在宅医療における認知症について②~認知症の診断は“除外診断”から始まる
- 賢一 内田
- 7月13日
- 読了時間: 3分

「最近、物忘れが増えたかも…」そんな時、気になるのが「認知症」の可能性ですよね。でも、実は認知症の診断はすぐには下されません。なぜなら、**認知症の診断は“除外診断”**から始まるからです。
■ 認知症の診断は2段階で行われる
診断は、まず2つのステップに分かれています。
▼ 第1段階:認知症“もどき”を除外する
「認知症っぽいけど、実は別の原因だった」──そんなことは少なくありません。たとえば以下のような状態です:
年齢相応の物忘れ
軽度認知障害(MCI)
うつ病やせん妄
てんかんやアルコールの影響
薬剤性の記憶障害 など
これらは治療可能なものも多く、真の認知症と間違えると誤診になってしまいます。
▼ 第2段階:真の認知症かを見極める
“もどき”が除外された場合、次は本格的な認知症(=認知症性疾患)の鑑別に進みます。
アルツハイマー病
血管性認知症
レビー小体型認知症
前頭側頭型認知症 など
📊(下図は日本神経学会の診断フローチャート)

■ 特に重要なのは「認知症もどき」の見極め
なぜここまで丁寧に“除外”するのか。それは、真の認知症は基本的に進行性で完治しないからです。一方、認知症もどきは治療や改善の可能性があり、見逃してはいけないのです。
■ 除外診断に必要な検査は?
病歴聴取(いつから? どんな物忘れ?)
認知機能テスト(MMSEやHDS-Rなど)
血液検査(甲状腺・ビタミンなど)
頭部画像(CT・MRI)
📝高価な検査機器や専門病院が必須というわけではなく、かかりつけ医でも対応可能です。
■ 正常な老化? それとも病的?

高齢者の物忘れはすべてが病気ではありません。
項目 | 正常 | 軽度認知障害 | 認知症 |
認知機能 | 年齢相応 | 少し低下 | 明らかに低下 |
日常生活 | 問題なし | 問題なし | 障害あり |
経過 | 進行しない | 必ずしも進行せず | 徐々に進行 |
このように、認知症=記憶力低下というわけではなく、日常生活への影響がポイントとなります。
■ 心理検査の役割(MMSE / HDS-R)
心理検査は、認知機能を数値化するツールです。
MMSE(Mini-Mental State Examination):30点満点、24点未満で認知症の疑い
HDS-R(長谷川式):30点満点、20点未満で認知症の可能性
📌 ただし、点数だけで判断せず、本人の様子や病歴と併せて評価することが重要です。
■ 認知機能の“進行”が判断材料になることも
ある研究によると、正常高齢者では1年で認知機能がほぼ変わらない一方、アルツハイマー病患者では平均して1年で約3点ずつMMSEスコアが低下するとの報告もあります。
つまり、「1年前と比べて明らかに悪くなっている」という病歴の変化が、診断の鍵になるのです。
■ まとめ:診断こそが最も重要な治療の第一歩
認知症診断はまず「もどき」を除外することが大切
誤診は人生を左右するほど重大な影響を及ぼす
正しい診断には、病歴・検査・観察すべてが重要
「忘れることが増えた」=即「認知症」ではありません。正しい評価と冷静な判断が、本人にも家族にも大きな安心につながります。📺 もっと知りたい方はこちら在宅医療・認知症ケア・呼吸器疾患の解説をYouTubeで配信中!▶ 内田賢一 - YouTubeチャンネル




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