top of page

在宅医療における認知症について6在宅医療における認知症について65Ala score(アラ・スコア)でみる

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 11月20日
  • 読了時間: 3分


ree

― アルツハイマー病とレビー小体型認知症の違い ―

アルツハイマー病(AD)とレビー小体型認知症(DLB)は、初期症状の出方が少し違います。

  • アルツハイマー病初期→ 記憶障害(もの忘れ)が目立つ

  • レビー小体型認知症初期→ 記憶障害はそれほど目立たず、  注意力の障害 と 視空間認知の障害 が目立ちやすい

この違いを利用して、MMSEの下位項目だけでADとDLBをある程度見分けよう としたのが Ala score(アラ・スコア) です。

● Ala score の計算式

Ala score は、MMSEの以下の3つの下位得点を組み合わせます。

  • 注意(④の100−7など)

  • 想起(⑤の再生:3語の呼び戻し)

  • 構成(⑪の二重五角形の模写)

論文中では、次のような合成得点として定義されています(概念的に):

Ala score = 「注意」 − (想起スコアを補正)+ 「構成」

この合成点数が 低いほどDLBの可能性が高い とされ、5点未満をDLBとみなすと、感度は約0.8 でADとの鑑別に役立つと報告されています。

もちろん、これだけで診断がつくわけではありませんが、

  • DLBでは注意・視空間(構成)が落ちやすい

  • ADでは想起(再生)の低下がより目立ちやすい

という「パターンの違い」をMMSEの中から読み取る 1 つの工夫と考えるとよいでしょう。

言語課題(⑥〜⑩)から見える「アルツハイマー病以外」の認知症

MMSEの ⑥〜⑩ は、いずれも 言語に関連する課題 です。

  • ⑥ 呼称(時計・鉛筆の名前)

  • ⑦ 復唱

  • ⑧ 三段階命令

  • ⑨ 読文

  • ⑩ 作文

アルツハイマー病の初期 では、これらの課題は比較的よく保たれていることが多く、MMSE全体がカットオフ(23/24)を下回っていても、⑥〜⑩にはほとんど失点しないケースが少なくありません。

一方で、

  • MMSE全体の点数はカットオフ以上

  • しかし ⑥〜⑩の言語課題での失点が目立つ

という場合には、意味記憶や言語機能を主座とする障害、つまり

  • 血管性認知症

  • 前頭側頭葉変性症(FTD)

など、アルツハイマー病以外の認知症性疾患 を考えた方がよい場合があります。

MMSEを「総点」だけで見るのではなく、どの下位項目で落としているか に着目すると、鑑別診断のヒントが得られます。

年齢・教育年数がMMSEに与える影響

MMSEはシンプルで使いやすい検査ですが、年齢と教育年数の影響を強く受ける ことが知られています。

  • 教育年数が 長いほど得点は高くなりやすい

  • 教育年数が 短いほど低くなりやすい

このため、

  • 教育年数が短い人→ 本当は年齢相応なのに、低得点で「擬陽性(=認知症っぽく見えてしまう)」

  • 教育年数が長い人→ 認知機能が落ちていても高得点になりやすく、「擬陰性(=見逃し)」 のリスク

という問題が生じます。

● 具体的なイメージ

  • 義務教育すら十分に受けられなかった 80代の方のMMSEが20点→ カットオフ(23/24)より低くても、年齢・教育歴を考えると“年相応”の可能性も

  • 大卒で知的活動が旺盛だった方が MMSE26点→ カットオフは上回っていても、  本来は28〜30点が期待される背景を考えると、  「年齢不相応な低下」と評価すべき場合があります。

● だからこそ必要なこと

MMSEの点数を評価するときは、必ず

  • 年齢

  • 教育年数(学歴)

を聴取し、その人の背景を踏まえて解釈することが大切です。「点数だけで診断しない」 ことが、誤診を防ぐ最大のポイントです。

ハッシュタグ

コメント


© 2021 湘南在宅研究所 All Rights Reserved.

情報通信機器を用いた診療の初診において向精神薬を処方しておりません

bottom of page