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リウマチを科学する45 分子標的治療薬(JAK阻害薬)

13 分前
読了時間: 4分

分子標的治療薬(JAK阻害薬)

〜大きな可能性と、慎重さが求められる「新世代のエース」〜

対象:患者さん・ご家族/医療・介護スタッフの皆さん

生物学的製剤の登場で、多くの方が関節炎の苦しみから解放されました。それでも十分な効果が得られない方がいます。そんなときの奥の手が、分子標的治療薬(tsDMARDs)です。病気に関わる「分子」を「標的」にして開発された「治療薬」なので、この名前で呼ばれます。

※生物学的製剤も分子を標的にしているため、文献によっては分子標的治療薬に含めることがあります。

1JAK阻害薬のしくみ

JAK(Janus kinase、通称「ジャック」)は、細胞の中でメッセージを伝えるシグナル伝達を担う蛋白質です。サイトカインが細胞表面の受容体にくっつくと、細胞の中にメッセージが伝わり、細胞が活性化したり蛋白質をつくったりします。その主要な通り道のひとつがJAK-STAT経路です。

細胞サイトカイン(IL-6など)

JAK-STAT経路は、IL-6など関節リウマチに関わるものを含む50種類以上のサイトカインのメッセージを伝えています。JAKを阻害してこの経路を断ち切り、複数の炎症性サイトカインの作用をまとめてブロックするのがJAK阻害薬です。
JAK-STAT経路は、IL-6など関節リウマチに関わるものを含む50種類以上のサイトカインのメッセージを伝えています。JAKを阻害してこの経路を断ち切り、複数の炎症性サイトカインの作用をまとめてブロックするのがJAK阻害薬です。

 

生物学的製剤

JAK阻害薬

ねらい

1種類のサイトカインなど

複数のサイトカインをまとめて

効果

強力

同等以上。バイオが効かなかった場合も期待できる

使い方

注射(点滴・皮下注)

飲み薬。続けやすい

位置づけ

メトトレキサートなどで効果不十分なとき。できる限りリウマチ専門医に相談・紹介

JAKにはJAK1・JAK2・JAK3・TYK2の4種類があり、薬ごとにどれをどの程度阻害するかが異なります。現在JAK阻害薬は5種類ありますが、その違いが実際の効果や安全性にどこまで影響しているかは、わかっていません。

医療スタッフ向けの参考一覧(出典書籍の記載を要約)

一般名

特徴

トファシチニブ

もっとも歴史がある薬で、エビデンスが豊富。

バリシチニブ

新型コロナウイルス肺炎に対する適応ももつ。

ペフィシチニブ

肝臓で代謝され便から排泄されるため、腎機能障害があっても減量不要。

ウパダシチニブ

ほぼ選択的にJAK1を阻害する。高度の腎機能障害でも減量して使える。

フィルゴチニブ

選択的にJAK1を阻害する。

2強力なのに、なぜ「第一選択」ではないのか

効果が強く、しかも飲み薬。それだけを見れば第一選択薬になってもよさそうです。しかし現時点では、メトトレキサートなどの抗リウマチ薬が効かなかった場合に、さまざまなリスクを考えたうえで使う薬とされています。重大な副作用の懸念があるためです。

懸念①感染症

免疫に大切な複数のサイトカインをまとめて抑えるため、感染症への抵抗力も下がると考えられます。ステロイドを併用している場合は、リスクがきわめて高くなります。

帯状疱疹は、ワクチンで予防できます
帯状疱疹は、ワクチンで予防できます

帯状疱疹の不活化ワクチンが使えるようになりました。JAK阻害薬を始める前に、あらかじめ接種して予防しておくことが重要です。(前回のQ&Aのとおり、生ワクチンは使えません)

懸念②心血管系の病気・悪性腫瘍・静脈血栓症

近年の大規模研究で、心筋梗塞などの心血管系の病気、悪性腫瘍、静脈血栓症のリスクが上がることが報告されました。これを受けて日本リウマチ学会は、次に当てはまる方では、リスクとベネフィットを十分に比べて判断するよう勧告しています。

在宅医療の現場では、とくに当てはまりやすい条件です
在宅医療の現場では、とくに当てはまりやすい条件です

高齢であることや、体を動かしにくいことは、訪問診療を受けている方に多い条件です。だからこそ、JAK阻害薬を使うかどうかはリウマチ専門医と相談しながら慎重に判断します。

患者さん・ご家族・訪問スタッフの皆さんへ:こんなときはすぐ連絡を

体の片側にピリピリした痛みや水ぶくれ(帯状疱疹)、発熱・咳・息切れ(肺炎)、片足のむくみや痛み、急な息苦しさ、胸の痛み(血栓・心臓)──。いつもと違う症状があれば、次の受診を待たずにご連絡ください。

今回のまとめ

  • JAK阻害薬は「新世代のエース」。複数のサイトカインをまとめてブロックし、生物学的製剤と同等以上の効果をもつ飲み薬

  • 帯状疱疹やニューモシスチス肺炎などの感染症に注意。帯状疱疹は不活化ワクチンで予防する

  • 心血管系の病気・悪性腫瘍・静脈血栓症のリスクがあり、高齢・喫煙などの方では慎重に判断する

  • 使うときは、できる限りリウマチ専門医に紹介・相談することが望ましい

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※本記事は一般的な医学情報をわかりやすくお伝えするために内容を簡略化しています。薬剤の特徴は出典書籍の記載を要約したもので、薬剤数や承認状況・学会の勧告はその後更新されている可能性があります。用量・用法は記載していません。必ず主治医にご相談ください。


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