攻めの栄養療法を科学する39~低栄養のタイプ別に考える栄養管理
- 賢一 内田
- 4 時間前
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― 「すべて同じ栄養介入」は危険である ―
低栄養と一言で言っても、背景となる病態はさまざまです。原因を見誤ると、適切な栄養管理どころか、かえって状態を悪化させることもあります。
ここでは、臨床で重要となる4つの低栄養タイプ別に、栄養管理の考え方を整理します。
① 慢性疾患で炎症を伴う低栄養(悪液質)
悪液質(cachexia)は、以下の3つのステージに分類されます。
前悪液質
悪液質
不応性悪液質
前悪液質で介入することが重要
不応性悪液質に進行すると、栄養不良は不可逆的となります。そのため、前悪液質の段階で栄養サポートを開始し、悪化を可能な限り遅らせることが重要です。
ただし、悪液質は栄養療法単独では改善が困難な病態であり、
疾患治療
炎症コントロール
リハビリ
症状緩和
など、多方面からの介入が必要です。
不応性悪液質では「ギアチェンジ」が必要
不応性悪液質に至った場合、それまでと同じ発想で栄養管理を続けることは適切ではありません。
ギアチェンジを行わずに栄養投与を続けると、生体の代謝能力を超えた負荷となり、かえって臨床症状を悪化させることがあります。
不応性悪液質では、
5~15 kcal/kg(現体重)/日
およそ 200~600 kcal/日
を目安とし、エネルギー投与は控えめにします。
② 急性疾患・外傷による高度炎症性低栄養(侵襲)
侵襲期では、多くのエネルギーを投与しても、筋たんぱく分解は抑制できません。
むしろ、**過剰な栄養投与は「栄養ストレス」**となり、骨格筋のたんぱく分解を助長する可能性があります。
異化期の目標は「悪化を防ぐ」
侵襲の異化期では、
栄養状態の改善を目指すのではなく
悪化を防ぐこと
を目標とし、原因疾患の治療を最優先します。
エネルギー投与量の目安
急性期極期:6~15 kcal/kg(現体重)/日
一般的急性期~侵襲慢性期移行:6~30 kcal/kg(現体重)/日
同化期に入ったら「攻め」に転じる
侵襲が落ち着き、同化期に移行した段階で、初めてエネルギー蓄積量を考慮した栄養管理を行います。
👉 「時期を見極める」ことが何より重要です。
③ 炎症が乏しい慢性疾患による低栄養
以下のような疾患が該当します。
脳卒中後の嚥下障害
短腸症候群
膵機能不全
肥満手術後の消化吸収不全
食道狭窄
腸管麻痺
結腸偽閉塞 など
これらは、
摂取量低下
吸収能低下
を来しやすい病態です。
吸収障害では「質」にも注意する
吸収障害が高度な場合、
必須脂肪酸欠乏
ビタミン欠乏
微量元素欠乏
など、多彩な栄養障害を来します。
そのため、
成分栄養療法
中心静脈栄養
を単独または組み合わせて使用し、必要栄養量の確保を最優先とします。
④ 飢餓による低栄養(飢餓)
不適切な栄養管理は、医原性に飢餓を引き起こすことがあります。
安易な
「とりあえず絶飲食」は、できる限り避けるべきです。
飢餓は「回復可能な低栄養」
飢餓による低栄養では、適切な栄養管理を行えば、体重・筋肉量は回復します。
エネルギー消費量分の補充
体重・筋肉量回復のためのエネルギー蓄積量
を考慮した栄養管理を行います。
リフィーディング症候群に注意
ただし、リフィーディング症候群のリスクがある場合には慎重な対応が必要です。
初期投与量:5~10 kcal/kg(現体重)/日を超えない
1週間以上かけて徐々に増量
電解質・全身状態を厳密にモニタリング
👉 「ゆっくり始める」ことが、安全な回復への近道です。
低栄養管理に共通する原則
低栄養の原因を見極める
フェーズ(異化期/同化期)を判断する
栄養量は仮説として設定する
モニタリングを行い、柔軟に修正する
低栄養管理に、万能な正解はありません。だからこそ、これまで述べてきたSMARTなゴール設定と仮説思考が重要となります。




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