認知症は治せるか~認知症治療の羅針盤29~神経核内封入体病(NIID)— 診断・画像所見・皮膚生検・遺伝子検索 —
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CASE / 臨床症例
現病歴
70歳代の右利き、大学卒の男性。50歳代後半に他院の脳神経外科にて脳腫瘍摘出術(右小脳橋角部髄膜腫)を受け、以後同院でフォローされていた。7年程前より認知機能低下が疑われ、4年程前から歩行が緩徐になり、同じ話を繰り返すようになった。1人で外出して道に迷うこともあった。2年前より金銭管理を妻が行うようになり、1年前より易怒性がみられるようになった。前医からの頭部MRIでは拡散強調画像(DWI)で大脳白質のびまん性高信号を認めていた。
既往歴・生活歴
脳腫瘍摘出術(右小脳橋角部髄膜腫)・糖尿病・前立腺肥大症。喫煙20本/日を40年(脳腫瘍摘出後に禁煙)。飲酒ビール2本/日を40年。家族歴に特記事項なし。
初診時現症
意識清明、発話に異常なし。脳神経領域に異常なし。運動系では広基性歩行・体幹の動揺を認め、方向転換は拙劣だが動作緩慢はなし。手指の構成障害なし。

緩徐進行性の認知症に広基性の歩行障害を伴っていることから、鑑別疾患は多岐にわたる。特に大脳白質のびまん性DWI信号変化が鍵となる情報である。
認知症+運動障害の主な鑑別
正常圧水頭症
血管性認知症/パーキンソニズム
進行性核上性麻痺
歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)
Huntington病
アルコール多飲による栄養障害
大脳白質病変をきたす鑑別
Binswanger病などの血管性認知症
多発性硬化症
NMOSD・MOGAD
CADASIL
脆弱X関連振戦/失調症候群(FXTAS)
晩期発症型副腎白質ジストロフィー
神経核内封入体病(NIID)

検査所見 神経心理学的検査

FABの著明な低下はNIIDの特徴的所見として知られており、本症例でも目立った。記憶障害もみられ、約7年の経過で全般的に認知機能低下が進行した。 頭部MRI所見

脳血流SPECT
右前頭葉、両側頭頂葉から後頭葉で軽度の集積低下を認めた。
皮膚生検による診断確定


NIIDの病態と臨床像
NIIDは、HE染色でエオジン好性に染色される核内封入体が、中枢および末梢神経系の神経細胞・グリア細胞・シュワン細胞・一般臓器の細胞の核内に広く認められる神経変性疾患として考えられてきた。組織病理所見が診断の必須項目であるため、臨床診断は困難であり、報告例の多くは剖検による診断に基づいていた。
しかし2011年にSoneらが家族性NIID家系の検討から皮膚生検がNIIDの診断に有効であることを報告して以来、NIIDの臨床診断による報告が飛躍的に増加している。また、血管障害性の白質脳症と診断されていた症例に成人発症のNIIDが含まれている可能性が指摘されており、NIIDは高齢者では稀な疾患ではない可能性がある。
NIIDの3型分類


NIIDの診断手順



有効な治療法はなく対症療法が中心となる。予後は消化管障害など全身状態によると考えられる。認知機能低下の進行とともに、失調・膀胱障害・消化管機能不全・誤嚥などの管理が在宅医療・訪問診療の現場では重要となる。









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