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創傷ケア(スキン テア、褥瘡、下肢潰瘍)を科学する⑩~【創傷評価の標準ツール】DESIGN-Rスケールとは?

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 6月18日
  • 読了時間: 4分


~褥瘡の重症度・治癒経過を“見える化”する評価法~

■ DESIGN-Rとは?

DESIGN-Rスケールは、日本褥瘡学会によって2008年に開発された、褥瘡(じょくそう)の状態を客観的に評価するツールです。その前身である「DESIGN(2002年版)」では、点数の変化によって治癒傾向を把握することはできたものの、褥瘡ごとの重症度の比較には課題がありました。

それを改良し、**各評価項目に「重みづけ」**を加え、褥瘡の重症度と治癒経過の両方を数値化できるようになったのが「DESIGN-R」です。「R」は“Rating=評点”を意味します。

■ DESIGN-Rの7つの評価項目

項目

評価の対象

D(Depth)

創の深さ

E(Exudate)

滲出液の量と頻度

S(Size)

創の大きさ(長径×短径)

I(Inflammation/Infection)

炎症や感染の所見

G(Granulation)

肉芽組織の状態と割合

N(Necrotic tissue)

壊死組織の有無と性状

P(Pocket)

ポケット(陥凹)の広がり

■ 評価の仕組みと点数化

  • 最大合計点は66点(Dは参考情報で合計に含まれない)

  • 点数が高いほど重症・治癒困難点数が低いほど軽症・治癒傾向

  • 点数の変化により**治癒経過を「見える化」**できる

  • 重度の項目(大文字評価)に着目し、治療法選択にも活用される

■ 表記例:「D3–E1S3I1G3N0P0:8点」

このように、各項目の頭文字とスコアを並べて記録します。アルファベットは大文字=重度、小文字=軽度を意味します。

■ 使用上の注意点・特徴

留意点

内容

1. 深さ(D)は参考評価

壊死で深さが不明な場合は「DU(undeterminable)」と記録

2. 評価は週1回が基本

創部の変化時には追加で評価する

3. 急性期には参考値として使用

病態変化が早く深さ評価が困難なため

4. MDRPU(医療関連機器圧迫創傷)にも有効

医療機器による創傷も客観的に評価可能

■ 治癒予測にも使えるDESIGN-R

統計的には以下のような傾向が示されています:

  • 9点以下:約80%が1か月以内に治癒

  • 18点以下:約60%が3か月以内に治癒

  • 19点以上:約80%が3か月を超えても治癒しない可能性

※あくまでも目安であり、全身状態やケア内容によって前後します。

■ DESIGN-Rが創傷ケアにもたらす価値

  • 状態を定量的に表現できる → 言語化しにくい創の進行具合を共有しやすくなる

  • 多職種での情報共有が円滑 → 医師・看護師・訪問看護・介護職で共通理解

  • 治療方針やドレッシング材の選定の根拠になる

■ 終わりに:褥瘡評価は「見える化」と「チームケア」がカギ

DESIGN-Rは、褥瘡の重症度と治癒傾向を一つのスケールで管理できる、極めて実用性の高い評価法です。創の状態を「なんとなく」ではなく、「数字で」チームと共有することで、より的確な予防・治療戦略が立てられるようになります。

参考文献

  • 日本褥瘡学会編『褥瘡ガイドブック 第2版』照林社, 2015

  • 真田弘美ほか『最新褥瘡看護技術』照林社

  • 門野岳史『褥瘡の分類と創面評価』永井書店

  • DESIGN-R 実施マニュアル(日本褥瘡学会)🌸 スキン‐テアの正しい理解とケアで患者さんのQOLを守ろう

スキン‐テアは高齢者に多く見られる創傷であり、正確な評価と分類がとても大切です。STAR分類を活用し、早期発見・適切な対応につなげましょう。

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