top of page

認知症は治せるか~認知症治療の羅針盤51~薬剤誘発性Drug-Induced Cognitive Impairment

  • 6月16日
  • 読了時間: 4分

💊 薬剤誘発性認知機能障害😴 ベンゾジアゼピン系薬剤🧠 Dementia Mimics⚠️ 抗コリン作用薬📋 bvFTDとの鑑別🔮 DLB前駆段階📈 MMSE改善 25→30点🌙 Night Eating Syndrome✅ 薬剤漸減で改善🖼️ ドパミントランスポーターシンチ⚡ 脳波異常(高振幅速波)🔄 離脱症状リスク

 

症例提示(CASE)

現病歴

患者背景

70歳前半の右利き男性。現役の会社社長。1年前から職場で同僚に同じことを何度も聞くようになった。半年前から不眠悪化・食事摂取量減少・意欲低下で出勤しなくなった。家族に言われたことや自分が言ったことを頻繁に忘れるようになり、4カ月前から妻が内服薬を管理するようになった。その後夜間に冷蔵庫や戸棚にある食べ物を探して口にするようになり(night eating)、体重が急増。

初診時現症と神経心理学的検査
初診時現症と神経心理学的検査

意識清明。自分から話すことが全くなく、質問に短く答えるのみ。神経学的診察では応答の小声の傾向があったが、大きく声を出すように指示すると十分に大きな声が出せた。明らかな異常所見なし。

全般性注意障害と近時記憶の再生障害(再認は良好)に加えて、概念化・語想起・反応抑制能力の低下といった前頭葉関連機能もしくは遂行機能の障害を疑われる所見が認められた。言語機能(呼称・復唱・理解・書字・読字)に明らかな障害なし。視空間認知障害・失行も認められなかった。

診断のポイントと鑑別
診断のポイントと鑑別

主な鑑別疾患:bvFTD

アパシーと全般性注意障害を主とした認知機能障害が緩徐に進行しており、食行動の異常も認められたことから、行動障害型前頭側頭型認知症(bvFTD)が鑑別に挙がる。

施行した検査
施行した検査
血液検査(血糖・ビタミンB₁B₁₂・葉酸・アンモニア・肝腎甲状腺機能・梅毒・膠原病関連)・髄液検査:異常所見なし。
血液検査(血糖・ビタミンB₁B₁₂・葉酸・アンモニア・肝腎甲状腺機能・梅毒・膠原病関連)・髄液検査:異常所見なし。
その後の経過
その後の経過

初診2カ月後〜(半年かけて)

ブロマゼパム 10 mg/日から漸減→中止。徐々に会話での発語量が増え、ブロマゼパムが中止された頃には再び自分の会社に顔を出すようになった(業務を担当するようになったわけではない)。漸減中に食行動の異常や不眠の増悪は認められなかった。

初診7カ月後〜

クアゼパム 30 mg/日(長時間作用型)を中間時間作用型のフルニトラゼパム 2 mg/日に変更 → 不眠の増悪なく、会社へ顔を出すなど外出の頻度が増えた。

初診1年後〜

フルニトラゼパムを1 mg/日に減量しても不眠の増悪なし。

初診1年半後

MMSE総得点は30点(完全回復)、FAB総得点も17点まで改善。自発話における発語量と声量の異常は認められなくなり、会社の業務にも再び携わるようになった。前述の経過中にDLBの中核的特徴と思われる症状の出現は一切認められなかった。

Discussion:ベンゾジアゼピン系薬剤による認知機能障害・離脱症状・異常行動および脳波異常

作用機序と認知機能への影響

ベンゾジアゼピン系薬剤はγ-アミノ酪酸(GABA)の神経伝達の亢進に起因する催眠・鎮静作用のみならず抗コリン作用も有しており、認知機能障害の原因となる代表的薬剤の1つである。

作用時間別のリスク

作用時間分類

代表的薬剤

離脱症状リスク

認知機能障害リスク

超短時間〜短時間作用型

トリアゾラム、ブロチゾラムなど

▲高頻度かつ早期

中程度

中間〜長時間作用型

ブロマゼパム(中間)、クアゼパム(長時間)

▽比較的出現しにくい

▲有害事象の頻度が多い(認知機能障害リスク↑)

長期間内服すると身体依存が形成されやすく、減量や中止の際に離脱症状が出現する。本症例ではブロマゼパムとクアゼパムが超短時間〜短時間作用型ではなく中間〜長時間作用型であったため、漸減中の離脱症状の出現なく経過した。

Night Eating Syndromeとの関連

DLBの前駆段階としての可能性
DLBの前駆段階としての可能性

認知機能障害を誘発する薬剤(高齢者で特に注意)

高齢者における薬剤誘発性の認知機能障害やせん妄は抗コリン作用を有する薬剤の使用で出現することが非常に多い。以下のカテゴリが特に高齢者で頻繁に使用されるため注意が必要である。

 催眠・鎮静薬

ベンゾジアゼピン系薬剤全般(ブロマゼパム、クアゼパムなど)

 排尿障害治療薬(抗コリン作用あり)

フラボキサート、プロピペリン、オキシブチニン、ソリフェナシン、イミダフェナシンなど

 抗不整脈薬

ジソピラミド、シベンゾリン、プロパフェノンなど

 鎮痙・抗潰瘍薬

ブチルスコポラミン、アトロピン、ピペリドレートなど

🤧 アレルギー治療薬(H₁受容体拮抗薬)

d-クロルフェラミン、ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジンなど


コメント


© 2021 湘南在宅研究所 All Rights Reserved.

情報通信機器を用いた診療の初診において向精神薬を処方しておりません

bottom of page