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在宅医療における認知症について21~レビー小体型認知症診断に役立つ検査

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 1 日前
  • 読了時間: 3分


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ダットシンチ(ドーパミントランスポーターシンチグラフィ)とMIBG心筋シンチグラフィ

ダットシンチとは?

ダットシンチは、脳の「黒質線条体ドーパミン神経」に存在する ドーパミントランスポーター(DAT) を画像化する核医学検査です。MRIや脳血流シンチでは分からない「ドーパミン神経の脱落の有無」を評価できるため、パーキンソン病やレビー小体型認知症の診断補助に用いられます。

MIBG心筋シンチとは?

MIBG心筋シンチは、心臓を支配する 交感神経の働き をみる検査です。心臓交感神経に障害があると心筋へのMIBG集積が低下します。心疾患だけでなく、神経変性疾患に伴う自律神経障害の評価にも有用です。

レビー小体型認知症の診断基準との関係

2017年の国際的診断基準(CDLB)では、以下が「指標的バイオマーカー」とされています。

  • 基底核でのDAT取り込み低下(ダットシンチ)

  • MIBG心筋集積低下(MIBG心筋シンチ)

つまり、幻視やパーキンソン症状など「中核症状」が1つしかなくても、これらの検査が陽性であれば臨床診断が可能になります。

ダットシンチの診断能

国内第Ⅲ相試験の結果をみると、レビー小体型認知症とアルツハイマー病・健常者の鑑別において次の成績でした。

臨床診断

被験者数

ダットシンチ異常

ダットシンチ正常

レビー小体型認知症

10例

7例

3例

アルツハイマー病・健常者

11例

1例

10例

  • 感度(レビーを正しく検出できる割合):70%

  • 特異度(レビー以外を正しく除外できる割合):91%

ポイント

  • 特異度は高く、「陽性なら診断の裏付けになる」

  • 感度はやや低めで、「陰性だからといってレビーを否定できない」

実際の臨床での使い方

  • ダットシンチは「レビー小体型認知症が疑われるときの診断補強」に有用

  • ただし、除外診断には向かない(正常だからといって否定できない)

  • 実際の治療薬はアルツハイマー病・レビー小体型認知症ともにコリンエステラーゼ阻害薬が中心で、大きく変わるわけではありません

  • 早期診断のメリットは、レビー小体型認知症で重篤な副作用を起こしやすい薬(抗精神病薬や抗コリン薬)を避けやすくなる点です

MIBG心筋シンチとの比較

  • MIBG心筋シンチは費用が安く、心疾患や糖尿病がなければ第一選択

  • ダットシンチはMIBGが行えない場合や、より詳細に黒質線条体の評価が必要な場合に有効

まとめ

  • ダットシンチとMIBG心筋シンチは、レビー小体型認知症の診断をサポートする大切な検査。

  • ダットシンチは「陽性なら有力な証拠、陰性でも否定はできない」。

  • アルツハイマー病とレビー小体型認知症で迷った時に有効だが、日常診療で必ずしも必要になる場面は限られます。

📺 在宅医療・認知症ケア・呼吸器疾患の解説をYouTubeで配信中!▶ 内田賢一 - YouTubeチャンネル

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