攻めの栄養療法を科学する④~【診療ガイドラインとEBM】
- 賢一 内田
- 13 分前
- 読了時間: 3分

――リハ栄養診療ガイドライン2018をどう使うか――
医療現場では「エビデンスに基づく医療(EBM)」という言葉が欠かせません。しかし、EBMを“現場で実践する”となると、多職種を巻き込むリハ栄養の領域では特に難しさを感じることもあります。
今回は、「診療ガイドラインとは何か?」「EBMとは何か?」「リハ栄養診療ガイドライン2018をどう活かすのか?」について分かりやすく整理します。
◆ 診療ガイドラインとは何か?
診療ガイドラインとは一言でいうと、
“患者と医療者がより良い意思決定をするための道しるべ”
です。
厚労省のMinds(ガイドライン選定・評価機構)では次のように定義されています。
重要な医療行為について
信頼性の高いシステマティックレビューと
効果と害のバランスを総合評価し
患者と医療者の意思決定を支援するために作成された文書
つまり、診療ガイドラインは「拘束力のあるマニュアル」ではありません。
むしろ、各患者の状況に合わせて“どう応用するか”を考えるための根拠集という方が正しい理解です。
患者家族からも、「ガイドラインに書いてあることは強い力を持つ」と語られることがありましたが、本来は“柔軟に活用すること”が前提です。
◆ EBMとは何か?
EBM(Evidence Based Medicine)は、
臨床現場で、エビデンスを患者の状況に合わせて活用するための方法論
のことです。
EBMは以下の3つの要素が重なったところに存在します。
臨床研究によるエビデンス(科学的根拠)
医療者の臨床経験・専門性
患者の価値観や希望
診療ガイドラインは、この①の部分を体系的にまとめたものであり、EBM実践のための強力な情報源になります。
◆ リハ栄養診療ガイドライン2018とは?
リハ栄養診療ガイドライン2018は、以下の臨床課題に対して GRADEシステムに基づいて作成されています。
脳血管疾患
大腿骨近位部骨折
成人がん
急性疾患
それぞれの課題について、
エビデンスを整理
効果と害のバランスを評価
推奨度を明確化
することで、臨床の意思決定を支援しています。
◆ ガイドラインは「絶対」ではなく「対話の土台」
Mindsでは明確に、
「最終的な判断は、患者と主治医が協働して行うべきである」
と示されています。
つまり、
ガイドラインの推奨=“正解”
現場の判断=“例外”
ではなく、
患者の価値観 × 医療者の判断 × エビデンスの交差点で最適解を探すために使うのがガイドラインです。
ガイドラインは“診療の均てん化”を目的としており、医療行為を縛るものではありません。
◆ リハ栄養領域でガイドラインをどう使うか?
リハ栄養の現場では、患者ごとに状況が大きく異なります。
栄養障害の原因
合併症
生活環境
ADL
食事摂取
リハの許容度
これらは患者ごとにバラバラであり、「推奨通りにやれば正解」ではありません。
重要なのは、「なぜこの推奨があるのか?」を理解し、各患者に最も適切な形で実践することです。
リハ栄養ケアプロセス(アセスメント→診断→ゴール→介入→モニタリング)と組み合わせて活用すると、ガイドラインの推奨を「その人に合わせたケア」に落とし込むことができます。
◆ まとめ
診療ガイドラインは“拘束するもの”ではなく、意思決定を支援するツール
EBMは、エビデンスを臨床で活かすための方法論
リハ栄養ガイドライン2018は、GRADEに基づいて作られた信頼性の高い指針
大切なのは、ガイドラインの推奨を患者ごとの状況に合わせて実践すること
リハ栄養は、ガイドラインと現場判断の両方を大切にしながら、患者の機能・活動・参加を最大化するための学問です。




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