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在宅医療を科学する41~RS3PEとPMR:似て非なる2つの炎症疾患を見分けるポイント

  • 1 日前
  • 読了時間: 3分

はじめに

「手足がむくんでいる」「肩や腰がこわばって動かしにくい」——高齢者のこうした訴えの裏に、見逃してはならない炎症疾患が潜んでいることがあります。

今回は、似たような症状を持ちながらも本質的に異なる2つの疾患、RS3PE(緩解性血清陰性対称性滑膜炎・浮腫) と PMR(リウマチ性多発筋痛症) について解説します。

RS3PEとは?——手・足の"むくみ"が主役の滑膜炎

RS3PE(Remitting Seronegative Symmetrical Synovitis with Pitting Edema) は、その名の通り「浮腫を伴う血清陰性対称性滑膜炎」です。

主な特徴

  • 手・足背の著明な浮腫(むくみ) が最大の特徴

  • 手指・足趾の腱鞘滑膜炎を伴うことが多い

  • リウマトイド因子(RF)陰性

  • 高齢者(特に60歳以上)に好発

  • 比較的急速に発症することが多い

注意すべきポイント:悪性腫瘍の合併

RS3PEでは、悪性腫瘍(がん)の合併に特に注意が必要です。

RS3PEは腫瘍随伴症候群として発症することがあり、特に消化器がん・肺がん・血液腫瘍などとの関連が報告されています。RS3PEと診断された際は、必ず悪性腫瘍のスクリーニングを行うことが推奨されます。

PMRとは?——肩・腰の"こわばり"が主役の筋痛症

PMR(Polymyalgia Rheumatica:リウマチ性多発筋痛症) は、近位筋(肩・腰・股関節周囲)のこわばりと疼痛を主訴とする疾患です。

主な特徴

  • 肩・腰・股関節周囲の強いこわばりと痛み

  • 朝のこわばりが顕著(1時間以上続くことも)

  • 近位筋の筋力低下を伴う場合あり

  • 炎症反応(CRP・ESR)が著明に上昇

  • 50歳以上の高齢者に多く、女性にやや多い

  • 巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)との合併に注意

RS3PEとPMRの違いをまとめると

項目

RS3PE

PMR

主な症状

手・足の浮腫(むくみ)

肩・腰のこわばり

病態

滑膜炎

筋痛症

浮腫

あり(特徴的)

通常なし

近位筋症状

軽度

顕著

特に注意すること

悪性腫瘍の合併

巨細胞性動脈炎との合併

治療反応

ステロイドで改善

ステロイドで改善

鑑別のポイント:どう見分けるか?

浮腫があればRS3PE、近位筋症状が主体ならPMR

この一言が、両者を見分ける最大のヒントです。

  • 手背・足背のぴっている浮腫(pitting edema) が目立つ → RS3PEを疑う

  • 肩・腰のこわばりで着替えや寝返りがつらい → PMRを疑う

もちろん、両者は重複することもあり、最終的には画像検査(超音波・MRI)や血液検査、臨床経過を総合して判断します。

治療:両者ともステロイドが有効

RS3PEもPMRも、ステロイド(副腎皮質ホルモン)による治療で症状が劇的に改善することが多いです。

  • PMR:プレドニゾロン 10〜20mg/日から開始し、徐々に漸減

  • RS3PE:PMRより低用量(5〜10mg/日)でも奏効することがある

ただし、RS3PEでは悪性腫瘍が背景にある場合、腫瘍の治療なしには再燃することがあります。ステロイドへの反応が不良・不完全な場合は、改めて悪性疾患の検索を行うことが重要です。

まとめ

  • RS3PE → 手・足の"むくみ"が主役の滑膜炎。悪性腫瘍の合併に特に注意。

  • PMR → 肩・腰の"こわばり"が主役の筋痛症。

  • 両者はステロイドで改善するが、鑑別が重要。

  • 浮腫があればRS3PE、近位筋症状主体ならPMR と覚えておこう。

高齢者の原因不明の炎症・浮腫・こわばりを見たとき、ぜひこの2疾患を鑑別の候補に挙げてください。


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