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在宅医療における認知症について③~軽度認知障害(MCI)とは? 〜その診断と対応について〜

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 7月14日
  • 読了時間: 3分

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軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)は、「認知症ではないが、認知機能の低下が見られ、将来的に認知症へ移行する可能性がある状態」とされ、正常と認知症の中間段階とされています。

自動車運転に関する診断書などで「認知症ではないが、認知機能の低下が見られる」と記載されている場合、この軽度認知障害に該当することが多いです。

軽度認知障害の検出にはMoCAが有効

一般的に使用される認知機能検査の代表は MMSE(Mini-Mental State Examination) ですが、MMSEでは軽度認知障害の早期発見には不十分であることが明らかになっています。

MoCA(Montreal Cognitive Assessment)は、軽度認知障害のスクリーニングを目的に作られた検査で、より高い精度で早期変化を捉えることが可能です。

下記のメタ解析(図表参照)では、60歳以上の健常者の中から軽度認知障害を見分ける精度は、以下の通りでした:

検査法

感度(Sensitivity)

特異度(Specificity)

AUC(曲線下面積)

MMSE

66.34%

72.94%

0.736

MoCA

80.48%

81.19%

0.846

※AUC(Area Under the Curve)が1.0に近いほど、検査として優れていることを示します。

また、MoCA-J(日本語版)では、30点満点中26点未満をカットオフとした場合、軽度アルツハイマー病患者を感度93%、特異度87%で見分けられるとされています。

MCIの診断は慎重に、必要に応じて専門医へ

厚生労働省の調査では、**WMS-R(ウェクスラー記憶検査改訂版)**の「論理的記憶」が軽度認知障害の検出に用いられています。ただし、MoCAやWMS-Rは一般の診療所ではあまり普及していないため、必要に応じて認知症専門医への紹介も検討すべきです。

MCI診断で薬は必要?

軽度認知障害の段階で抗認知症薬(ドネペジルなど)を使用しても、プラセボと比べて有意な効果は確認されておらず、一方で悪心・嘔吐・下痢などの副作用は多いことが、複数のメタ解析で報告されています。

つまり、「診断しても、すぐに投薬が必要とは限らない」のです。

MCIは必ずしも認知症に進むわけではない

・認知症専門医の研究:MCIから認知症に進行する率は 年間9.6%・地域ベースの研究:年間4.9%・一方、MCIと診断された人の 約20%は数年以内に正常に回復する とも報告されています。

MCIと診断されたとしても、すぐに深刻に受け止めすぎず、経過を見守ることや生活環境の見直し、安心感の提供が大切です。

まとめ

軽度認知障害は、診断によって早期の対応が可能になりますが、過度な不安を招かないよう「将来の可能性のひとつ」として伝えることが重要です。診断精度に優れたMoCAの活用や、必要に応じて専門医と連携する体制も整えておきましょう。📺 もっと知りたい方はこちら在宅医療・認知症ケア・呼吸器疾患の解説をYouTubeで配信中!▶ 内田賢一 - YouTubeチャンネル

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