在宅医療を科学する24~「そこに誰かいる?」幻視と実在感(FP)の違いと脳のメカニズム
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パーキンソン病やレビー小体型認知症の患者様が、実際にはいないはずの「人」や「気配」を感じることがあります。これらは脳の働きの変化によって起こる症状であり、大きく分けて「幻視」と「実在感(FP)」の2つのパターンがあります。
今回は、それぞれの特徴と脳内で何が起きているのかについて解説します。
1. 「幻視」と「実在感(FP)」はどう違う?
患者様が「誰かいる」と訴えられた際、その体験の質によって以下のような違いがあります 。
比較項目 | 幻視 (Visual Hallucination) | 実在感 (Feeling of Presence: FP) |
訴えの内容 | 「孫の姿が見える」など具体的・鮮明
| 「誰かがいる気がする」という感覚
|
本人の洞察 | 実際には存在しないと理解している
| 実在を信じる傾向がある
|
主な行動 | 仏壇に手を合わせるなど冷静な対応
| 孫の布団を準備するなど、存在に固執した行動
|
感情の状態 | 恐怖を感じることは少ない
| 不安や緊張が強い
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環境の影響 | 施設へ入所した後も持続することがある
| 施設への入所後に消失することが多い
|
2. 幻視が起こる脳の仕組み
なぜ、実際には存在しないものが「見えて」しまうのでしょうか。それには脳の複数の領域が関わっています 。
視覚連合野の過剰活動: 目から入った情報を処理する「視覚連合野(V2~V5)」が、外部からの刺激がないにもかかわらず過剰に働いてしまいます 。
イメージ生成系の過活動: 視覚入力が低下する一方で、脳内でイメージを作り出すシステムが過剰に働いてしまう状態です 。
ネットワークの連結異常: 視覚を司る領域と、記憶や感情を司る領域(前頭葉、海馬、側頭葉)との連結に異常が生じます 。
「注意」と「実在感」の解離: 「何かに注意を向けるネットワーク」と「存在を感じるネットワーク」がバラバラに働いてしまう(解離)ことが原因の一つです 。
これらを例えるなら、「脳内の配線が混線したり漏電したりして、突然変な動きをしてしまうロボット」のような状態といえます 。
3. 主な原因疾患
幻視は、主に以下のような疾患や状況で認められます 。
レビー小体型認知症 (DLB): 典型的で、鮮明・詳細な人物幻視が多くみられます 。
パーキンソン病・パーキンソン症候群
加齢性視覚障害 (Charles Bonnet 症候群)
薬剤性: 抗コリン薬、L-DOPA、ステロイドなどの影響
まとめ
「幻視」や「実在感(FP)」は、ご本人の性格や気のせいではなく、脳の神経ネットワークの混線によって生じる医学的な症状です。
特に「実在感(FP)」の場合は、本人がその存在を信じて不安が強くなる傾向があります 。ご家族や周囲の方は、ご本人が見えている世界を頭ごなしに否定せず、まずは「そのように感じている」という事実を受け止め、安心感を与える対応が大切です。
気になる症状がある場合は、一人で抱え込まずに専門の医療機関へご相談ください。




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