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リウマチを科学する16 抗核抗体とは「陽性です」と言われても、すぐ膠原病とは限りません

1 日前
読了時間: 4分

抗核抗体とは「陽性です」と言われても、すぐ膠原病とは限りません

健康診断や人間ドックで「抗核抗体が陽性でした」と書かれ、不安になって受診される方は少なくありません。実は抗核抗体は、まったく健康な方でもある割合で陽性になる検査です。この記事では、抗核抗体がそもそも何を見ている検査なのか、陽性という結果をどう受け止めればよいのかを整理します。

#抗核抗体#自己抗体#膠原病#検査の考え方#Hep-2細胞#希釈倍率#偽陽性#健診で陽性#SLE#全身性強皮症#混合性結合組織病#シェーグレン病

1|そもそも「自己抗体」とは

抗体は本来、体の外から入ってきた異物にくっついて、私たちを感染から守ってくれる味方です。たとえば新型コロナウイルスに感染すると、ウイルス表面のS(スパイク)蛋白にくっつく抗体ができます。「何にくっつくか」がそのまま名前になるので、これは抗S蛋白抗体と呼ばれます。

ところが免疫のはたらきに乱れが生じると、外敵ではなく自分自身の体の成分にくっついてしまう抗体ができることがあります。これが自己抗体です。

ですから「抗核抗体陽性」という結果が意味しているのは、核の中の“何か”に反応する抗体が検出されたということだけです。さらに詳しく調べれば、それは二本鎖DNA(dsDNA)に反応する抗dsDNA抗体かもしれませんし、核内の別の蛋白質に反応する抗体かもしれません。名前の段階では、そこまでは分かりません。
ですから「抗核抗体陽性」という結果が意味しているのは、核の中の“何か”に反応する抗体が検出されたということだけです。さらに詳しく調べれば、それは二本鎖DNA(dsDNA)に反応する抗dsDNA抗体かもしれませんし、核内の別の蛋白質に反応する抗体かもしれません。名前の段階では、そこまでは分かりません。
2|どうやって測っているのか
2|どうやって測っているのか

検査室では、核が大きくて観察しやすいHep-2細胞という培養細胞に患者さんの血清をふりかけ、血清中の抗体を核に結合させます。そのうえで抗体を蛍光で光らせ、顕微鏡で核が光るかどうかを確かめます。

さらに血清を40倍、80倍、160倍…と段階的に薄めていき、最後まで陽性だった希釈倍率が結果として報告されます。薄めても光るということは、それだけ抗体の量が多いという意味になります。同時に、核の光り方のパターンが染色型として報告されます。

3|健康な人でも陽性になります
3|健康な人でも陽性になります

ここが最も大切なポイントです。抗核抗体は、病気のない健康な方でも一定の割合で陽性になります。40倍という低い倍率であれば、およそ5人に1人前後が陽性です。病気ではないのに陽性になるのですから、これは偽陽性ということになります。

健常者での抗核抗体陽性率



健常者での抗核抗体陽性率

希釈倍率

陽性となる割合

40倍

約20〜30%

80倍

約10%

160倍

約5%

320倍

約3%

倍率が上がるほど「健康な人では起こりにくい現象」になるため、意味を持ちやすくなります。逆に40倍・80倍の陽性は、症状がなければその多くが偽陽性です。

4|抗核抗体が「決め手」になる病気は、実は限られる

抗核抗体が診断に直結する膠原病は、次の3つだけです。これらの病気では、ほぼすべての患者さんで抗核抗体が陽性になります。

また、厳密には膠原病の分類には入りませんが、自己免疫性肝炎でもほぼ100%陽性になります。肝機能障害の原因を探るときにも手がかりになる検査です。
また、厳密には膠原病の分類には入りませんが、自己免疫性肝炎でもほぼ100%陽性になります。肝機能障害の原因を探るときにも手がかりになる検査です。

診断の「参考になる」病気

次の3つでは、陽性のこともあれば陰性のこともあります。陰性だからといって否定はできません。

抗核抗体が陽性となる主な疾患
抗核抗体が陽性となる主な疾患

抗核抗体が陽性となる主な疾患

疾患

陽性率

全身性エリテマトーデス(SLE)

99〜100%

混合性結合組織病(MCTD)

100%

自己免疫性肝炎

100%

全身性強皮症

95%

シェーグレン病(原発性)

40〜80%

多発性筋炎・皮膚筋炎

40〜80%

抗リン脂質抗体症候群(原発性)

40〜50%

5|膠原病のスクリーニング検査ではありません

裏を返すと、上に挙げた以外の病気では抗核抗体はほとんど役に立ちません。代表的なのが次の疾患です。

関節リウマチ血管炎成人発症スティル病

これらの診断に抗核抗体は使えません。つまり、抗核抗体を1本測れば膠原病かどうか分かる、という検査ではないのです。「念のため抗核抗体を」という発想では、拾えない病気があり、逆に拾わなくてよい偽陽性を拾ってしまいます。

症状がないのに測ると、ほとんどが偽陽性になります

人間ドックや健康診断で抗核抗体が測定されていることがありますが、もともと症状のない方に対する検査ですから、陽性と出てもその大半は偽陽性です。検査は「疑う理由があるとき」に意味を持ちます。

6|見落としてはいけない、もうひとつの可能性

抗核抗体は膠原病以外でも陽性になることがあります。特に注意が必要なのは次の2つです。

「膠原病だと思って治療を始めたら、実は悪性腫瘍や感染症だった」という事態を避けるため、診断の過程ではこれらを丁寧に除外していきます(この考え方は第2章「診断の4ステップ・鑑別」でも取り上げました)。
「膠原病だと思って治療を始めたら、実は悪性腫瘍や感染症だった」という事態を避けるため、診断の過程ではこれらを丁寧に除外していきます(この考え方は第2章「診断の4ステップ・鑑別」でも取り上げました)。

7|まとめ

健診で「抗核抗体陽性」と言われた方へ

・抗核抗体は、健康な方でも40倍で約20〜30%、80倍で約10%が陽性になります。・関節の腫れや痛み、レイノー現象、原因不明の発熱や皮疹などの症状がなければ、陽性であっても膠原病である可能性は高くありません。・ただし「気にしなくてよい」と自己判断はせず、気になる症状があるかどうかを含めて、一度かかりつけ医にご相談ください。

検査の値そのものよりも、症状があるかどうかが判断の出発点になります。数字だけが独り歩きしないよう、今回の記事がその整理の助けになれば幸いです。


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