在宅医療における認知症について①~「認知症=病名」ではない?増え続けるアルツハイマー病、その背景を考える
- 賢一 内田
- 7月12日
- 読了時間: 3分

❗まず知っておきたいこと:
「認知症」は病名ではありません。
WHOの国際疾病分類(ICD-10)によれば、認知症とは以下のように定義されています:
「脳の疾患によって引き起こされる症候群(症状の集まり)であり、記憶・思考・見当識・理解・計算・学習・言語・判断などの高次脳機能が障害される状態」
つまり、「認知症」という言葉自体は“症状”のことであり、「病気の名前」ではありません。
その原因となる病気としては、アルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症など多数あります。
📈 アルツハイマー病だけが“異常に増えている”
下の図をご覧ください:
<small>▶ 図1:認知症性疾患患者数の年次推移(外来+入院)</small>

平成11年(1999年)頃を境に、アルツハイマー病の診断数が爆発的に増加しているのがわかります。一方、血管性や詳細不明の認知症はほぼ横ばい。つまり、アルツハイマー病だけが突出して増えているのです。
<small>▶ 図2:認知症性疾患に占めるアルツハイマー病の割合</small>

平成8年(1996年)には認知症患者のうち**約18%がアルツハイマー病でしたが、平成26年(2014年)にはなんと約79%**にまで増加しています。
💡 なぜアルツハイマー病だけがこんなに増えたのか?
高齢化の影響だけでは説明がつきません。
ひとつの仮説は、1999年(平成11年)に抗認知症薬が登場したことです。当時、適応はアルツハイマー病のみ。その結果、治療薬を処方するために「保険病名」としてアルツハイマー病を診断する流れが拡がった可能性があります。
つまり、「薬があるから診断される」という逆転現象が起きていたかもしれません。
🔎 POINTで振り返る
視点 | 内容 |
大前提 | 認知症は疾患名ではない |
事実 | アルツハイマー病だけが不自然に増加している |
推定 | 抗認知症薬の適用拡大と「保険病名としての使用」が背景にある可能性 |
対策 | 処方の前に「きちんと診断を」。物忘れ=即アルツハイマー病ではない |
⚠ 抗認知症薬の注意点
現在、抗認知症薬の効果が科学的に証明されているのは、アルツハイマー病とレビー小体型認知症だけです。それ以外の原因による認知症や、軽度認知障害(MCI)には効果が期待できず、副作用によってかえって悪化する例もあります。

✅ まとめ:診断がすべてのスタート
認知症は症候群であり、原因疾患の特定が何よりも重要。
「物忘れがある=すぐ薬」ではなく、「何による認知症か?」を診断することが先決。
そのうえで、薬物療法・ケア・生活支援を適切に選択していく必要があります。
📺 もっと知りたい方はこちら在宅医療・認知症ケア・呼吸器疾患の解説をYouTubeで配信中!▶ 内田賢一 - YouTubeチャンネル




コメント