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攻めの栄養療法を科学する③~【攻めの栄養療法をどう実践する?】

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 1 日前
  • 読了時間: 3分

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――リハ栄養ケアプロセスに沿った実践ステップ――

低栄養・サルコペニア・フレイルがある患者さんでは、**「食べられるようになったらリハをする」**では遅く、栄養 × リハビリを同時に進める“リハ栄養”が極めて重要です。

中でも今回のテーマである 攻めの栄養療法(アグレッシブ・ニュートリション) は、リハ栄養ケアプロセスの中でどう実践するかがカギになります。

◆ 攻めの栄養療法の成否は「アセスメント」と「ゴール設定」で決まる

攻めるべきかどうかは、対象者をどれだけ深く把握できたか(アセスメント)目指す姿をどれだけ明確に描けたか(ゴール設定)で決まります。

▶ リハ栄養アセスメント・診断推論

ここで行うのは、

  • なぜ体重が減ったのか

  • なぜサルコペニアになったのか

  • 栄養摂取不足の原因は?(量/内容/嚥下/環境)

  • 疾患ストレス・炎症は?

  • ICFの観点での生活機能は?

という原因の深掘りです。

▶ リハ栄養ゴール設定

次に、「この人はどの状態に戻りたいのか(あるべき姿)」を具体化します。

例:

  • 1か月で体重+1kg

  • 2週間で歩行距離を+20m

  • 食事摂取量を1日+300kcal

このゴールの明確化が、攻めるべき量を決める基準となります。

◆ 「攻めるべき対象者」と「攻めてはいけない対象者」

攻めの栄養療法は“万能”ではありません。

▶ 攻めるべきケース

  • 回復期

  • 低栄養

  • サルコペニア

  • リハ意欲・体力がある

  • エネルギー摂取量に改善余地がある

こういった症例では、体重・筋量を増やすことでICF(機能・活動・参加)が大きく改善し、QOL向上が見込めます。

▶ 攻めてはいけないケース

  • がん終末期

  • 心不全末期

  • 栄養負荷が苦痛になる状態

  • 浮腫・呼吸状態が不安定

攻める栄養は“負荷”になり逆効果です。

ここを見誤らないことが非常に重要です。

◆ 具体例:1kg体重を増やしたいとき

たとえばゴールが「1か月で1kg体重を増やす」の場合。

体重1kg増のために必要な蓄積エネルギーは約7,200 kcal。

1か月=30日で割ると▶ 240 kcal/日を “蓄積” として攻める必要があります。

つまり、毎日+240 kcalを上乗せする食事・栄養プランが必要ということです。

例)+240kcal はこんなイメージ

  • エンシュア半本

  • プロテイン+牛乳

  • バナナ+ヨーグルト+はちみつ

  • 間食でプリン or 栄養補助食品

ただし、これはあくまで“摂取するだけ”ではなく、リハ(運動)の量と強度に合わせて調整するのがリハ栄養の特徴です。

◆ 攻めるだけでは不十分。「モニタリング」が最重要

攻めて栄養を足したら、必ず効果を確認し、必要なら即修正する。

これがリハ栄養ケアプロセスの“モニタリング”です。

確認するポイントは

  • 体重

  • 筋力(握力・歩行速度など)

  • 浮腫

  • 食事摂取量

  • リハの実施状況

  • QOLの変化

もし改善がない、負担が大きい、といった場合は攻め方を緩めたり、方向性を再検討する必要があります。

「攻めっぱなしは禁忌」――これがリハ栄養の重要な哲学です。

◆ まとめ:攻めの栄養療法は“評価 → ゴール → 介入 → モニタリング”がすべて

攻めの栄養療法は、単にカロリーを多く摂るという話ではありません。

① アセスメント② 診断③ ゴール設定④ 介入(リハ × 栄養)⑤ モニタリング

この5ステップ(リハ栄養ケアプロセス)に沿って実践することで、低栄養・サルコペニア患者の回復を大きく後押しします。

適応を見極め、適切に攻め、必ず評価する。これが「攻めの栄養療法」の正しい姿です。

在宅医療でも非常に有用な考え方で、患者さんの生活機能を改善させる強力な武器になります。

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