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攻めの栄養療法を科学する55~攻めの栄養療法と経管栄養

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 3 日前
  • 読了時間: 5分

― 「まず腸を使う」ことが回復への近道になる ―

攻めの栄養療法における原則

「攻めの栄養療法」においては、実施可能であれば経腸栄養(EN)を最優先することが原則です。

  • 経口摂取が十分に可能な場合 → 食事から必要栄養量を確保する

  • 経口摂取が不十分な場合 → 調理の工夫、補助栄養食品、栄養補助飲料を追加

  • それでも不足する場合 → 静脈栄養や経管栄養で不足分を補う

重要なのは、「経口か/非経口か」という二択ではなく、👉 “必要な栄養量をどう確保するか”という全体設計です。

経管栄養を選択する際に欠かせない説明

経管栄養を選択する際には、患者さん・ご家族への十分で正確な説明が不可欠です。

現在の医療現場には、いわゆる「胃瘻バッシング」とも言える風潮が存在します。

その結果、

  • 胃瘻を用いた栄養管理が医学的に最適であるにもかかわらず

  • 胃瘻を選択できない、あるいは拒否されてしまう

といった事例も少なくありません。

この背景には、栄養管理そのものが正しく理解されていないという問題があります。経管栄養に対するネガティブなイメージを抱いたままでは、👉 攻めのリハ栄養療法は成立しません

繰り返しになりますが、

  • 栄養管理の適応があり

  • 長期の栄養管理が必要な場合

経管栄養は第一選択となる治療手段です。

患者さん本人・ご家族だけでなく、医療者、介護職、さらには社会全体に向けて、経管栄養の実績と意義を正しく伝えていくことが、「攻めの栄養療法」を実現するために重要だと考えています。

攻めの栄養療法における投与設計

経管栄養による「攻めの栄養療法」では、初期投与量の設定が極めて重要です。

基本的には、Harris–Benedict式 × 活動係数 × ストレス係数 + 蓄積量を目安に初期エネルギー量を決定します。

その後、

  • 体重変化

  • 筋量

  • リハビリ量・活動量

  • 全身状態

を見ながら、段階的に増減していきます。

⚠️ エネルギー量だけを見て「攻める」ことは危険です。

  • 栄養剤ボリュームの過剰

  • たんぱく質・水分の過剰

  • 電解質・微量栄養素の不均衡

といったリスクが高まります。

患者の病態・消化吸収能・腎機能・心機能を踏まえて“攻める”これが、攻めの栄養療法の本質です。

経管栄養ルートの選択と特徴

経管栄養のルートは、以下を総合的に評価して選択します。

  • 消化管の構造・機能

  • 経管栄養の予定期間

  • 誤嚥リスクの有無

一般的には、

  • 4週間未満:経鼻アクセス

  • 4週間以上:消化管瘻アクセス

が望ましいとされています。

経鼻胃管(NGチューブ)

非侵襲的に挿入可能で、ベッドサイドで施行できます。

ただし、

  • 気管内誤挿入

  • 経腸栄養剤の気管内注入

といった重大な合併症には十分な注意が必要です。留置確認は聴診のみでは不十分であり、X線撮影や胃液吸引での確認が推奨されます。

〈当院で使用する主な症例〉

  • 入院中に経口摂取量が持続的に低下し、必要栄養量の半分も摂取できない場合

  • 自宅で経口摂取していた患者が、急激な摂取低下で入院に至った場合

  • 静脈栄養で脱水を補正後、一時的な低栄養状態を改善したい場合

胃瘻(PEG)

胃瘻は長期経腸栄養の第一選択です。

  • 経鼻胃管に比べ不快感が少ない

  • 太径チューブが使用可能

  • チューブが短く、閉塞しにくい

といった利点があります。

また、半固形栄養剤が使用可能であり、👉 逆流を予防しながら高エネルギー投与が行いやすいという点は、「攻めの栄養療法」と非常に相性が良い特徴です。

〈当院で使用する主な症例〉

  • 重度嚥下障害で、長期療養先(自宅・施設)での栄養確保が必要な場合

  • 経口摂取を少量でも継続したいが、必要栄養量の確保が困難な場合 → 必要栄養量は胃瘻で確保し、口からは“楽しみ”として摂取

  • 進行性神経難病 → 確実な薬剤投与、パーキンソン病OFF時間帯の栄養補充など

空腸瘻・PEG-J・PEJ

  • 胃全摘術後

  • 食道亜全摘、膵頭十二指腸切除後

などで選択されます。胃運動低下や食道裂孔ヘルニアなどで、胃食道逆流による誤嚥リスクが高い症例では、空腸アクセスが有効です。

その他の選択肢

PTEG(経皮経食道胃管挿入術)

  • PEG困難例(胃切除後、腹水貯留など)に対して

  • 本邦で開発された有用な代替手段

IOE(間欠的口腔食道経管栄養)

  • 注入時のみチューブを挿入

  • 食道蠕動を誘発し、より生理的な投与が可能

〈当院で使用する症例〉

  • ワレンベルグ症候群などの食道入口部開大不全

  • バルーン拡張術後でNGチューブ留置が困難な場合

攻めの栄養療法を支えるために

攻めの栄養療法とは、「無理に入れること」ではありません。

  • 合併症を常にモニタリングし

  • 状況に応じて即座に調整し

  • それでも必要な栄養量を確保する

“考え続ける栄養管理”こそが、攻めの栄養療法です。

さくら在宅クリニック(湘南在宅クリニック)の取り組み

さくら在宅クリニック(湘南在宅クリニック)では、在宅医療の現場で、

  • 病態

  • 嚥下・栄養状態

  • リハビリ進行度

  • 患者さん・ご家族の価値観

を踏まえ、「守り」と「攻め」を適切に切り替える栄養戦略を実践しています。

経管栄養は、**生活と回復を支える“治療の一部”**です。

▶︎ 公式サイトhttps://www.shounan-zaitaku.com/

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