在宅医療における認知症について19~脳血流シンチグラフィで分かる認知症の特徴
- 賢一 内田
- 8月14日
- 読了時間: 2分

脳血流シンチグラフィとは?
脳血流シンチグラフィは、脳の血流を画像で評価する検査です。主に以下の目的で使われます。
神経変性疾患(アルツハイマー病など)の鑑別
脳血管障害の評価
てんかん焦点の検出
認知症の多くは神経変性疾患か血管性認知症に分類されるため、この検査が診断の参考になることがあります。CTやMRIでは脳の萎縮が目立たない初期段階でも、脳血流シンチグラフィなら血流低下を捉えられる場合があります。
4大認知症の血流低下パターン
下表は、典型例における4大認知症の血流低下パターンです。
疾患名 | 血流低下パターン |
アルツハイマー病 | 側頭頭頂連合野〜後部帯状回から楔前部にかけて低下。一次感覚運動野は保たれる。 |
レビー小体型認知症 | アルツハイマー病に似たパターン+後頭葉の血流低下。 |
前頭側頭葉変性症 | 前頭葉・側頭葉の血流低下が目立つ。 |
血管性認知症 | 脳血管障害部位の血流低下が明瞭。前頭葉の血流低下が伴うことも。 |
※すべて典型例であり、非典型的なパターンを示すこともあります。
診断能の限界
アルツハイマー病患者70人・健常者14人を対象に、生前の脳血流シンチ所見と死後の病理診断を比較した研究では、
アルツハイマー病の血流低下パターンによる診断:感度63%、特異度82%
臨床診断基準による診断:感度59%、特異度87%
大きな差はなく、脳血流シンチ単独での診断力には限界があります。そのため、ほとんどの認知症ガイドラインではルーティン検査としての実施は推奨されていません。
検査を行うべきケース
独居などで日常生活の情報が得にくく、診断に必要な情報が不足している場合
臨床診断に迷い、検査結果によって治療方針が変わる場合
このような場合は脳血流シンチを行う意義があります。
解析ソフトの役割
3D-SSP(Three-Dimensional Stereotactic Surface Projection)やeZIS(easy Z-score Imaging System)といった画像統計解析ソフトがあります。これらは健常者データベースとの比較で血流変化を統計学的に評価しますが、あくまで診断の補助です。最終的には視覚評価(読影)と臨床情報が欠かせません。
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