誤嚥性肺炎を科学する63~摂食嚥下障害や誤嚥性肺炎には、「薬剤の工夫(調整)」が1つの有効なオプションとなる場合があります。
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薬剤の工夫
摂食嚥下障害・誤嚥性肺炎への薬剤アプローチ

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薬剤のなかには摂食嚥下機能に悪い影響を及ぼすものがある
高齢者はポリファーマシーになりがちなため、どのような薬を服用しているのかチェックしよう
直接的に誤嚥性肺炎を予防できる薬は現在のところ開発されていません。また、誤嚥性肺炎を直接治療する薬は、感染症の治療に使われる抗菌薬だけです。そして、摂食嚥下障害を治療できる薬も存在しません。しかし、摂食嚥下障害や誤嚥性肺炎には、「薬剤の工夫(調整)」が1つの有効なオプションとなる場合があります。
ポリファーマシーとは
多剤併用による有害事象をポリファーマシーとよびます。高齢者は併存疾患や疾病罹患率が高いため、ポリファーマシーになりがちです。さらに、加齢に伴う生理機能の低下や薬剤分布の変化により、若年層の成人とは薬の半減期(血中の薬物濃度が半分にまで下がる時間)が長くなる傾向にあります。その結果、体に好ましくない影響が出やすくなるのです。
⚠ 注意点
自覚的または他覚的に症状や兆候として出現していなくても、影響が出ている場合があることを知っておかなければなりません。高齢者が罹患しやすい疾患や症状に対して処方されることが多い利尿薬や不眠症治療薬は、ポリファーマシーの原因でもあります。
純粋に加齢に伴って起こっている食べる機能の低下なのか、ポリファーマシーによって生じている機能低下なのかを検査などで判定できませんし、ポリファーマシーによって誤嚥性肺炎を発症したのかどうかも臨床上は判断できません。しかし、ポリファーマシーが脆弱性や死亡、誤嚥性肺炎に関連するようなADL(日常生活動作)の低下、副作用の増加と関連していることが、数多くの老年医学研究で立証されています。
図 8-1 | ポリファーマシーの影響
疾病
症状
→
投薬
投薬
副作用に投薬
→
代謝速度低下
生理的変化
薬剤相互作用
→
脆弱性
死亡
ADL低下
転倒
食欲低下
副作用増加
図8-1 ポリファーマシーの影響(概念図)
副作用(副反応)と摂食嚥下機能
薬は対象となる疾病の原因や症状を改善するために開発されます。しかし、ほとんどの薬は目的以外の意図しない効果も示します。これを一般的に副作用とよびます。副作用と聞くと悪い印象がありますが、薬剤の副作用が摂食嚥下機能にとって逆によい作用としてはたらくこともあります。もちろん、摂食嚥下機能にとって悪い副作用としてはたらくときもあります。
📋 実践のポイント
もし摂食嚥下機能に悪い副作用をもつ薬を内服しているのであれば、その薬を減薬・中止できないか担当医や薬剤師らと検討しましょう。ポリファーマシーからの脱却にもなります。
また、現在服用している薬を、摂食嚥下機能によい副作用をもつ薬に変更できないかを検討しましょう。
まずは患者さんが定期内服薬としてどんな薬を服用しているのかをチェックしてください。
包括的評価に薬剤師を巻き込む
薬の副作用や相互作用の専門家は薬剤師です。誤嚥性肺炎の患者さんだけでなく、入院中の高齢者または地域在住高齢者のポリファーマシーや副作用対策には、薬剤師を巻き込んだ情報・意見交換が有効です。
高齢者総合機能評価(CGA: Comprehensive Geriatric Assessment)
高齢者を多面的かつ包括的に評価する介入手法です。CGAには、服用している薬剤が適切かどうか、薬剤師らの専門家の意見を取り入れることも一側面として含まれています。CGAを実施することで、死亡や身体障害の減少、在院日数短縮、介護施設入所の減少といった高齢者にとって好ましい予後が期待できると証明されました。
ぜひ、誤嚥性肺炎の予防とケアのために薬剤師を巻き込みましょう。
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