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看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する59~肺エコー×気道エコーによる食道挿管の確認― 現場で役立つ安全な換気評価の手法 ―

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 6 日前
  • 読了時間: 3分


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🔹 食道挿管の確認には「気道エコーの併用」が有効

気管挿管時に最も避けたいのが**誤って食道にチューブが入る“食道挿管”**です。この確認には、肺エコーだけでなく気道エコーを併用することで、より確実な評価が可能になります。

気道エコーでは、**上気道(咽頭〜鎖骨上レベルの気管)**を観察します。リニア型(高解像度)プローブを使用し、設定は次の通りです:

  • Depth(深度):4cm以内

  • Gain(輝度):基本的に調整不要

古い装置でも十分に施行可能であり、特別なモード設定は必要ありません。

🔹 挿管中と挿管後の確認方法

▶ 挿管手技中の確認

気道エコーを喉頭部に当てながら挿管を行うと、気管内へチューブが挿入される動きがリアルタイムに観察できます。チューブの進入に伴い、画像上で**気管内部が動く“ガチャガチャした所見”**として確認されます。

▶ 挿管手技後の確認

一方、挿管後はチューブ自体を直接確認することは困難です。超音波ビームが気管粘膜で反射するため、チューブの位置は見えにくくなります。

そのため、**挿管後の評価では「食道にチューブが誤挿入されていないか」**を重点的に確認します。

🔹 食道エコーでの観察ポイント

リニアプローブを頸部正中に当て、気管と食道を同時に描出します。正常な場合:

  • 中央に大きめの黒い円(気管)

  • その右下に小さな黒い二重丸(食道)

が確認されます(図12)。

もしチューブが食道に誤って入った場合、食道にも気道と同じ大きさの黒い円が出現します。この所見は Double Tract Sign(ダブルトラクトサイン) と呼ばれ、食道挿管を示唆する決定的なサインです。

🔹 肺エコーで確認できる換気・非換気の違い

所見

換気状態

所見の意味

Lung slidingあり

換気あり

正常換気肺

Lung slidingなし+Lung pulseあり

換気なし(心拍動伝達)

無換気肺・片肺挿管

Lung slidingなし+Lung pulseなし

換気・拍動とも消失

気胸・心停止など

肺エコーでは、換気されている肺と非換気の肺を即時に識別できる点が強みです。片肺挿管時には、非換気側ではLung slidingが消失し、換気側では維持される左右差が確認されます。

🔹 肺エコーの汎用性と臨床的価値

肺エコーは、胸水・無気肺・肺炎・気胸・肺水腫など多様な病態を評価できます。近年の研究では、肺エコーの診断精度はX線やCTに匹敵、もしくはそれ以上と報告されています。

さらに、

  • 被曝がない

  • 携帯性に優れる(ポータブル装置でも高精度)

  • 検査室への搬送不要

  • ベッドサイド・在宅・ICU・救急外来など、場所を選ばず即時施行可能

という利点があります。

つまり、肺エコーは**「安全・迅速・被曝ゼロの呼吸診断ツール」**として、今や“行わない理由がない”ほど日常診療に浸透しつつあります。

💬 まとめ

  • 食道挿管確認には気道エコーの併用が有効

  • Double Tract Signが見えたら食道挿管を疑う。

  • Lung sliding・Lung pulseで換気状態を判定。

  • ポータブルエコーで迅速・安全に呼吸管理が可能

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