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在宅医療における認知症について⑧~高齢者に処方する薬、本当に大丈夫?――認知症とまぎらわしい薬剤性症状に注意

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 7月20日
  • 読了時間: 3分

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高齢者では加齢による代謝機能の低下や、複数の疾患による多剤併用が避けられません。その結果、薬物の血中濃度が上がりやすく、副作用や相互作用のリスクも増加します。

なぜ高齢者は薬剤の影響を受けやすいのか?

  • 肝機能・腎機能の低下により、薬が体内に残りやすくなる

  • 合併症が増えることで服薬数が増加しやすい

  • 薬剤同士の相互作用が生じやすい

  • 飲み間違いや処方ミスの可能性も高くなる

こうした背景から、日本老年医学会は「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」、アメリカ老年医学会は「ビアーズ基準」を定め、高齢者に注意すべき薬剤を示しています。

【要注意】認知症とまぎらわしい副作用を起こす薬剤

1.第一世代抗ヒスタミン薬(抗コリン作用)

強力な抗コリン作用を持ち、認知機能低下・せん妄・意識障害などを引き起こすリスクがあります。ビアーズ基準では、65歳以上では使用回避が推奨されています。

よく使われる薬では以下が該当します。

❌ 該当成分の例(表7より):

  • プロメタジン(PL顆粒®・ピーエイ錠®に含有)

  • クロルフェニラミン

  • ジフェンヒドラミン(経口)

  • ヒドロキシジン など

📝 注意ポイント:

  • 風邪薬にも含まれるため、総合感冒薬を飲んだ直後に「急に物忘れ」「幻覚」「不穏」などが出現した場合は必ずチェックを。

  • OTC薬(市販薬)にも多く含まれるため、お薬手帳だけでなく「ドラッグストアで買った薬」も確認が必要です。

  • 成分表に記載があるので箱をチェック!

2.抗コリン作用のある抗うつ薬(三環系・SSRI)

認知症を悪化させるような副作用(せん妄、記憶障害、排尿障害など)を持ちます。

❌ 使用に注意すべき薬剤:

  • 三環系抗うつ薬:アミトリプチリン、アモキサピン、イミプラミン など

  • パロキセチン(SSRIだが抗コリン作用強)

📌 診断前のチェック:

  • 認知症と診断する前に減量または中止を検討すべき薬剤です。

  • 抗認知症薬を“上乗せ”してはいけません。他院で処方されている場合はコンサルトや変薬の相談を。

3.抗コリン作用のあるパーキンソン病治療薬

❌ 使用に注意すべき薬剤:

  • トリヘキシフェニジル

  • ビペリデン

🧠 注意すべき副作用:

  • 認知機能低下

  • せん妄

  • 排尿障害、便秘、過鎮静

💡 ポイント:

  • ビアーズ基準では65歳以上に使用回避を推奨

  • より有効な治療薬もあり、処方の見直しが必要なこともあります

一方で、精神科領域(統合失調症の薬剤性パーキンソン症状)では推奨されている例もあり、診療科をまたぐ場合には慎重な連携が必要です。

📺 もっと詳しく知りたい方はこちら!在宅医療・認知症ケア・薬剤性症候群の解説をYouTubeで配信中!▶ 内田賢一 - YouTubeチャンネル

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