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逗子、葉山、鎌倉、横須賀、横浜市金沢区の在宅医療

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在宅医療における認知症について50~【認知症ケアの基本的対応】―最初に確認すべき5つの優先順位―
認知症が疑われたとき、すぐに薬や介護サービスを考える前に、まず行うべきことがあります。それは「 診断の確定と除外 」です。 まずは、内科的・脳外科的疾患による可逆的な認知機能低下(例:甲状腺機能低下、慢性硬膜下血腫、感染症など)を除外し、次に「薬剤による認知機能低下」がないか確認し、必要なら 減薬 を行います。 これらを終えたうえで「認知症性疾患である」と判断された場合、次の5つの対応方針を念頭におきましょう。 🧩 認知症対応の5つの優先順位 危険動作はやめてもらう 仕事や社会的活動はできるだけ続けてもらう 外出機会が少ない人にはデイサービスを利用してもらう 家庭では“失敗体験”をさせない 家庭内でできる家事は本人にやってもらう この順番を意識するだけで、日常対応の迷いがぐっと減ります。以下、それぞれのポイントを具体的に見ていきます。 ① 危険動作はやめてもらう ― 安全がすべての出発点 認知症ケアの第一歩は「 安全の確保 」です。本人や家族の希望よりもまず優先すべきは、“事故を防ぐこと”。このステップを乗り越えれば、早すぎる入所を防ぐことにも
10月22日読了時間: 4分


在宅医療における認知症について49~【抗精神病薬②】―使用の適応と、減薬・中止の考え方―
認知症のBPSD(行動・心理症状)に対して、 抗精神病薬 を使うかどうかは非常に難しい判断です。効果は確かにありますが、その一方で 死亡率上昇という重大なリスク が伴います。では、どんなときに使うべきなのでしょうか。 ■ 抗精神病薬が「やむを得ない」ケース 多くの国内外のガイドラインでは、 「 非薬物療法で対応しても自傷他害のおそれがある場合 に限って使用する」と明記されています。 つまり、 本当に命や安全を守るためにしか使わない薬 です。 たとえば── 幻視によって「畳に虫がいる」と思い込み、ろうそくで畳を焼こうとする人 「妻が浮気をしている」という妄想から、ゴルフクラブで攻撃しようとする人 このように、 介護者の安全が脅かされる状況 では、副作用リスクを理解した上で「薬を使わないことの危険性」と比較検討する必要があります。 抗精神病薬を使えば危険性は確かに高まりますが、使わなければ 火事や暴力などの重大事故 に発展しかねません。つまり、命を守るための“非常手段”として使用が検討されるのです。 ■ 家族と共有すべき「具体的な数字」...
10月21日読了時間: 4分


在宅医療における認知症について48~【抗精神病薬】―BPSDに「効く」が、「危険」も伴う薬―
認知症のBPSD(行動・心理症状)──とくに興奮・暴言・幻覚・妄想などが強い場合、医師が処方を検討する薬のひとつに 抗精神病薬 があります。 抑肝散やトラゾドンに比べると、抗精神病薬は 確実な効果 が期待できる一方で、 重大な副作用リスク を伴う薬であることを忘れてはなりません。 ■ 抗精神病薬の効果と危険性 BPSDに対する 非定型抗精神病薬(リスペリドン、オランザピン、クエチアピンなど)の効果を検証した無作為化二重盲検試験のレビューでは、確かに興奮・攻撃性・幻覚などの症状が有意に改善 しました。 しかし同時に、以下の リスク上昇 が明らかになっています。 強い眠気・ふらつき 錐体外路症状(パーキンソン様症状) 脳血管障害(脳梗塞・脳出血など) 尿路感染症・浮腫・歩行障害 死亡率の上昇 つまり、「効くが危険」という薬なのです。 ■ FDAの警告:死亡リスクは1.6〜1.7倍 2005年、 アメリカ食品医薬品局(FDA)は、非定型抗精神病薬を認知症患者に使用すると死亡率がプラセボの1.6〜1.7倍 になると警告しました。2008年には定型抗精神病
10月20日読了時間: 3分


在宅医療における認知症について47~【トラゾドン】―認知症の不眠とBPSDにどう向き合うか―
認知症のBPSD(行動・心理症状)の中でも、 睡眠障害 は家族や介護者を最も疲弊させる症状の一つです。「夜間の徘徊や覚醒で同居家族が眠れない」──その対応に悩む現場は少なくありません。 ■ ベンゾジアゼピン系睡眠薬は使ってはいけない これまで睡眠障害に使われてきた ベンゾジアゼピン受容体作動薬 (例:マイスリー、ハルシオンなど)は、認知症患者に対しては 科学的根拠がなく、むしろ害がある ことが分かっています。 その理由は以下の通りです。 認知機能をさらに低下させる せん妄・転倒・骨折のリスクを高める 依存性を生じる したがって、 認知症の人の睡眠障害に使ってはいけない薬 と考えるべきです。 ■ 科学的根拠があるのはトラゾドンだけ 認知症における睡眠障害治療薬の有効性を検証したレビューでは、臨床試験が行われたのは メラトニン・ラメルテオン・トラゾドンの3剤のみ 。 そのうち、 トラゾドンだけがプラセボより有効 であり、かつ 安全性も高い ことが報告されています(被験者30名の小規模試験ですが、重要な結果です)。 ■ トラゾドンの使い方と注意点 トラ
10月19日読了時間: 3分


在宅医療における認知症について46~【抑肝散・トラゾドン・抗精神病薬】
―BPSD(認知症の行動・心理症状)への薬物治療をどう考えるか― 非薬物的アプローチ(家族・介護環境の調整)を行ってもBPSDが落ち着かない場合、初めて薬物療法の検討が必要になります。ここでは、漢方薬の 抑肝散 を中心に、科学的根拠と注意点を整理します。 ■ 抑肝散の特徴と効果 抑肝散(よくかんさん)は、 易怒性・興奮・暴言・暴力・幻覚・妄想など のBPSD症状に一定の効果を示すことがあるとされています。無作為化比較試験のレビューでは、プラセボ群と比較してBPSD全般、とくに 妄想・幻覚・焦燥/攻撃性 の改善が報告されました。副作用による中止率もプラセボと差がなく、安全性が高い点が特徴です。 ただし、 認知機能(MMSEスコア)を改善する効果は確認されていません。 さらに、唯一の二重盲検試験では、アルツハイマー病のBPSDに対して 有意差が認められなかった という結果が出ています。したがって、「効く場合もあるが、確実ではない」薬といえます。 ■ 使用上の注意と投与法 抑肝散には 甘草 が含まれるため、 低カリウム血症・浮腫・高血圧・不整脈...
10月18日読了時間: 3分


看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する47~エコーで見るDVT⑥ ― 血栓の評価と判断の実際
深部静脈血栓症(DVT)の診断では、 血栓の存在・範囲・可動性・性状 を正確に把握することが重要です。ここでは、エコーによる血栓評価の基本手順を順を追って紹介します。 🔍血栓評価の4ステップ 1️⃣ 血栓検索(存在診断) 2️⃣ 血栓範囲の把握 3️⃣ 血栓中枢端(血栓尖)の可動性評価 4️⃣ 血栓性状評価(急性/慢性の判定) ① 血栓検索(存在診断) 基本は B-mode(2Dモード)による短軸走査 です。静脈を短軸で連続観察しながら、 適時圧迫 を行い血栓の有無を判断します。 🔸圧迫法の原理 正常静脈 :圧迫により完全につぶれ、内腔が消失する。 血栓あり :静脈内腔がつぶれず残存。(動脈は圧迫してもつぶれないため、比較対象として有用) 💡 静脈がつぶれない=血栓を強く疑う。短軸で検出後、 長軸走査 で血栓の連続性と内部性状を確認します。 🔸補助技術 カラードプラ法 :血流信号の欠損により血栓の存在を確認。 骨盤内観察 :腸管ガスの影響があるため、 やや強めの圧迫 で背側の静脈を描出。 ⚠️ 急性期の浮遊型血栓 は可動性が高く、 強い
10月17日読了時間: 4分


看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する46~エコーで見るDVT⑤ ― 検査法と実践のポイント
深部静脈血栓症(DVT)は、 非侵襲的に診断できる代表的疾患のひとつ です。その評価において、エコー(超音波)は最も有用かつ即時性の高い検査手段です。今回は、DVTの**エコー検査法(全下肢静脈法)**について解説します。 🔍 DVTのエコー検査法 ― 2つのアプローチ DVT評価には、観察範囲の異なる2つの方法があります。 ① 全下肢静脈法(Whole-leg venous ultrasound) 骨盤部の総腸骨静脈から下腿ひらめ静脈まで を系統的に観察 急性期・慢性期ともに評価でき、再検不要 診療・在宅領域でも標準的な手技 ② 2点圧迫法(2-point CUS:compression ultrasonography) 鼠径部(総大腿静脈)と膝窩部(膝窩静脈) の2か所を限定的に圧迫評価 時間が限られる 救急現場向けの簡易法 初回陰性でも 1週間後の再検が必須 💡 本稿では、より詳細な評価が可能な 全下肢静脈法 を中心に解説します。 🩻 観察対象と静脈の基本構造 下肢の静脈は**筋膜より浅い「表在静脈」**と、**筋膜より深い「深部静
10月16日読了時間: 4分


看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する45~エコーで見るDVT(深部静脈血栓症)― リンパ浮腫との鑑別にも重要
リンパ浮腫と同様に「下肢の腫脹」を呈する疾患として、**深部静脈血栓症(DVT: deep vein thrombosis)**があります。DVTは、**肺塞栓症(PE: pulmonary embolism)**の原因となり得る、命に関わる重要な疾患です。今回は、DVTの基本・症状・エコーによる診断法を整理します。 🩸DVTとは? 〜VTEという概念〜 DVTとは、主に**下肢の深部静脈(腸骨静脈〜下腿静脈)**に血栓が形成された状態を指します。それ自体は必ずしも致死的ではありませんが、 血栓が肺へ飛んでPE(肺塞栓症)を起こす と、突然の呼吸困難やショックを来し、重篤な転帰をとることがあります。 この DVTとPEを合わせて「VTE(venous thromboembolism:静脈血栓塞栓症)」 と呼びます。VTEは俗に「 エコノミークラス症候群 」「 旅行者血栓症 」としても知られ、長時間同じ姿勢で過ごす飛行機搭乗中や、術後の臥床中に発生することがあります。 💡 日本でも近年、生活習慣や高齢化、長時間手術などの影響で VTEは増加傾
10月15日読了時間: 3分


看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する44~エコーで見るリンパ浮腫④ ― 評価と判断の手技
エコーはリンパ浮腫の 病期判定・浮腫範囲の把握・経時的変化の追跡 において、非常に有用なツールです。ここでは、臨床での観察手技と経時的評価のポイントをまとめます。 🔍 内部性状の違いによる評価 リンパ浮腫では、 患肢全体の皮下組織の状態 を把握することが第一歩です。観察範囲は次の通りです。 上肢リンパ浮腫 :手関節(尺骨側)から上腕まで 下肢リンパ浮腫 :足関節(外果)から大腿まで 🔸 撮影のコツ エコー装置の「 動画機能 」や「 パノラマ撮影 」を活用すると、患肢全体の連続像を得られます。 プローブと皮膚の両方にゲルを十分塗布し、 皮膚上を滑らせながら移動 するのがポイントです。 プローブは**身体の長軸方向(縦向き)**に当てます。 💡 コツ: 浮腫の程度は長軸方向に変化するため、縦方向の走査がより正確な観察につながります。 🧭 部位による内部性状の違い 下肢リンパ浮腫の例を見ると、患肢全体で皮下組織が厚く、部位によって 内部性状(エコー輝度・構造)が異なる ことが分かります。これは、同じ患肢でも 部位ごとに病期が異なる可能性 を示
10月14日読了時間: 3分


看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する43~エコーで見るリンパ浮腫③ ― 皮下組織の変化と「敷石様像
リンパ浮腫では、皮下組織の構造変化が進行とともに現れます。エコー(超音波)を用いると、この**皮下層の「見えないむくみ」 を視覚的にとらえることができます。特に特徴的なのが、浅筋膜の変化と 「敷石様像(paving stone appearance)」**です。...
10月13日読了時間: 3分
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