在宅医療における認知症について11~アルツハイマー病の診断とは~病理評価と症状の進行をめぐる理解~
- 賢一 内田
- 7月23日
- 読了時間: 3分

アルツハイマー病の主な症状と分類
アルツハイマー病は、記憶障害・見当識障害・言語障害などを主症状とする認知症のひとつです。ICD-10では発症年齢により以下のように分類されます:
早発性アルツハイマー病(65歳未満)いわゆる“若年性アルツハイマー病”に相当し、65歳未満でも介護保険の対象となります。
晩発性アルツハイマー病(65歳以上)
病理診断と正常加齢との境界
アルツハイマー病の確定診断は**病理所見(剖検脳)**によって行われます。特徴的な病変として、以下の2つが知られています。
老人斑(senile plaques)
神経原線維変化(neurofibrillary tangles)
ただし、これらの病変は正常な高齢者の脳にもある程度認められるため、「出現していれば即アルツハイマー病」とはいえません。ある“閾値”を超えると病的とされるという連続性が、がん病理のような明確な境界線とは異なります。
この曖昧さこそが、アルツハイマー病の診断をより難解にしている点です。
複数ある病理評価法とNIA-AAの提案
病理診断基準は一つではなく、以下のように複数の指標が存在します:
Khachaturian基準
CERAD基準
Braak分類
Thal分類
特にCERAD分類に関しては、実証的エビデンスが不足しており、再現性に乏しいとの批判もあります。
これを受けて、米国の専門家グループがまとめたのがNIA-AA(National Institute on Aging–Alzheimer's Association)病理評価ガイドラインです。
この評価法では、以下の3要素を点数化して統合的に評価します。
病理指標 | 評価方法 |
老人斑の広がり | Thal 分類(A) |
神経原線維変化の広がり | Braak 分類(B) |
神経突起を伴う老人斑の密度 | CERAD 分類(C) |
この3要素を組み合わせ、病理変化レベルを「なし・低度・中等度・高度」の4段階で評価します(下図参照)。
🔍 ポイント:中等度以上であっても、必ずしも認知症の原因とは限らず、あくまで“確からしさ”を示す確率的診断である点が重要です。
症状の進行とBPSD(行動・心理症状)
アルツハイマー病の症状は時間とともに変化し、中核症状(記憶障害など)→BPSD→身体症状へと段階的に進行する傾向があります。
BPSD(行動・心理症状)は一時的に目立ち、介護現場を混乱させることがありますが、やがて落ち着き、身体機能の低下が前面に出てきます。
安易な診断・治療に注意
近年では、「長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)で20点未満だからアルツハイマー型認知症」といった乱暴な診断が横行しているケースもあります。明確な病歴や画像所見、場合によってはバイオマーカー等を組み合わせた慎重な評価が必要です。
抗認知症薬は慎重に処方されるべきであり、不正確な診断が有害な投薬につながる可能性もあることを、臨床の現場では常に意識すべきです。📺 詳しくはYouTubeで解説中!▶ 内田賢一 - YouTubeチャンネル
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