重ねることが大切です。

② 本人にできる家事をしてもらう

何もしない時間が長くなると、心身機能が低下していく「廃用症候群」を招きます。頼まれごとがなく、ただ一日中ぼんやり過ごすだけでも、BPSD(不安・焦燥・昼夜逆転など)のリスクが高まります。

そのため、本人にできる範囲で家事や役割を担ってもらうことが重要です。

たとえば:

  • 包丁で野菜を切る、皮をむく

  • 鍋で煮る・焼く・炒める(見守り下で)

  • 掃除機をかける、洗濯物をたたむ

  • 皿洗い、ゴミ出し、庭の草むしり など

たとえ時間がかかっても、「本人にやってもらう」こと自体が治療です。

「ご家族が全部やったほうが早いですが、本人のためにあえて時間をかけることが大切なんです。」

そう伝えると、家族の理解も得やすくなります。生活そのものがリハビリであり、治療なのです。

🌿 POINTまとめ

観点

内容

危険動作の中止

運転・火の不始末は早期に制限

外出・活動

デイサービス・趣味活動で社会的刺激を維持

認知刺激

NICEガイドラインも推奨する「集団認知刺激療法」的活動を

学習課題

計算ドリルなどの“強制学習”は禁止

家庭対応

失敗体験を避け、家事・役割で達成感を

継続の支援

仕事・社会参加は危険がなければ継続を

💬 医師から家族へのメッセージ

認知症の方にとって「できない」と言われることほど辛いことはありません。家族が“支える”ことに加え、“任せる勇気”を持つことが、家庭での安定した生活につながります。本人に「まだ自分の居場所がある」と感じてもらえるような日常づくりを心がけましょう。

📺 関連動画:内田賢一 YouTubeチャンネル在宅医療・認知症ケア・家族支援の実例をやさしく解説しています。👉 YouTubeチャンネルはこちら

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