攻めの栄養療法を科学する26~各種疾患・合併症における禁忌事項
- 賢一 内田
- 2025年12月26日
- 読了時間: 3分

慢性心不全|「増やす栄養」と「抑える栄養」のバランスが鍵
慢性心不全とは
心不全は、
「心臓に器質的・機能的異常が生じ、心ポンプ機能の代償機構が破綻した結果、呼吸困難・倦怠感・浮腫が出現し、運動耐容能が低下する臨床症候群」
と定義されます。
慢性心不全における栄養管理の柱は、
体液バランス(ナトリウム管理)
適正なエネルギー・たんぱく質量の確保
です。
慢性心不全における栄養量の基本
エネルギー・たんぱく質量
サルコペニアやフレイルを合併しやすい慢性心不全では、
エネルギー:30 kcal/kg/day 以上
たんぱく質:1.2~1.5 g/kg/day
が推奨されています。
腎機能障害を伴う場合の注意点
ただし、
eGFR < 45 mL/分/1.73m²(CKD G3b 以上)
を認める場合は、
たんぱく質:0.6~0.8 g/kg/day
へ制限する必要があります。
👉 腎機能を無視した高たんぱく設定は禁忌であり、「攻めの栄養療法」の落とし穴となります。
ナトリウム(塩分)管理の考え方
ナトリウムは細胞外液の浸透圧維持に関与するため、長期的な過剰摂取は血管内水分量を増加させ、うっ血を助長します。
塩分摂取基準
男性:7.5 g/日未満
女性:6.5 g/日未満
高血圧・CKD 合併例:男女とも 6.0 g/日未満
「減塩しすぎ」にも注意
一方で、
極端な減塩
味気ない食事
は 食欲低下 → 低栄養 を招くリスクがあります。
👉 心不全では「減塩」と「食べられること」の両立が非常に重要です。
心不全における「攻めの栄養療法」の注意点
るい痩・サルコペニアを伴う心不全患者では→ 十分なエネルギー確保が重要
しかし→ 腎機能障害を無視した高たんぱくは避ける
高エネルギー食により→ 副食由来の塩分増加にも注意
心不全では、👉 「攻めすぎ」も「守りすぎ」も失敗につながるという点が特徴です。
肥満症|「攻めの栄養療法」は原則適応外
肥満症の定義
肥満は、エネルギー摂取と消費のアンバランスにより脂肪が過剰に蓄積した状態です。
BMI ≥ 25 kg/m²:肥満
健康障害を伴う場合:肥満症
BMI ≥ 35 kg/m²:高度肥満症
肥満症は、
高血圧
2型糖尿病
脂質異常症
NAFLD
高尿酸血症
睡眠時無呼吸症候群
など、多くの疾患を合併します。
肥満症における栄養療法の基本方針
減量目標
肥満症:現体重の 3%以上
高度肥満症:5~10%以上
エネルギー設定
肥満症:25 kcal/kg(標準体重)/day
高度肥満症:20~25 kcal/kg(標準体重)/day 以下
👉 運動療法の併用が必須
たんぱく質量
1.0 g/kg(標準体重)/day
エネルギー比:20%以下
サルコペニア肥満とたんぱく質
高齢者のサルコペニア肥満では、
低カロリー × 低たんぱく食(0.8 g/kg)→ 筋肉量は減少
低カロリー × 高たんぱく食(1.2 g/kg)→ 筋肉量は増加
という報告があります。
👉 肥満症であっても、たんぱく質を削りすぎることは禁忌です。
肥満症における「攻めの栄養療法」の禁忌
26 kcal/kg(標準体重)/day 以上のエネルギー設定
たんぱく質
0.8 g/kg(標準体重)/day 未満
これらは、
脂肪増加
代謝異常の悪化
を招くため、避けるべきです。
まとめ|心不全と肥満症は「正反対の判断」が必要
慢性心不全→ エネルギーは守りつつ確保、塩分と腎機能に配慮
肥満症→ エネルギー制限が原則、たんぱく質は維持
同じ「栄養療法」でも、疾患により正解は正反対です。病態を見極めたうえで、「攻める」「攻めない」を判断することが重要です。
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