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在宅医療における認知症について38~認知症の非薬物療法 ― 科学的にわかっていること、いないこと

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 1 日前
  • 読了時間: 2分

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認知症の行動・心理症状(BPSD)に対しては、薬に頼らず行える 非薬物療法 も数多く研究されています。ここでは、臨床研究の結果から「効果があるとされるもの」と「効果が乏しいもの」を整理してご紹介します。

効果があるとされる非薬物療法

1. 集団活動・音楽療法・五感刺激

ケアホームにおける研究では、

  • 集団活動

  • 音楽療法士による音楽療法

  • マッサージや光・音による刺激

これらの介入によって、少なくとも施設入所中は「焦燥(落ち着きのなさ)」が軽減することが示されています。

2. 職員教育(パーソンセンタードケア)

介護職員に対して「パーソンセンタードケア」やコミュニケーション技術を学んでもらうと、入所者の焦燥などBPSDが軽減するという報告があります。介護の質を高めることは、症状緩和に直結するのです。

効果が乏しいとされる非薬物療法

高照度光療法

日中に明るい光を浴びることで睡眠や行動の改善を期待する療法ですが、研究ではBPSDの改善効果は「ごくわずか」で、臨床的な意味は小さいと報告されています。

アロマセラピー

二重盲検比較試験では、プラセボとの差は示されず、焦燥への効果は科学的に確立していません。

介護者教育(在宅)

在宅のアルツハイマー病患者とその介護者を対象にした研究では、介護者教育による攻撃性や焦燥への有効性は証明されませんでした。

症状別にみる非薬物療法

幻覚・妄想

効果が証明された非薬物療法はありません。基本は「否定も肯定もせず、中立的に傾聴し安心感を与える」ことです。妄想の対象が家族である場合は、介護サービスを活用して距離を置く対応が必要です。

徘徊

徘徊は原因が多様です。

  • 夜と昼を勘違いして外出 → 迷子になる

  • 家に帰ろうとして近所で道に迷う

  • 家の中でトイレを探し回る

対応策としては、近隣への声かけ依頼、目立つ色の服、持ち物への連絡先記載、GPS機器の活用などがあります。また、前頭側頭型認知症によくみられる「周遊」は、同じ道を規則的に歩く習慣であり、危険がなければ必ずしも介入は必要ありません。

まとめ

  • 集団活動、音楽療法、五感刺激、介護職員教育はBPSD改善に一定の効果あり

  • 光療法やアロマは科学的根拠に乏しい

  • 幻覚・妄想は傾聴と安心感、徘徊は原因ごとの対策が重要

非薬物療法は「薬を使う前にできる工夫」として重要な選択肢です。

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