頭痛を科学する1~片頭痛の診断をやさしく解説
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Prologue
頭痛診療にかかわる医師は、片頭痛の診断に熟達してほしい。「片頭痛の診断は易しいよ、血管性頭痛だから頭がズキズキする頭痛、緊張型頭痛は筋肉の緊張だから肩こり頭痛」という簡単な図式では、片頭痛の8割を見逃してしまう。
これだけ医学が進んだ今でも、片頭痛の診断は「問診がすべて」である。つまり診断の決定的マーカーがなく、国際頭痛分類第3版(ICHD-3)による診断基準に基づいて診断するしかない。Virtualな疾患である片頭痛を的確に診断するには、それなりのskillを必要とする。
片頭痛とは
片頭痛の疾患概念
「片頭痛」と言っても4割は両側性であり、片頭痛という病名からして誤解を招きやすいものです。
そもそも片頭痛の認識は、Galenus(130-201?)のhemicraniaから始まりました。それが次のように変遷しています。
hemicrania⇒emicrania⇒micrania⇒migraine
「偏頭痛」ではなく「片頭痛」
そのためか、医学用語集第一版(昭和18年)ではmigraineを「偏頭痛」でなく「片頭痛」と翻訳しています。
片頭痛はもともと脳の過興奮性という遺伝的素因があって、身体的・心理的・物理的トリガーにより、脳のホメオスタシスが崩壊し、脳の感受性が高まって発症します。
片頭痛は単なる「血管性頭痛」ではなく、brain storm である
頭痛だけではなく、閃輝暗点や自律神経・感覚・行動の異常を伴う
片頭痛の発生機序
三叉神経血管説
現在の片頭痛の病態認識のキモは、次のように整理できます。三叉神経終末から硬膜動脈に神経ペプチド〔CGRPなど〕が放出され、血管の拡張と炎症が起こることによって起こる発作的頭痛と理解されています。
片頭痛の発生機序(模式的な流れ)
片頭痛センター(②)とは視床下部、中脳水道周辺などに想定されているgenerator、痛み物質(④)とは今は神経ペプチドであるCGRPと考えられている。
1トリガー
身体的・心理的・物理的な誘因が加わる
▼
2片頭痛センター
視床下部・中脳水道周辺などに想定されているgeneratorが活性化
▼
3三叉神経
三叉神経が刺激される
▼
4痛み物質放出
三叉神経終末から硬膜動脈へCGRPなどの神経ペプチドが放出される
▼
5血管の拡張と炎症
発作的頭痛が生じる
Point
三叉神経血管説とは
三叉神経終末から硬膜動脈に神経ペプチド(CGRPなど)が放出
↓
血管の拡張と炎症
↓
発作的頭痛(片頭痛)が発生
片頭痛の診断はなぜ難しい?
片頭痛は仮面舞踏会のダンサーである
誰もその素顔を見たものはいない
片頭痛に見えて、くも膜下出血や副鼻腔炎などの二次性頭痛が隠されていることがあります。また、同じ片頭痛であってもさまざまな表現形をとり、次の3つの軸で大きく異なります。

片頭痛にはライフサイクルがあり、年代によって表現形が変化していきます。

診断が難しい理由のまとめ
決定的な検査マーカーがなく問診に依存すること、二次性頭痛が隠れうること、そして同じ患者でも時期によって「顔」が変わること——これらが重なって、片頭痛の診断を難しくしています。
在宅・プライマリケアの視点から
「肩こりがひどいから緊張型頭痛でしょう」と説明され、長年鎮痛薬だけで過ごしてきた方は少なくありません。両側性でも、拍動性でなくても、片頭痛の可能性は十分にあります。特に高齢の方では、若い頃の激しい頭痛が緊張型頭痛様に変化していることもあり、「昔はどんな頭痛でしたか」と過去にさかのぼって聞くことが診断の手がかりになります。また、突然発症・増悪傾向・神経症状を伴う頭痛では、まず二次性頭痛の除外を優先してください。
まとめ
「ズキズキ=片頭痛、肩こり=緊張型頭痛」という単純な図式では、片頭痛の8割を見逃します
片頭痛の診断は「問診がすべて」。決定的マーカーはなく、ICHD-3の診断基準に基づいて診断します
「片頭痛」といっても4割は両側性で、病名自体が誤解を招きやすいものです
発生機序は、①トリガー→②片頭痛センター→③三叉神経→④CGRPなど痛み物質の放出→⑤血管の拡張と炎症(三叉神経血管説)
片頭痛は単なる血管性頭痛ではなくbrain stormであり、閃輝暗点や自律神経・感覚・行動の異常を伴います
患者間・発作間・年代間で表現形が変わり、若年期の周期性嘔吐症から30歳前後の最盛期、40歳ごろの緊張型頭痛様への移行というライフサイクルがあります
本記事は医療職向けの一般的な情報提供を目的としたものです。実際の診断は国際頭痛分類(ICHD-3)に基づき、二次性頭痛の除外を含めて個別に行われる必要があります。頭痛でお困りの方は、頭痛専門医・神経内科医にご相談ください。


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