神経障害性疼痛疼痛を科学する21~CRPS(複合性局所疼痛症候群)とは?歴史・診断・治療・在宅ケアのポイント
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CRPS(複合性局所疼痛症候群)とは?歴史・診断・治療・在宅ケアのポイント

CRPSは症例の幅が大きいために治療に関するエビデンスを得ることが困難で、その数も非常に少ないのが現状です。重要なことは「CRPSだから〜治療をするべきである」という考え方を慎み、個々の症例を漏れなく確認・評価し、それぞれの事項に対する適切な対応を実践することです。
例えば、橈骨遠位端骨折にギプス固定を行った後に発症した早期の例と、事故による軽度の打撲の後に痛みが遷延し徐々に麻痺が他の四肢にも広がるような症例では、有効な治療法は異なり、医療者として適切な対応も異なります。
CRPSの歴史的経緯
CRPSは、これまで骨折などの外傷や神経損傷の後に疼痛が遷延する病態に対してさまざまな名称で呼ばれてきた症候群です。
歴史上の名称の変遷
1867年:MitchellがCausalgia(銃創による神経損傷後の遷延する疼痛)と命名
1946年:EvansがRSD(Reflex Sympathetic Dystrophy:反射性交感神経性ジストロフィー)と命名
整形外科領域ではSudeck萎縮、リハビリ領域では肩手症候群とも呼ばれていた
1994年:国際疼痛学会(IASP)がCRPSという呼称に統一

CRPSの分類(TypeⅠとTypeⅡ) 

※CRPSの判定に限っていえば神経損傷の有無を問う必要はなく、神経障害をもって神経損傷ありとするのかの決定が困難であることなどを考えると、実際の日常臨床にきわめて即したものであるといえます。
CRPS判定指標
2005年に厚生労働省CRPS研究班が全国規模の疫学的臨床研究を行い、日本独自の判定指標が作成されました(感度82.6%・特異度78.8%:臨床用)。

基準 | 臨床用(感度82.6%・特異度78.8%) | 研究用(感度59%・特異度91.8%) |
A 自覚症状 | 病期のいずれかの時期に、以下のうち2項目以上 ①皮膚・爪・毛のうちいずれかに萎縮性変化 ②関節可動域制限 ③持続性ないしは不釣り合いな痛み、しびれた感じ、知覚過敏 ④発汗の亢進ないしは低下 ⑤浮腫 | 病期のいずれかの時期に、以下のうち3項目以上 同上5項目 |
B 他覚所見 | 診察時において、以下のうち2項目以上 ①皮膚・爪・毛のうちいずれかに萎縮性変化 ②関節可動域制限 ③アロディニアないしは痛覚過敏(ピンプリック) ④発汗の亢進ないしは低下 ⑤浮腫 | 診察時において、以下のうち3項目以上 同上5項目 |
CRPSに関連した病態
1. 神経損傷
神経の部分的な損傷の後に発生したものはCRPS type Ⅱと定義されています。受傷機転、知覚低下や知覚脱失などの所見、電気生理学的検査などを行えば明らかな神経損傷のある症例の診断は可能ですが、損傷された神経が細く信頼性が疑わしい場合は神経損傷があるかどうかを明らかにすることは困難です。
2. 不動化による障害
ギプス固定などによって長期間四肢を動かさない状態が続くことが、CRPSの発症と慢性化に関連していると考えられています。不動化により筋萎縮を生じ、重力による浮腫形成、浮腫による新たな神経障害などの可能性もあり病態を複雑化させます。不動化はCRPSにおいて重要な形成因子であり、疼痛緩和・理学療法・認知行動療法などが治療において重要な位置を占める理由です。
3. 無視様現象(Neglect-like現象)
CRPS患者では罹患肢に知覚障害がないのに触刺激に関する高次な認知機能が低下したり、運動系に明らかな障害がないのに意思どおりに四肢を動かせないなどの現象(neglect-like現象)が報告されており、理学療法や認知行動療法の重要性を示唆しています。
4. 自律神経系の症状
CRPSには皮膚温の変化・発汗異常・浮腫など自律神経が関与していると考えられる症状を伴います。CRPSでみられる皮膚温の変化は、神経損傷による二次的な変化の場合、外傷による血管障害による場合、不動化によると思われる中枢性の自律神経機能変化の場合があります。

CRPSの多くは外傷後に発症します。自身の過失による外傷後に起こることは比較的少なく、事故の被害者や労働災害、医療行為によるものが多いです。補償問題や被害者意識が患者の訴えや機能を修飾していることがまれではなく、医療費の拠出元・補償や就業の状況などを詳細に把握しておくことが肝要です。
うつや不安を代表とするCRPS患者にみられる心理的な異常が発症の原因となっているのか、結果であるのかの議論は古くからあり結論を得られていませんが、おそらくその両方が関与しているのでしょう。
CRPSに対する治療

神経ブロックにより痛みが緩和されれば、意欲の向上・機能改善にもつながります。神経ブロックの種類としては、交感神経節ブロック・末梢神経ブロック・持続硬膜外ブロック・局所静脈内ブロックなどがあります。

薬物療法
CRPSに関する薬物療法の効果を検討した報告は少なく、前向きに多施設で二重盲検法を用いて実施された大規模研究はありません。国際的にその効果が報告されているものとして:

理学療法はCRPS治療の中で最も重要ですが、方法論的に研究が困難でエビデンスは少ないです。温熱交代浴や光線療法などの受動的方法と運動療法などの能動的方法があります。最終目標が機能改善であるので、能動的方法を重視し、その下準備として受動的方法を導入するのが賢明です。

CRPS患者の治療において説明と教育は非常に重要です。外傷後普通でない事態に患者は困惑し不安を感じ、場合によっては怒りを内在していることもあります。

CRPSは疾患概念が明確ではなく、大きな機能障害を残すことがあり、訴訟問題にも発展することがあるので対応が難しい疾患です。専門的に評価し対応できる施設もきわめて限られており、専門病院に紹介することも不可能な場合が多いです。個々の症例に誠意を尽くして対応することが重要です。






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