認知症は治せるか~認知症治療の羅針盤53~自閉スペクトラム症Autism Spectrum Disorder(ASD)
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症例提示(CASE)
現病歴・生育歴(家族主導での受診)
患者背景
60歳代の男性。家族とのコミュニケーションがとれないことや、家族に批判されると怒鳴るなど度を超えた怒りを発することが多く、一方で家族外の人物の言いなりになって金品を渡してしまうなどを主訴に家族主導で受診した。
幼少期から現在までの一貫したASD像

初診時現症
整容礼節は保たれていた。神経学的所見には異常なし。自発的な発語は少なく、質問に対しては9割方同行した家族が答えるが、終始診察には協力的だった。MMSE:30/30点。
診断のポイントと鑑別
家族に対する共感の欠如・無関心・想像力の欠如・顕著な易怒性・洞察力の欠如・予測に基づく行動の困難・こだわりの強さなどが現時点で顕著にみられた。これらは前頭側頭葉変性症の症状とも考えられる。

血液検査・頭部MRI
血液検査や頭部MRIで特記すべき異常なし。
WAIS-IV(ウェクスラー式成人知能検査)の結果
WAISは発達障害の診断のために開発された検査ではないが、本人の病歴や困りごとの背後にある認知特性を評価し、症状を理解するための一助とすることが目的。


進行性の認知機能の低下を示唆するような症状はなく、診断の妥当性を支持する結果であった。
Discussion:ASDのDSM-5診断基準と本症例
DSM-5 自閉スペクトラム症の診断基準(本症例はA1,2,3 および B2,4,C,Dを満たす)



bvFTD・意味性認知症(SD)とASDの類似性
bvFTDやSDの臨床的な特徴がASDに似ていると指摘されることがある。Kippsらは、FTDの患者において「心の理論(theory of mind)」課題ができないことや、共感の欠如・抑制の失敗・感情反応の変化・無関心・洞察力の欠如などを挙げ、これらの変化は前頭葉眼窩面と内側前頭皮質の機能障害に関連しているとしている。
Sakutaらは、SD患者はしばしば自己中心的で共感の喪失を示し、ASDの核となる特徴である相互社会的コミュニケーションと社会的相互作用の障害に相当するとしている。また、SD患者はしばしば反復的で執拗な行動を示し、特定のルーティーンや習慣に固執することもASDにおける柔軟性の欠如や変化への抵抗と類似している、としている。
ASD vs bvFTD / 意味性認知症 比較
比較項目 | ASD | bvFTD / 意味性認知症 |
発症時期 | 幼少期から(発達早期) | 成人後(多くは50〜60代) |
症状の経過 | 進行しない(定常的) | 進行性(悪化する) |
MMSE/認知機能 | 正常範囲 | 低下してくる |
共感の欠如 | 生来的に乏しい | 後天的に失われていく |
こだわり・固執 | 幼少期からある | 発症後に出現する |
社会性の問題 | 生来的(学童期から) | 発症後に変化 |
感覚過敏 | しばしばある | 通常みられない |
bvFTDフェノコピー症候群 | ASD合併の可能性あり | 神経変性疾患でない例が存在 |

成人の発達障害の評価
診断のための評価法
成人で発達障害が疑われる場合、診断のためには幼児期の行動を回顧的に評価することが重要である。初診時には可能な限り、養育者の同伴を求めるのが通例である。幼少時のエピソードや通知表の記載事項が診断の手がかりとなることが多い。







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