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攻めの栄養療法を科学する⑥~【診療ガイドラインを“使いこなす”ということ】

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 7 日前
  • 読了時間: 3分

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――EBMとリハ栄養の実践から考える、臨床判断のあり方――

リハ栄養診療ガイドライン2018が発表されて以来、臨床現場では「どの患者に、どこまで介入すべきか?」という判断場面が増えています。

しかし、ガイドラインは そのまま自動的に当てはめれば良い“マニュアル”ではありません。重要なのは、「目の前の患者にどう適応するか」を考える医療者の姿勢です。

図にあるように、EBMの臨床決定には次の3つが重なり合います。

  • 研究エビデンス

  • 患者の価値観・行動

  • 医療者のスキル・経験

そしてこれらを包むのが、臨床の状態や環境です。

ガイドラインを活かす鍵は、この“重なり合い”にあります。

◆ 1. ガイドラインをそのまま当てはめてはいけない理由

信頼できる診療ガイドラインであっても、すべての患者に一律に適用できるわけではありません。

まず必要なのは、

  • 併存疾患

  • 社会的背景

  • 栄養状態

  • 家族の支援体制

  • リハの受けられる環境など、患者個人の状況を丁寧に把握すること。

そのうえでガイドラインに照らし、

  • この患者にとってエビデンスは妥当か

  • ガイドラインの推奨が“利益>不利益”となるか

  • 患者本人は何を望んでいるか

  • 医療者が提供可能なケアと現場の制約は何か

を総合的に判断します。

「推奨に合うから行う」「違うから行わない」ではなく、“適用の仕方”を考えることがEBMの本質です。

また迷う場面では、カンファレンスで共有し、多職種・同僚の意見を取り入れることも重要です。

◆ 2. 期待した結果が得られない場合の振り返り

ガイドラインに沿って介入したのに、思うような効果が得られない… ということは臨床ではしばしば起こります。

その時こそ、EBMの Step1〜4 を振り返るチャンスです。

  • Step1:問題設定は正しかったか

  • Step2:参照したエビデンスは妥当だったか

  • Step3:解釈に偏りはなかったか

  • Step4:患者個別の状況に合った適用ができたか

ここを丁寧に検証することで、自分の臨床判断のどこを補うべきかが見えるようになります。

特に重要なのは、「ガイドラインからどこを、どの理由でアレンジしたのか」を言語化すること。

これが次の患者対応に活き、医療チームとしての知識が蓄積される基盤となります。

◆ 3. ガイドラインは“未来の患者”のために進化する

ガイドラインは一度作って終わりではありません。リハ栄養診療ガイドライン2018も、現状は

  • エビデンスの数が少ない

  • 確実性が低い推奨が多い

という課題があります。

そのため、

  • 臨床現場での実践経験

  • 良質な研究の蓄積

  • 多職種からのフィードバック

が次回改訂(5年後)での質向上に不可欠です。

つまり、現場でのEBM実践の積み重ねこそが、未来の患者を救う材料になるということです。

◆ 4. まとめ:ガイドラインを“使いこなす医療者”とは?

ガイドラインは優れたツールですが、それを活かすのは 医療者の思考と対話です。

  • 患者の価値観を聞く

  • 家族と話し合う

  • 多職種と協働する

  • 医療者自身の判断理由を説明する

  • 期待通りでなくても改善点を見つける

この積み重ねこそが、EBMを実践するということ。

そしてリハ栄養の質を高める道そのものです。

リハ栄養診療ガイドラインは、より良い臨床を作るために「医療者と患者が共に使う地図」。その地図をどう読むかは、現場の私たち一人ひとりに委ねられています。

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