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リウマチを科学する44 生物学的製剤〜リウマチ治療の「頼れる切り札」〜

10 分前
読了時間: 5分

生物学的製剤

〜リウマチ治療の「頼れる切り札」〜

対象:患者さん・ご家族/医療・介護スタッフの皆さん

生物学的製剤(bDMARDs、通称「バイオ」)は、従来型抗リウマチ薬で効果が不十分だったときに登場する、「頼れる切り札」のような薬です。

1なぜ「切り札」が必要なのか

効果が不十分な方は、関節の痛みに苦しんだり、関節が変形するリスクにさらされたりします。そこで出番になるのが生物学的製剤や、次回ご紹介する分子標的治療薬です。
効果が不十分な方は、関節の痛みに苦しんだり、関節が変形するリスクにさらされたりします。そこで出番になるのが生物学的製剤や、次回ご紹介する分子標的治療薬です。
2TNF阻害薬
2TNF阻害薬

TNF(tumor necrosis factor:腫瘍壊死因子)は、炎症を起こすサイトカインの一種です。もともとは腫瘍を壊死させる物質として見つかったためこの名前がついていますが、その後の研究で、炎症を引き起こす中心的な物質であることがわかりました。

TNFは主に活性化したマクロファージから出て、ほかの炎症性サイトカインやCRPなどの急性期蛋白を増やし、白血球を炎症の場所へ呼び寄せます。関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、炎症性腸疾患(クローン病・潰瘍性大腸炎)などで炎症の原因になっており、その働きをブロックするのがTNF阻害薬です。

関節リウマチに使えるTNF阻害薬は6種類。働きは同じですが、構造や投与方法(通院での点滴/自分で打てる皮下注射)が異なります。後発品にあたるバイオシミラーがある薬もあります。どれを選ぶかは、専門医の腕の見せ所です。

医療スタッフ向けの参考一覧(出典書籍の記載を要約)

一般名

特徴

インフリキシマブ


点滴

2003年登場の、もっとも歴史のあるTNF阻害薬。メトトレキサートとの併用が必須。バイオシミラーあり。

エタネルセプト


皮下注

唯一、抗体ではないTNF阻害薬。効果の持続が短めなぶん、副作用が出ても薬の影響を小さくでき、高齢の方にも使いやすい。バイオシミラーあり。

アダリムマブ


皮下注

欧米でもっとも使われているTNF阻害薬。乾癬、炎症性腸疾患、ぶどう膜炎、壊疽性膿皮症、化膿性汗腺炎など、適応疾患がとても多い。バイオシミラーあり。

ゴリムマブ


皮下注

皮下注のなかでは投与間隔が最も長く、自己注射ができない方も月1回の通院で病院で投与できる。

セルトリズマブ ペゴル


皮下注

PEG化抗体という特殊な構造で、胎盤をほとんど通らないとされ、妊娠を希望する方に使いやすい。

オゾラリズマブ


皮下注

2022年登場。ナノボディという小さな構造の抗体。評価が定まるのはこれからだが、期待が大きい。

3IL-6阻害薬

IL-6(インターロイキン6)は、大阪大学の岸本忠三博士と平野俊夫博士によって発見された炎症性サイトカインです。B細胞・T細胞を活性化させたり、肝臓に働いてCRPをつくらせたり、破骨細胞を増やして骨を溶かしたりと、関節リウマチの関節炎に深く関わっています。

IL-6の受容体をブロックする抗体がIL-6阻害薬で、関節リウマチに使えるのは2種類です。


一般名

特徴

トシリズマブ


点滴皮下注

日本で開発された抗体製剤。関節リウマチのほか、高安動脈炎、巨細胞性動脈炎、成人発症スティル病などにも使われる。

サリルマブ


皮下注

血中濃度が早く安定するのが特徴。減量も可能。



IL-6阻害薬を使っている方は、CRPが上がりにくくなります

CRPはIL-6の働きでつくられるため、感染症にかかってもCRPが上がりにくいのです。「CRPが陰性だから大丈夫」とは判断できません。発熱、咳、だるさなど症状の変化に注意し、早めにご相談ください。(血液検査の回でもご紹介しました)

4T細胞阻害薬

第1章で、獲得免疫は樹状細胞がT細胞に抗原を提示することでスイッチが入る、とご紹介しました。実はこれは簡略化した説明で、抗原提示だけではT細胞は活性化しません。樹状細胞のCD80/CD86という分子が、T細胞のCD28と結合する共刺激というもうひとつの合図が同時に入って、はじめて活性化するのです。

食事にたとえると…
食事にたとえると…

料理の見た目がおいしそう(抗原提示)で、しかも良い香り(共刺激)がすると、食欲がわきます。でも嫌な香りがしたら、食欲はなくなってしまいますね。共刺激がないと、T細胞も「食欲」がなくなってしまうのです。

T細胞阻害薬はCD80/CD86に結合して共刺激をブロックし、T細胞の活性化を止めます。現時点ではアバタセプトの1種類のみで、関節リウマチだけに使われています。

5生物学的製剤 Q&A
5生物学的製剤 Q&A

Q. たくさんあるけど、効き目に違いはあるの?

基本的に、どれも効果は同等と考えられています。リウマトイド因子や抗CCP抗体の値によって特定の薬がより効く可能性も示されていますが、実際の治療を変えるほどの差ではありません。

Q. 使っている間に、ワクチンを打っても大丈夫?

不活化ワクチンは問題ありません。とくにインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンは、関節リウマチの方での有用性が示されており、接種が推奨されます。一方、生ワクチンは禁忌です。大人が生ワクチンを打つ機会は多くありませんが、妊娠中に生物学的製剤を使っていた場合、生まれた赤ちゃんの生ワクチン接種(ロタウイルス、BCG)が制限されることがあるため注意が必要です。

Q. いつか、やめられるの?

寛解すればやめられる可能性はありますが、これまでの報告では、半分以上の方がやめた後に悪化しています。安全にやめる方法は、まだ研究の途中です。自己判断でやめず、主治医と相談しましょう。

今回のまとめ

  • 生物学的製剤は、従来型の薬で効果が不十分なときのリウマチ治療の「頼れる切り札」

  • 高価で感染症リスクも高いため、できる限りリウマチ専門医に紹介・相談する

  • TNF阻害薬(6種類)・IL-6阻害薬(2種類)・T細胞阻害薬(1種類)の3グループ

  • IL-6阻害薬の使用中はCRPが上がりにくい。不活化ワクチンはOK、生ワクチンは禁忌

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※本記事は一般的な医学情報をわかりやすくお伝えするために内容を簡略化しています。薬剤の特徴は出典書籍の記載(著者の見解を含む)を要約したもので、薬剤数や承認状況はその後変わっている可能性があります。用量・用法は記載していません。必ず主治医にご相談ください。


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