褥瘡(じょくそう)に対する進化した湿潤療法「開放性ウエットドレッシング療法」とは?
- 賢一 内田
- 4月17日
- 読了時間: 3分

病院勤務時代、術後の創部治癒が遅れそうな患者さんには「カラヤヘシブ」という高機能な創傷被覆材を使用していました。非常に優れた素材ですが、コストが高く、一般には入手困難なため、在宅や褥瘡治療では使いにくいのが現実です。
一方、褥瘡に対しては家庭で簡便に実践できる「ラップ療法(湿潤療法)」があります。食品用ラップを創部にあて、湿潤環境を保つことで創の自然治癒力を高めるというシンプルで効果的な方法ですが、デメリットとして「ムレ(過湿)」による皮膚トラブルを引き起こしやすいという問題がありました。
このラップ療法をさらに進化させたのが、開放性ウエットドレッシング療法です。
開放性ウエットドレッシング療法とは?
この療法は「適度に湿潤を保ちながら、同時に滲出液も適度に吸収する」という、非常にバランスの取れた褥瘡ケア方法です。
使用するのは、「褥瘡パッド」と呼ばれるもので、実は台所用の水切りネット(穴あきポリ袋)と平型おむつを組み合わせた、誰でも手に入る日用品です。
処置の手順
下準備 ベッドが濡れないよう、あらかじめおむつやペットシーツを敷きます(ペットシーツの方が安価です)。
褥瘡部の洗浄 ぬるま湯でおしり全体をやさしく洗います。霧吹きを使うと、ピンポイントで水をかけられ、創部への刺激も最小限に抑えられます。 ⚠ 創部は決してこすらず、「細胞を培養しているイメージ」で優しく取り扱ってください。
水分を拭き取る 創部の周囲の水分はティッシュなどでやさしく拭き取ります。創の中は湿潤を保つために、そのままにしておきます。
パッドの装着 褥瘡よりも大きめのパッドを当て、おむつで包んで固定します(テープ固定は避けます)。大きめのパッドは多少ずれても褥瘡をしっかり覆い、さらに圧力を分散させる効果があります。 動かす部位やおむつで固定できない部位は、やむをえずテープで軽く固定します。
応用編:部位別の工夫
下肢の褥瘡にはナイロンストッキングが便利! パッドの固定と、ずり応力(皮膚がずれる力)の軽減に役立ちます。
ずり応力の予防には… ワセリンや保護フィルムを皮膚に塗布することで、皮膚の摩擦を減らし褥瘡の予防にもつながります。
まとめ
開放性ウエットドレッシング療法は、湿潤環境を維持しながらも過湿による皮膚トラブルを回避できる、在宅褥瘡ケアにおいて非常に有用な方法です。コストも抑えられ、家庭でも取り組みやすい点が大きな魅力です。
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