認知症は治せるか~認知症治療の羅針盤32~若くして秃頭・腰痛・認知症が重なったら— CADASILの"劣性版"、CADASILを疑う
- 23 時間前
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患者は30歳代前半の男性。10歳代半ばから急性腰痛が出現し、同時期にびまん性秃頭が始まりました。21歳時に腰痛が急性増悪し、L4硬膜内腫瘤切除術(神経鞘腫疑い)を受けました。20歳代半ばに歩容異常・構音障害・四肢腱反射亢進が出現。30歳代初めにめまいや脱力などの脳卒中発作を繰り返し、大学病院神経内科に転医しました。
両親はいとこ婚。父に秃頭、母は60歳代後半で死亡(脳卒中)、3歳上の兄も同様の病状でした。血圧正常、糖尿病・脂質異常の既往なし。

CADASILとはどんな病気か
CADASILは「皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体劣性遺伝性脳動脈症」の略称です。CADASILの"劣性版"にあたり、責任遺伝子はHTRA1(10q25)です。HTRA1はセリンプロテアーゼの一種で、TGF-βシグナルの制御に関与しており、この変異により脳の細動脈に内膜肥厚などの血管病変が生じます。
本疾患概念は日本の臨床–遺伝学的研究によって世界に先駆けて確立されました。近親婚の家族歴、若年性秃頭・腰痛・脊椎疾患の組み合わせが診断の重要な手がかりとなります。

CADASILとHTRA1病(ヘテロ例)の比較
HTRA1遺伝子のヘテロ接合変異でも神経症状を呈する例が報告されており、「HTRA1関連脳小血管病(CADASIL2)」と呼ばれます。両者の臨床的違いを知っておくことが診療に役立ちます。

50歳代発症の認知障害にMRI白質病変がみられる場合は、HTRA1ヘテロ変異(HTRA1病)も念頭に置く必要があります。
在宅医療における関わり
本症例は初診の約6年後に臥床状態となり、経鼻胃管栄養に移行しながら在宅生活を続けました。意識は保たれながらも運動機能が失われていく経過の中で、Vサインや首振りによる意思表示、家族との関わりを大切にしたケアが行われました。
根治療法はなく、脳梗塞予防・血管危険因子管理・リハビリテーション・経管栄養管理・褥瘡予防が在宅チームの主な役割となります。常染色体劣性遺伝であるため、遺伝カウンセリングや家族全体への支援も欠かせません。

神奈川県逗子市 | 在宅医療・訪問診療




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