神経障害性疼痛疼痛を科学する28~口腔顔面領域の神経障害性疼痛— 非定型口腔痛・三叉神経外傷後ニューロパシー・CRPS —
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定義・症状・病態・診断・治療
定義
非定型口腔痛とは、あらゆる診査において異常を認めない口腔領域の疼痛を主症状とする病態の総称です。主として歯が痛む場合は特発性歯痛または非定型歯痛と表現され、舌が症状の主体であれば舌痛症と診断されます。バーニングマウス症候群は、通常、口腔の広い範囲に症状が及ぶ場合に診断され、両側または片側の舌の背面・口蓋・口唇・歯肉が頻繁に症状がみられる領域です。

主症状は口腔領域の灼熱感を伴う疼痛です。この痛みは、時にその他の神経障害性疼痛でみられるような不快異常感覚を伴うことがあります。疼痛は常時存在しますが、通常、食事の際は寛解します。日中は疼痛が増悪し、一日の中では起床時が最も軽いという特徴があります。
病態(鼓索神経と舌咽神経の相互調節)
多くの患者で味覚障害や唾液の分泌障害がみられることが特筆すべき点です。鼓索神経と舌咽神経の味覚知覚における相互調節作用があり、その結果、鼓索神経の障害は反対側の舌咽神経からの入力を増大させると考えられています。どちらか一方からの味覚の入力に障害が生じると、他方の入力の抑制が外れ、三叉神経の入力の脱抑制を引き起こし、舌や口蓋・歯肉・歯に痛みが生じるのではないかと考えられています。
診断に際して除外すべき全身疾患


定義と症状
三叉神経外傷後ニューロパシーは、三叉神経領域の外傷・手術・末梢神経外傷によって生じる持続性ならびに発作性の疼痛で性格づけられます。灼けるような、ズキンズキンする痛みが同時に感じられ、この痛みは突然の増悪発作を伴います。障害領域には知覚の鈍麻または不快異常感覚がみられ、アロディニアや痛覚過敏もしばしばみられます。
口腔外科手術後の感覚を患者の感覚(自覚症状)からみた研究では、受傷後は知覚低下による安静時の感覚異常が主体をなすが、時間の経過とともに誘発刺激に対する異常感覚(不快異常感覚、アロディニアなど)が安静時の感覚異常を上回るようになります。
末梢神経損傷の発生頻度(三叉神経)

神経症状に先行する外科手術や外傷・歯科治療の既往があり、当該神経支配領域に感覚の異常が存在すれば本病態を疑います。神経傷害の診断には定量的感覚検査を用います。新鮮例であれば定量的温覚検査・定量触覚検査・電流認識検査を組み合わせることで診断が可能です。
治療(グレードA)
他の神経障害性疼痛の治療と同様に考えてよく、三叉神経領域を含めた全身の神経障害性疼痛に対するシステマティックレビューによれば、第一選択とされるべき薬剤はアミトリプチリンなどの三環系抗うつ薬やCaチャネルα₂δリガンド(ガバペンチン、pregabalin)です(グレードA)。次のレベルとして、SNRIやリドカインの局所塗付、さらにトラマドールや徐放性オピオイドが続きます。その他エビデンスの高さでは劣るものとして、メキシレチン・cannabinoid・methadone・NMDA受容体阻害薬・ラモトリギン・トピラマート・バルプロ酸・カプサイシンの局所塗付(薬剤塗付用ステント)なども挙げられます。複合性局所疼痛症候群の口腔顔面領域での特徴
定義と分類
複合性局所疼痛症候群(CRPS)は、神経・組織の傷害に引き続き主として傷害部の末梢に生じる異常症状を伴う病態で、受傷の程度からは考えられない症状の強さ・持続期間を呈し、しばしば運動障害をも呈します。IASPの定義では四肢領域に好発とされていますが、口腔顔面領域の本病態に関しての詳しい定義はありません。三叉神経の傷害がはっきりしない場合と明らかな場合で、Ⅰ型とⅡ型に分類されます。
口腔顔面領域CRPSの症状の特徴
疼痛の性質は四肢のものと同様ですが、浮腫や退行性変化などの局所所見を伴っているものもあれば、伴っていないものもあります。その頻度は四肢ほどには頻繁にみられません。局所の皮膚・粘膜感覚は知覚低下を呈しますが、時に痛覚過敏・アロディニアを伴います。著者らが経験した症例では、下顎神経の傷害後2週で受診し、患側三叉神経第2・3枝領域に知覚低下・不快異常感覚・アロディニアを認め、患側の口唇・耳珠・頬における潰瘍形成と乳突蜂巣への水分貯留、患側半身(顔面・四肢・体幹)の皮膚温低下を認めました。
CRPSのための研究的診断基準








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