top of page

在宅医療における認知症について⑥~認知症に見えるけど…実は別の原因?血液検査で見抜く“認知症もどき”

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 7月18日
  • 読了時間: 3分

「認知症かもしれない」と思って受診したけれど、よく調べてみると薬や内科疾患が原因だった——そんなケースが、実は少なくありません。

今回は、「認知症に似た症状を呈するが、実は別の原因であった」ケース、特に薬剤内科疾患に焦点を当ててご紹介します。

薬が原因の“認知症もどき”もある

高齢者では、薬の影響で「ふらつき」「転倒」「食欲低下」「失禁」など、いわゆる老年症候群が現れることがあります。中でも見落とされやすいのが、薬による認知機能低下です。

実際、認知障害が疑われた患者のうち約11%は薬剤が原因だったという報告もあります。

よくある原因薬:

  • 抗コリン薬(うつ・過活動膀胱・花粉症などに使われる)

  • ベンゾジアゼピン系(睡眠薬・抗不安薬)

  • 抗ヒスタミン薬(アレルギー薬)

  • 中枢神経抑制薬(抗てんかん薬・一部の抗精神病薬)

薬歴の見直しが第一歩です。不要な薬を見極めて中止するだけで、見違えるように改善することもあります。

内科疾患による“認知症もどき”

代謝異常や内分泌疾患、ビタミン欠乏症などの身体的な疾患によっても、記憶力の低下やぼんやり感などが出現します。こうした場合も、早期に見つければ治療で改善する可能性があります。

米国神経学会(AAN)は、認知症が疑われた際に行うべきルーチン血液検査項目を以下のように定めています(表6)。

表6:AANが推奨する認知症スクリーニング血液検査

  • 全血算(CBC)

  • 生化学(電解質、グルコース、尿素窒素、クレアチニン、肝機能)

  • 甲状腺機能(TSHなど)

  • ビタミンB₁₂

高齢者によくある原因疾患と特徴

● 甲状腺機能低下症

  • 精神活動・動作が緩慢になり、集中力低下や傾眠、記憶障害などが出現。

  • 年齢とともに頻度が上がり、高齢者ではまれではない

  • 治療により認知機能が改善する可能性も。

● ビタミンB₁₂欠乏

  • 錯乱、傾眠、無気力、妄想、記憶障害などが出現。

  • 貧血や胃切除の既往がなくても、高齢者の14.5%にB₁₂欠乏が見られたという報告あり。

  • 採血で確認し、早期補充で回復が期待できる

● 梅毒(進行麻痺)

  • 晩期顕症梅毒では、記憶障害や見当識障害が出ることも。

  • ただし北米では極めてまれであり、米国神経学会はルーチンスクリーニングを推奨していません

  • 疑わしい病歴がある場合に限り検査を検討。

まとめ:認知症=即診断ではなく、まず「除外診断」を

高齢者の「物忘れ」や「ぼんやり感」がすべて認知症とは限りません。**薬の副作用や内科疾患が背景にある“認知症もどき”**は、対応すれば大きく改善する可能性があります。

特に初診時には、

  • 薬歴の確認(不要薬の見直し)

  • 血液検査(甲状腺、ビタミンB₁₂含む)が極めて重要です。

「認知症」という言葉にとらわれすぎず、治療可能な原因がないかをまず確認することが、患者さんとご家族の安心にもつながります。📺 もっと知りたい方はこちら在宅医療・認知症ケア・呼吸器疾患の解説をYouTubeで配信中!▶ 内田賢一 - YouTubeチャンネル

🏷 ハッシュタグ

 
 
 

コメント


© 2021 湘南在宅研究所 All Rights Reserved.

情報通信機器を用いた診療の初診において向精神薬を処方しておりません

bottom of page