看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する②~超音波検査における「周波数」の重要性
- 賢一 内田
- 7月12日
- 読了時間: 2分

~減衰・屈折・分解能の違いを理解しよう~
超音波検査(エコー)は、医療現場で非常によく使われている画像診断手法です。被ばくがなく、リアルタイムに身体の内部を観察できるという利点がありますが、実は「周波数の選び方」がとても重要なポイントになります。
この記事では、周波数の違いによって生じる「減衰」「屈折」「分解能」の違いを、図とともにわかりやすく解説します!
🔊 1. 減衰と周波数の関係:深部を診るなら低周波!
エコー画像は、超音波が体内を伝わりながら反射して戻ってくることで得られます。しかしこのとき、音波は組織を通過するうちにどんどんエネルギーを失い、深部まで届かなくなってしまいます。この現象を「減衰」と呼びます。
下図は、同じ肝臓を**高い周波数(5.5MHz)と低い周波数(3.3MHz)**で撮影した比較です。
高い周波数(5.5MHz):表層は鮮明だが、深部の横隔膜や肝静脈は不鮮明
低い周波数(3.3MHz):深部までしっかり描出できる
👉 深部を観察する際には、減衰の少ない低周波プローブが適しています。
🔄 2. 音波の「屈折」って何?
音波も光と同じように、異なる組織の境界(音速の違う媒体)で進行方向が変わります。これを「屈折」と言います。ポイントは、屈折は音速の違いで決まるということ。
たとえば、
速い組織(C1 = 1500m/s)から
遅い組織(C2 = 870m/s)に入ると
入射角(θ1)が大きくても、屈折角(θ2)は小さくなります。これは「スネルの法則」で説明できます。
📌 屈折は反射と違い、密度ではなく音速のみに依存します。
🔍 3. 分解能と周波数の関係:細かく見るなら高周波!
「分解能」とは、近接した2点を別々に識別できる最小の距離のこと。周波数が高いほど分解能が高くなり、細かい構造までくっきり見えます。
下図を見てください👇
分解能が低い(低周波):浅筋膜がぼんやり
分解能が高い(高周波):浅筋膜がくっきり明瞭
👉 浅い部位や細かい構造を観察する場合には、高周波プローブが適しています。
📊 まとめ:観察部位によって周波数を使い分けよう!
観察部位の深さ | 適した周波数の目安 |
表層(皮下・表在血管など) | 8~4 MHz(高周波) |
中間層(筋肉など) | 6~8 MHz |
深部(肝臓・腎臓・心臓など) | 3~6 MHz(低周波) |
周波数によって、観察できる範囲や画質が大きく変わります。目的の部位に応じてプローブの選択を最適化することが、良質な超音波診断には欠かせません。
🔚 次回は「音響インピーダンス」や「反射の強さ」についても紹介予定です!エコーをより深く理解して、日々の診療やケアに役立てましょう!




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