top of page

認知症は治せるか~認知症治療の羅針盤52~注意欠如・多動症Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder(ADHD)

  • 6月17日
  • 読了時間: 4分
🧠 Dementia Mimics🔵 ADHD🔵 不注意優勢型ADHD🧬 神経発達症(発達障害)📋 CARRS評価スケール🧪 PASAT(作業記憶検査)👨‍👩‍👧 遺伝率75%・家族歴重要💊 アトモキセチン💊 メチルフェニデート🔍 認知症との鑑別:幼少期からの症状の有無♀ 女性の不注意優勢型:診断が遅れやすい
🧠 Dementia Mimics🔵 ADHD🔵 不注意優勢型ADHD🧬 神経発達症(発達障害)📋 CARRS評価スケール🧪 PASAT(作業記憶検査)👨‍👩‍👧 遺伝率75%・家族歴重要💊 アトモキセチン💊 メチルフェニデート🔍 認知症との鑑別:幼少期からの症状の有無♀ 女性の不注意優勢型:診断が遅れやすい

 

症例提示(CASE)

現病歴

患者背景

40歳代後半の女性。職場での仕事のミスが多くなったため、本人が認知症ではないかと心配して認知症外来に受診した。具体的なミスは、入力ミス・値段の記載間違い・個数間違い・メールの宛先誤送信など。同じ会社で比較的単純な事務職をしていた時期はミスをしても周囲がカバーできていたが、半年前に部署移動となり、複数の仕事を同時に行う作業が増えてからミスが多くなったという。

幼少期からの病歴を聞くと、家庭内の日常生活や学校においてもミス・物の置き忘れ・忘れ物が多く、部屋の片づけが苦手だったという。冷蔵庫を開けても何を取り出すかを忘れてしまったり、人から声をかけられた際に持っていたものを落としたり、うっかりフライパンを触って熱傷になったり、暖房器具で低温やけどをしたりすることもよくあった。大人になってからも車でガードレールにぶつかったり、壁などにこすったりすることが多かった。

これらのミスや物忘れに対して、メモ用紙を冷蔵庫の取っ手やドアノブに張る・大事な書類をダイニングテーブルの上など常に見える場所に置く・スマートフォンのアラーム機能を用いるなどの自己対処をしていた。多動や衝動性は顕著ではなく、友人関係も良好だった。

既往歴・家族歴

父と長男が注意欠如・多動症(ADHD)の既往があった。

初診時現症

意識は清明。神経学的所見には異常を認めなかった。診察には協力的であり、人とのコミュニケーションや共感能力には特に問題は認められなかった。MMSE:30/30点(認知機能スクリーニングは正常範囲)。

 

診断のポイントと鑑別

幼少期からミスや物忘れが多かったこと、片づけが苦手であったこと、仕事量が増えてからミスが多くなったこと、さらには家族歴から、ADHDが鑑別に挙がった

神経心理学的検査所見
神経心理学的検査所見

CARRS(Conner's Adult ADHD Rating Scales)

PASAT(Paced Auditory Serial Addition Test):作業記憶の詳細評価
PASAT(Paced Auditory Serial Addition Test):作業記憶の詳細評価
その後の経過
その後の経過

診断直後

職場は退職を余儀なくされ、障害者雇用枠での比較的単純な就労に変更した。

薬物療法開始

選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬であるアトモキセチン 40 mgの内服を開始した。若干ではあるもののメモを取らなくても覚えていられるようになり、傘の置き忘れなどが減ったという。

その後8年間

症状は変化なく経過している。症状の進行がないこと(認知症との重要な相違点)も確認できた。

 

Discussion:ADHDとは

定義と疫学

ADHDは不注意・多動・衝動性の症状がみられ、これらの症状によって家庭内や社会での機能が低下する神経発達症(発達障害)である。発達障害の中では最も高い有病率があり、学童期には約5%くらいの有病率をもつことが知られている。

成人となっても多動は比較的目立たなくなるものの不注意と衝動性の症状が持ち越されることが多く、成人においても2.5〜5%の有病率をもつといわれている。

男女比は2:1程度とされてきたが最近では少なくなってきている。男性では多動や衝動性による問題行動が目立つために診断されやすく、女性は本症例のように不注意優勢型が多いために子供時代には目立った問題にならずに診断に至らなかった可能性が挙げられる。

ADHDの3つの下位分類

成人ADHDの主な症状
成人ADHDの主な症状
遺伝・病因
遺伝・病因

ADHDは他の精神疾患と同様に遺伝の要因が強い疾患であり、遺伝率は約75%であるといわれている。したがって診断には家族歴が参考になる。一方で25%の環境要因は、超低出生体重児、胎生期のニコチン、アルコール、ストレスへの曝露、鉛などの環境汚染物質などが挙げられているが、どれも明らかな原因としては確定されていない。

診断と認知症との鑑別

比較項目

ADHD

認知症

発症時期

幼少期から

成人後に発症

症状の進行

進行しない(定常的)

進行性

MMSE/HDS-R

正常範囲

低下することが多い

記憶障害

再認は良好(符号化の問題)

再認も低下する

作業記憶

高負荷条件で低下

全般的に低下

家族歴

ADHDの家族歴あり(遺伝率75%)

Alzheimerの家族歴

対人関係

比較的良好

変化することがある

画像/バイオマーカー

診断に役立つものなし

ADバイオマーカーなど

治療反応

アトモキセチン・メチルフェニデートに反応

コリンエステラーゼ阻害薬など


コメント


© 2021 湘南在宅研究所 All Rights Reserved.

情報通信機器を用いた診療の初診において向精神薬を処方しておりません

bottom of page