在宅医療における認知症について34~アルコールという危険因子 ― 認知症や精神症状との関わり
- 2025年9月21日
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アルコールは「脳を働かないようにする方向」に作用します。飲み始めは陽気に見えても、量が増えるにつれて感情が抑えられなくなったり、歩行が困難になったり、最終的には呼吸が止まる危険さえあります。
「お酒を飲むと元気になる」と思っている方もいますが、それは前頭葉の理性が抑制された結果です。笑い上戸や泣き上戸になるのも同じ理由。つまりアルコールは脳にとって「アクセル」ではなく「ブレーキ」なのです。眠くなるのはその証拠であり、長期的に使用すれば認知機能に悪影響を及ぼします。代表的なのが、新しいことを覚えられなくなる「アルコール性健忘症候群」です。
アルコールと睡眠の質
「寝酒で眠れる」と思う人もいますが、これは誤解です。確かに寝つきは良くなりますが、その後の眠りは浅くなり、トイレも近くなり、睡眠の質は確実に悪化します。研究でも「寝酒は有害無益」であることが示されています。
高齢になると肝臓での分解力が落ち、体内の水分量も減るため、少量の飲酒でも血中濃度が高くなりやすく、脳や体への影響は若いころより大きくなります。
アルコールと精神症状
睡眠不足自体が精神症状の危険因子です。そこにアルコールが加わると、さらにリスクが増します。
寝不足+アルコール → 易刺激性(イライラしやすい)
感情抑制の低下 → 脱抑制(暴言・攻撃性など)
長期飲酒 → うつ病の危険因子
つまり、精神症状に悩む高齢者の診療で最初に確認すべきは「飲酒歴」であり、飲んでいれば即時断酒が原則です。かわいそうと思うかもしれませんが、これが治療の第一歩です。
医師が「断酒」を指示すべき理由
アルコールは合法的な嗜好品であり、多くの人は害に無関心です。少量なら健康に良いと思っている人もいます。そのため、本人や家族の自主判断で断酒に至ることはほとんど期待できません。家族が注意しても「余計なお世話だ」で終わってしまいます。
だからこそ、専門家である医師が断酒を明確に指示することが重要です。「先生に言われたからやめよう」となる力は、医療者にしかありません。
「少量ならOK」は禁句
確かに一般成人であれば少量飲酒は害が少ないとされています。ですが、精神症状を抱える人に「少しならいいですよ」と言うのは危険です。
向精神薬とアルコールの併用は危険であり、特にベンゾジアゼピン系睡眠薬はアルコールと同じ受容体に作用するため、副作用が増強される恐れがあります。ガイドラインでも警告されており、「常習飲酒者に睡眠薬を処方する」ことは論外です。
まとめ
アルコールは脳にとってブレーキであり、長期的には認知機能を低下させる
寝酒は一時的に眠れるが、睡眠の質を悪化させる
高齢者はアルコールの影響を受けやすい
精神症状に悩む人にとって「断酒」は治療の第一歩
医師が断酒を明言することが極めて重要
精神症状を改善するためには、薬の前にまず 「飲まない」こと から始めましょう。
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