攻めの栄養療法を科学する⑧~【リハ栄養診療ガイドライン2018】
- 賢一 内田
- 12 分前
- 読了時間: 4分

成人がん・急性疾患の最新エビデンスと、EBMに基づくガイドラインの読み解き方
リハビリテーションと栄養療法は、どちらも患者さんのQOL(生活の質)や回復過程に強く影響します。「リハ栄養診療ガイドライン2018」では、主要4疾患(脳血管疾患/大腿骨近位部骨折/成人がん/急性疾患)について、患者個別の状態に応じた“強化型栄養療法”の有効性 が検討されています。
この記事では、特に質問の多い 成人がん・急性疾患領域 のポイントと、ガイドラインを読み解くための EBM(Evidence Based Medicine)の考え⽅ までを分かりやすくまとめました。
▼【成人がん】リハ+栄養指導のプログラムは行うべきか?
● CQ
不応性悪液質を除く成人がん患者に、リハビリと栄養指導を組み合わせたプログラムを行うべきか?
● 推奨(一定の推奨はしない/エビデンス非常に低い)
補助化学療法・放射線治療を受ける成人がん患者において、現時点では リハ+栄養指導プログラムを一律に推奨できるだけのエビデンスは不足 しています。
ただし――
患者・家族の意向
病状の進行度
ADL低下の程度
栄養状態(低栄養/悪液質の有無)
などを総合的に見て、個別判断で介入を行うことが望ましい とされています。
★ ポイント
がん患者では研究の脱落率が高く、運動療法が必ずしもQOL改善につながらない例もある。
しかし、患者・家族が栄養介入・リハビリを強く希望するケースも多く、エビデンスだけでは切り捨てない「価値観の尊重」 がガイドラインでも重視されています。
➡ がん領域では“個別化”が最重要。在宅医療・外来でも「何を優先したいか」を丁寧に確認し、慎重に可否判断を行うことが実臨床では必須です。
▼【急性疾患:acute illness】
強化型栄養サポートは行うべきか?
● CQ
リハを実施している急性疾患患者に、強化型栄養サポートを行うべきか?
● 推奨(弱い推奨・エビデンス非常に低い)
急性疾患(感染症・手術後・急性増悪など)では、代謝ストレスと栄養需要の増加 が同時に進むため、栄養不足が急速に進行します。
そのため、
リハビリに加え、
個別アセスメントに基づく栄養管理(ONS/経腸/静脈栄養の併用)
を推奨しています。
ただし、・自主的リハビリ・強化型リハプログラムの併用が望ましいとされ、栄養だけ切り離した介入は効果が弱い と考えられます。
➡ 急性期では “早期からリハ×栄養の一体運用” が鍵。
▼【EBM実践】ガイドラインはどう作られる?
ー「エビデンス=研究結果」ではない、総合判断のプロセスー
診療ガイドラインは、EBMの5ステップに沿って作成されます。
● EBMの5 step
疑問・問題の定式化
情報収集(文献検索)
批判的吟味(研究の質を評価)
患者への適用(臨床判断)
振り返り・改善
ガイドラインはこのうち Step 2・3 を代行する役割 を持ち、臨床現場(Step 4)をサポートします。
● ガイドライン作成の流れ
CQ(臨床上の問い)を設定する
国内外の論文を システマティックレビュー(SR) で収集
エビデンスの確実性を評価(GRADE)
患者・家族の価値観、費用、医療者の経験も加味
推奨文を作成
重要なのは、エビデンスの強弱だけで推奨は決まらない という点です。
★ 成人がんの例
研究では「脱落率が高い」「QOL低下の可能性がある」ため、当初は「リハ栄養介入は推奨しない」案が有力でした。
しかし、パネル会議で
患者家族の意向
治療を頑張りたいという価値観
在宅・病院での実臨床の声などが重視され、推奨文が修正されました。
➡ ガイドラインは“患者中心の医療”の価値観も反映して作られる。
▼【まとめ】
リハ栄養診療ガイドライン2018が示すメッセージは明確です。
栄養とリハは“セット”で考えるべき
がんや急性疾患では、画一的な答えではなく「個別判断」が重要
ガイドラインは“万能の答え”ではなく、臨床判断の支援ツール
患者・家族の意向を尊重するEBMが、今後ますます求められる
在宅医療・リハ栄養の現場でも、栄養状態の把握、早期介入、多職種連携 は欠かせません。
▼ 関連リンク
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