神経障害性疼痛疼痛を科学する26~脳血管障害後の中枢痛(CPSP)— 病態・診断・最新治療まで —
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視床痛(thalamic pain)に代表される脳血管障害後の中枢痛(central post-stroke pain:CPSP)は、多くは脳血管障害の数ヵ月後に発症してくる慢性の疼痛です。病巣部位として、視床以外の脊髄視床路および視床から皮質への投射路の障害によっても同様の疼痛をきたすためCPSPと呼称されます。
1906年、Dejerine と Roussy が視床に起きた脳卒中により対側半身に激しな痛みをきたした8症例を視床症候群として報告し、これがCPSPの最初のまとまった報告とされています。1938年にRiddochが中枢痛の概念を提唱、その後Leijon・Boivie・Johanssonらによって脳血管障害後の中枢痛はCPSPとして定義・研究されてきました。
CPSP有病率と発症時期



CPSPの日常生活への影響とうつ・自殺との関連
CPSPはしばしば激越な疼痛となり、触れるだけで疼痛を生じるために患肢をかばい日常生活に多大な支障をきたしたり、安静を余儀なくされたりする場合があります。基本的なADLも低下させ、しばしば患者はうつ状態に陥り、自殺することすら珍しくありません。速やかなCPSPの診断・疼痛緩和療法・自殺対策を含めた心理社会的なサポートが重要です。
CPSP発症メカニズムについての3つの仮説


痛みの性状・部位・誘因・神経学的所見
痛みの性状(Bowsher 108例)

疼痛の分布
顔と半身が21%、顔を含まない半身が17%、同側二肢が22.5%、一肢のみが18%、顔のみ7%、顔と二肢8%。疼痛の範囲は感覚障害の範囲よりも小さいことが多いです。
疼痛の誘因(複数回答)

CPSP部位では感覚障害を随伴することが多く、温度覚障害80%・痛覚障害85%・触覚障害52%。温痛覚過敏症状がCPSPの症状形成に深く関与しています。特に寒冷刺激によるアロディニアはCPSPに特徴的な所見であり、病態の中核を形成します。アロディニアを惹起する刺激として触覚刺激52%・筋収縮運動22%・温度刺激19.5%が報告されています。
診断のポイント

CPSPの治療法の科学的エビデンスは驚くほど少なく、無作為化対照試験(RCT)はほとんどなく、あっても少数の患者を対象としたものにすぎません。完全に疼痛を除去することは困難なことが多いため、少しでも疼痛を軽減することを目標に治療を進めていくのが現実的です。
エビデンスレベルに基づいた治療ガイドライン



薬剤的な疼痛コントロールがつかない場合に、さまざまな部位を電気的・磁気的に刺激する方法が試みられています。
反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)
最も再現性がありエビデンスレベルの高い神経刺激法です。頭皮越しに標的とする大脳皮質の上に磁気刺激コイルをあてて行い、疼痛はなく麻酔も必要なく外来で試行可能です。5〜20Hzの刺激を毎日反復して行うと明らかな疼痛の軽減が50%以上のCPSPを有する患者で認められました。効果は試行開始後数日にて出現しますが1週間も続きません。rTMSで疼痛が緩和されるのであれば、下記のMCSが有効である可能性が高く術前の評価として役立てられます。
硬膜外運動皮質刺激法(epidural MCS)
全身麻酔下に前頭・頭頂部(40×50mm)を開頭し中心溝付近に電極を埋め込んで行います。1または2個の4極電極を、疼痛部位を支配する運動皮質の上に埋め込み、刺激パラメータは術後に調整します。メタ解析によるとCPSPの143症例中MCS有効率は50%でした。ただし、大部分の報告は対照を適切に設定していない症例報告であり、エビデンスのレベルは高くありません。

早期診断と適切な治療開始の重要性
CPSPは難治性の激痛が特徴でQOLを著しく損なうものであるため、少しでも早く疼痛が緩和するように適切な治療を開始する必要があります。現在のところアミトリプチリンとラモトリギンが第一選択薬とされており(グレードA)、ガバペンチンを含む新規抗てんかん薬のさらなる検証が期待されています。rTMSは外来で試行できる非侵襲的な評価・治療手段として注目されています。




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