パーキンソン病を科学する25③~【2020年データから読み解く】パーキンソン病治療薬の開発パイプライン ―「根本治療」への道のりは、いかに険しいか?
- 賢一 内田
- 3 時間前
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―「根本治療」への道のりは、いかに険しいか?
■ パーキンソン病の治療薬開発は今どこにいるのか?
近年、パーキンソン病の治療はL-DOPAを中心とした対症療法に加え、「病気の進行そのものを抑える治療(疾患修飾療法:Disease Modifying Therapies)」への期待が高まっています。
では、現在どれほどの治療薬が開発されているのでしょうか?
■ 臨床試験中の薬剤数は「145件」
2020年1月時点で、世界中で進行中の臨床試験は145件(Phase 1~3)と報告されています(J Parkinson’s Dis. 2020;10(3):757-774)。
フェーズ | 疾患修飾薬 | 対症薬 | 合計 |
Phase 1 | 24件 | 27件 | 51件 |
Phase 2 | 30件 | 36件 | 66件 |
Phase 3 | 3件 | 25件 | 28件 |
合計 | 57件 | 88件 | 145件 |
このデータから見えてくるのは、疾患修飾療法が最終段階(Phase 3)まで進むのは非常に困難であるという現実です。
■ なぜ疾患修飾薬は難しいのか?
疾患修飾療法では、
αシヌクレイン凝集の抑制
ミトコンドリア保護
神経栄養因子の導入
炎症・免疫機構の制御
といった“病気の根本”にアプローチする必要があります。しかし、これらは神経変性の進行を止める、あるいは遅らせるという高いハードルを伴います。
また、Phase 3では多数の患者に投与して安全性・有効性を証明する必要があるため、時間・費用・設計面で大きな挑戦が求められます。
■ 一方、対症療法の研究は依然として活発
ドパミン作動薬やMAO-B阻害薬など、既存治療の改善を目指す**対症療法(Symptomatic Therapies)**は、依然として多数開発されています。
ウェアリングオフ現象の改善
非運動症状(便秘・睡眠障害・幻覚など)への対応
新規投与経路(経皮パッチ・持続皮下注など)の開発
といった、患者のQOLに直結する領域が中心です。
■ まとめ:希望はあるが、道は長い
疾患修飾療法の登場は、「パーキンソン病は治せない病気」からの転換を意味します。現時点では、対症療法の改善とともに、進行抑制・根本治療への布石が少しずつ築かれている段階です。
「希望は現実の積み重ねの先にある」パーキンソン病と向き合う医療者・研究者・患者の皆様に敬意を込めて。
📚 出典J Parkinson’s Dis. 2020;10(3):757-774ClinicalTrials.gov

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