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神経障害性疼痛疼痛を科学する25~脊髄損傷性疼痛(SCI痛)— 病態の理解から学際的治療まで —

  • 2 時間前
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SCI痛の概要と社会的背景

脊髄の損傷に原因する疼痛は、脊髄損傷性疼痛(spinal cord injury pain:SCI痛)と称され、代表的な中枢性疼痛として知られています。外傷、脊椎脊髄疾患、脊髄虚血、手術・医療行為などによる脊髄組織の損傷によって発症します。SCI痛は損傷直後から発生する場合だけでなく、数ヵ月経過後に発症する場合などもあり、多くは治療抵抗性で慢性に経過します。

SCI痛はリハビリテーションなどの身体機能回復治療を遅らせADL自立を妨げるばかりでなく、睡眠障害、疲労、食欲不振、抑うつなど心身への大きな障害を及ぼすことが知られています。

SCI痛の病態と分類
SCI痛の病態と分類

広義のSCI痛は損傷神経組織による神経障害性疼痛(中枢性疼痛、狭義のSCI痛)に、骨・関節・筋など運動器や内臓器由来の疼痛が加わった複合的な疼痛とされます。

侵害受容性疼痛 — 筋骨格系疾患

椎体不安定性・骨折端の残存は損傷早期から発生しやすく、体位変換・姿勢・動作によって増悪し安静時に軽減します。靭帯・関節痛は構造の破綻・過負荷によって生じ、特に対麻痺者の肩関節痛は体位による圧迫・肩関節拘縮により多くみられます。痙縮は脊髄伸張反射の亢進によって起こり、受傷後数ヵ月以降、不全麻痺者に多いです。

神経障害性疼痛(3分類)

SCI痛に対する治療と進め方

理学療法、薬物療法、インターベンション療法、外科的療法、伝統的治療(鍼灸など)など各種ありますが、しばしば治療抵抗性です。疼痛成因が複雑で治療に影響される身体症状の問題があるため、脊椎(脳神経)外科・理学療法科・泌尿器科・消化器外科・精神科・医療福祉士などとの学際的アプローチが求められています。

三段階の治療ステップ(グレードC)

SCI痛における薬物療法アルゴリズム
SCI痛における薬物療法アルゴリズム

at-level・below-level神経障害性疼痛は難治性で、薬物治療エビデンスはいまだ十分とはいえません。神経障害性疼痛の有無は、異常知覚の有無、NPSスケール・LANSSスケールによる評価が有用です。

痙縮に伴う疼痛への対応
痙縮に伴う疼痛への対応

バクロフェン(GABAB作動薬)経口投与が通常行われます。副作用として鎮静・衰弱・混乱があること、腎障害者での使用制限、突然の中止で退薬症状が生じること、高齢者には認容性不良が問題です。重症痙性麻痺には埋め込み型髄腔内バクロフェン投与も承認されています。

筋骨格系疼痛への対応

マッサージ・温熱療法の有効性が示されています。長期使用を考慮すると安全域の広いアセトアミノフェンが推奨されます。麻薬性鎮痛薬は便秘に対する認容性が非常に不良で腸閉塞を発症させないよう十分注意が必要です。

リハビリ・電気刺激・外科的療法
リハビリ・電気刺激・外科的療法

理学療法・リハビリテーション(グレードB)

マッサージと温熱療法は疼痛緩和に有用で、非薬物療法では最も有効と考えられています。主なリハビリテーションとして、呼吸筋トレーニング・排痰法、体位変換と寝返り、床上基本動作、四肢関節運動・温水プールでのリハビリ、プッシュアップ動作・車椅子への移乗動作などがあります。

損傷後早期の積極的なリハビリテーションが、その後の身体機能を左右すると考えられています。残存部位の機能強化だけでなく、麻痺部へもリハビリテーションを施し両部の身体的統合・協調を図ることが重要です。

電気刺激療法

TENS・脊髄刺激療法・深部脳刺激療法の治療エビデンスは弱く、限られています。しかしTENSおよび脊髄刺激療法はいずれも試験的体験は容易であるので、試みる価値はあります。損傷分節痛に対する脊髄刺激療法の有効性が示されています。

外科的療法(グレードA)

脊髄後根神経破壊術の有効性が示されていますが、破壊を目的とする外科的療法では多くが無効に終わり、有効性を示すエビデンスに欠け、破壊的外科治療は推奨されていません。幹細胞移植による再生医療への期待が集まる現在においては過去の手法といえます。


心理社会的側面と社会資源の活用

慢性疼痛はそれ自体が抑うつの原因として重要ですが、SCI痛は身体機能を下げ、自立と社会参加の大きな妨げになります。自己否定・離婚・自殺念慮など心理社会的問題に拡大する可能性も指摘されており、精神科医・医療福祉士などとの学際的な対応が求められています。

  • 長期的展望と学際的アプローチ

SCI痛は各種病態による複合要因から構成されます。長期的展望に立ち、身体症状と機能を損なうことなく疼痛症状の緩和を図る必要があります。疼痛緩和にかかる医療費負担についても受療者と合議しながら最適な方法を選択します。

SCI痛は麻痺と同様にきわめて重大な身体症状であり克服すべき医療課題であることを、すべての医療機関が認識し、損傷早期から始まる疼痛緩和医療システムを構築することが求められています。


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